「お仕事から離れることを決意致しました」堀北真希の引退宣言が意味するところ - 渡邉裕二
※この記事は2017年03月07日にBLOGOSで公開されたものです
「お仕事から離れることを決意致しました」。
女優・堀北真希の芸能界引退が大きなニュースになっている。
もっともマスコミに送られてきた堀北のコメントには「引退」という言葉はない。が、所属事務所は「引退」と明言しているところがややこしいところだ。
それにしても、ここ最近の傾向だと言われているが、確かに芸能人の引退が目立つ。近いところでは清水富美加を思い出すが、他にも江角マキコ、成宮寛貴、乃木坂46の橋本奈々未…。
「気づいたら消えていた」と言うのではなく、自ら堂々と〝幕引き〟を宣言してしまう潔さが際立っている。しかも「これから…」というタイミングでの行動だ。
堀北の場合は、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」で清楚な少女を演じ、NHK朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」ではヒロインに抜擢された。さらに「NHK紅白歌合戦」で司会まで務めるなど、文字通り〝国民的女優〟としての階段を着実に上がっていた。
そんな中、15年8月に俳優・山本耕史と結婚して、昨年末には出産、一児の母親になったかと思ったら…。事務所との契約切れのタイミングで芸能界を離れる発表となった。
もっとも引退への布石はあった。1年ぐらい前にも「堀北引退」という情報が業界を駆け巡った。昨春にはファンクラブも解散している。
「事務所も大変だろうね、稼ぎ頭を失ったら痛いよな…」
なんて言い方をする芸能記者もいたほどだ。
そういった意味で堀北の場合は既定路線だったとも言えなくもない。
とは言っても、事務所からしたら「もっと頑張ってもらわないと…」っていう時だったはずで痛い。当然、堀北を説得、何度も話し合ってきたはずである。しかし…。
事務所との確執があったのか
冒頭でも記したが、コメントを見る限り堀北は「素晴らしい14年間を本当にありがとうございました」と、先々については曖昧にして締めているが、事務所は「休業」と言うのではなく、あえて「引退」と明言したのは、おそらく話し合いの中で確執が残ったからだと思われる。
一部では、堀北が「山口百恵の生き方に憧れていた」という報道もあった。しかし、ちょっと、それは出来過ぎた言い方だ。きっと事務所関係者が代弁したのだろう。ただ、どんなに確執があったとしても、契約問題で争うのは事務所としては得策ではない。ここは「円満」をアピールしておきながら、一方では「引退をさせる」ことで、面目を保ったのだろう。
それにしても…
堀北の場合は結婚を機に家庭に入りたいと言う。だけど、今の世の中はその逆。「女性の社会進出」が叫ばれ、女性は「子供が生まれても仕事をしたい」というのが時代の流れである。
そういった流れの中で「家庭に入って夫を支えていく」というのは新鮮だが、一方では違和感を感じてしまう。もちろん古風な女性を演出し、評価する意見も多いかもしれない。が、本来、タレントやアーティスト、女優に「引退」という言葉は適さない。何故なら、いつでも戻ってくることの出来る世界だからだ。
もちろん「山口百恵的」な生き方があってもいいと思うが、百恵の場合は、夫の三浦友和がしっかりした俳優だから可能だったとも言える。では、山本耕史は? 確かに若手の中では活躍しているし、才能もあることは間違いないのだが、どこか不安も感じる。そう言った意味で語るなら、堀北も、ここは「ひとまず」と言ったところのような感じもする。1回リセットして、再び…。その時は、山本耕史と一緒に…と話し合っているのかもしれない。
心の底から「芸能界に未練がない」と言うのなら仕方がないが、10代後半から14年間も第一線でスポットを浴びてきた女優である。いくら前事務所と確執があろうと諦められるはずがない。
夫・山本耕史を牽制?子供を守るため?
一方で、うがった見方もある。それは、業界でもプレイボーイとして名を馳せてきた夫・山本に対して堀北が牽制したんじゃ…と。万が一、これで山本が浮気、不倫でもしたら大変なことになる。そうなると今や一番、プレッシャーを感じているには山本なのかもしれない。
あと、もう一つの見方がある。SNSだ。
第一線で活躍する芸能人にとっての苦痛はSNSの存在だろう。これは精神的な問題である。社会問題にもなっているが、堀北もマンション探しで拡散されたことがあった。どこの不動産会社を訪れて、どの程度の部屋を探していた、金額は…そういったプライバシーを平然と書かれたら、誰だって「冗談じゃない」ということになる。
まして、子供が生まれたら…。堀北と山本の子供である。周囲から注目も集まるし当然、日常の行動も狭まる。だとしたら「子供を守るため」の究極な行動だったとも考えられなくもない。
勘ぐるといろいろとあるものだ。
だが、芸能界から離れても「堀北真希」という女優が存在していたことは確かだし、14年と言う時間を消し去ることはできない。例え一般人になっても、彼女の生き方は山本を通して注目されていくに違いない。それだけに、これからが彼女の試練かもしれない。
桜井幸子にどこか似ている
ところで、余談ではあるが堀北を見ていて、いつも、元女優・桜井幸子を見ているようだった。この2人はどこかタイプが似ている。特に意地の強そうなところが…。
その桜井もNHKの朝ドラにヒロインとして出演し、最高潮だった09年12月末に突然引退宣言した。その理由として
「私はこれまで女優という仕事に就きながら、十数回海外の仕事を頂き、また数回の海外留学の経験をさせて頂きました。これらの経験が契機となり、数年間考えた末に今回の決断に至りました」と言い、引退後については「より一層社会的見聞を広め、社会に貢献できる個人を目指し、実り豊かな人生になるよう、目標を定め、研鑽(けんさん)に努めて参りたいと考えております」。
桜井はサンミュージックから独立した格好で移籍したものの、その後の事務所とは関係がうまくいっていなかったと言われるが、この2人はどこか似た匂いがする。