※この記事は2021年09月22日にBLOGOSで公開されたものです

2011年3月の東京電力福島第一原発事故を受け、主に福島県産の食品が海外の一部から輸入規制されていることに関連して、政府は22日、アメリカが輸入規制を撤廃したと発表した。

アメリカは日本にとって食品や農林水産物の輸出額が3番目に大きく、今回の規制撤廃をきっかけに福島県産の食品の輸出拡大が広がりそうだ。福島の農家や関係者からは「福島の食材の安全性と魅力を世界に伝える大きなチャンス」と歓迎の声が広がっている。

福島県産は35品目がアメリカへの輸出OKに

アメリカは原発事故を受けて日本産食品の輸入規制を始め、輸入規制が解除される直前の今月21日時点では、福島や宮城など14県の延べ100品目が対象だった。一方、日本からアメリカへの農林水産物や食品の輸出額は、2020年で1188億円にのぼっている。

日本国内では放射性物質の濃度が基準を上回った場合、市町村やより小さな地域単位で出荷制限がかかる。一方、アメリカは都道府県の単位で輸入停止する措置をとっており、福島県産に限ると、米やホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリーなどの野菜や牛肉など35品目に及んでいた。

韓国・中国などが引き続き輸入停止

原発事故後、55の国・地域が日本産食品の輸入を規制する措置をとった。アメリカの輸入規制撤廃により、今後も輸入停止を続けるのは韓国や中国、台湾など5つの国・地域となる。引き続き、ロシアやEUの一部など8の国・地域で、輸入に際して検査証明書が必要となる。

アメリカに対しては今年4月、菅義偉首相がワシントンを訪れバイデン大統領と会談した際、日本産食品の輸入停止措置の撤廃を求めていた。

「菅首相の働きかけも一定の影響力」

農林水産省・国際地域課の担当者は取材に対し、「科学的根拠を示してアメリカと交渉する中で、福島などの食材の安全性を確認してもらえた」と説明。「菅首相によるバイデン大統領への働きかけも一定の影響力を持ったのでは」と語った。

菅首相は22日朝、自らのTwitterで「被災地の人々が待ち望んできたものであり、これからの復興にも大きく役立つ」と歓迎の言葉をつづった。さらに、他の国・地域の輸入規制撤廃に一層力を入れる考えも示した。

福島の生産者も喜び 「菅首相の置き土産」

福島の生産者からは今回の決定に対して、歓迎の声が広がる。

県北部でモモの生産に携わる40代の男性は「10年もかかったけれど、福島にとって大きな前進」と評価し、4月の日米首脳会談に関連して「菅首相の力が影響したのかな。置き土産のようにも感じる」と喜んだ。

会津地方で米を生産している50代の男性も「アメリカという大国が輸入規制を解除してくれる影響は大きい。食品をきっかけに原発事故前以上に、良い方向で福島に注目が集まったらいい」と期待を込めた。