※この記事は2011年03月23日にBLOGOSで公開されたものです

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4月10日投開票の東京都知事選、告示3日前というギリギリのタイミング出馬を表明した、前宮崎県知事の東国原英夫氏が自由報道協会の主催会見に登場した。まず、出馬表明が遅れたことについて、説明があった。

「大震災等の影響もあり、出馬の表明が遅れたことを都民の皆さん、関係者の皆さんにお詫びしたい。3月の上旬あたりに出馬するかどうかを表明しようと思っていたが、震災の影響、社会状況を見て、そういう状況になかった。個人としても（震災に）ショックを受け、宮崎県知事時代にも鳥インフルエンザ、口蹄疫と不測の事態を経験していたので、胸を打たれていた。自分に何ができるか、模索の毎日だった。義援金に協力はしたが、自分が被災地に入ることは自重した。10日ほど自問自答したが、自分ができる範囲で、（政治行政に携わった人間として）今後もかかわって行くべきではないか、と強く思った。東京を中心とした首都圏を元気にして、東日本、そして日本全体を元気にしなければならないと思った。首都圏は大消費地、ここが活気付かないと、地方も元気にならない。東京からムーブメントを起こすことが、自分がやるべきことと思い、出馬を決意した。同時に、逃げることなく、何かにチャレンジすること、あきらめない気持ちを伝えたかった。自分がここで出馬しないと、出る出ると言っておいて、怖気づいたのか、あきらめたのかと言われることが不本意だった。全国があきらめない、がんばろうと言う時なので、自分も出馬することにした。」

続いて、東京への思いを語る。

「少子高齢化を始めとする、東京の抱える諸問題を解決して行かなければいけない。そんな中で、今回の震災が起きた。東京は震度５前後。それでも電車が止まる、帰宅困難者が大勢出る、携帯がつながらない、コンビニから物がなくなる。パニックこそ起きなかったが、都市部の災害に対する脆弱さが今回露呈した。高い確率で30年以内に関東東海沖で地震が起きると言われている。その危機対策は万全にしなければならない。マニフェストは「東京10計」という形でまとめたが、基本コンセプトは「強い東京」「優しい東京」「元気な東京」「東京から日本復活」
ここ数年間、日本を覆っている漠然とした閉塞感やあきらめの境地、将来不安、これを払拭するために、何が必要か、ずっと考えてきた。その起爆剤として"奇跡"を起こすべきだと思った。私が都知事選で当選することは、奇跡だと思う。人智を超えた奇跡が今、日本を救うと思う。あきらめない気持ち、チャレンジする気持ち、そして結果奇跡を起こす。大きな時代のうねりを起こす、今それが求められている。」

記者との質疑応答

－県知事時代に宮崎ソーラーフロンティア構想など太陽光発電の普及に努めていたが、原子力発電に頼っている東京、災害時の危機管理として、太陽光や他のエネルギーについてどう考えているか

太陽光や自然エネルギー（発電）を比率として高くすること。計画停電ではなく計画節電。今はエコを実現すること。そして代替エネルギーの確保。
あとは、西日本と東日本の電力の周波数を変える変電所が3つしかない、これを強化して、西日本と東日本の間で電力をやり取りできるシステムの構築が必要。
今回、災害時に携帯がつながらないことが判明した。これはライフラインの第一番目、国を巻き込んで電波をどうするか考えなければいけない。コンビニエンスストアの流通システムなどの強化も働きかけて行きたい。

－築地市場の豊洲移転について　豊洲の移転予定地が90箇所液状化したが、築地はビクともしなかった。地盤上はあきらかに優劣がついたが

さまざまな意見や費用対効果などを考えながら、1年以内に結論を出す。先行取得した豊洲の土地をどうするのか、築地から全面移転なのか、何割か残すのか、早期に結論を出す。 －宮崎県知事時代はトップセールスマンとして活躍したが、東京を観光都市として、世界にどうセールスしていくのか

東京都で1000万人の誘客目標という高いハードルを持っている。さまざまなコンテンツとのコラボレーションで、盛り上げて行きたい。施設よりもホスピタリティ、おもてなしの心の向上で呼び込みたい。看板や案内、ガイドさんなど、多言語に対応して、観光を伸ばして行く。

－深刻な電力不足だが、電気自動車の普及は進めて行くのか

進めて行きます。ガソリン、石油に依存しない体制作りが必要。電力の供給を太陽光発電をはじめとする、代替エネルギーで補って行く。

－東京都青少年健全育成条例改正案について、賛成か反対か

反対と賛成の中間です。微妙な立場であります。まず、条例が通っているということ。これを議会で見直すのが可能かどうかがひとつ。この漫画条例というのはコンテンツ産業、経済の目線で議論すべき、規制によって産業が縮小してしまわないか。もうひとつは、基本的には教育の問題なのではないか。不適切な作品に（子供が）手を伸ばすかどうかは教育の問題だと思う。今回の条例は"著しく"社会規範に反する性行為を"著しく"誇張に賛美するものを規制する。ではその
"著しく"を誰が決めるのか。審議委員会は公平なのか、そのメンバーに誰を入れるのか、それを目に見える形で議論して行く。それが"慎重な運用"なのではないか。

－東京の抱える一番の問題点は

危機管理だと思います。あれだけの帰宅困難者が出た、原発の問題もある。エネルギーの問題もある。危機管理、災害管理が一番の問題。

－具体的な対策は

まず耐震補強。学校、公共施設、医療施設、緊急車両の通る道に面した、あらゆる建物の耐震補強を100％にする。ただ一般家屋が600万戸ほどある。これにどれだけ助成できるのかがあるが、耐震化をやらなければならない。そして都民の災害意識を高める。（避難などの）訓練が必要。行政機能が緊急時に麻痺したときは地域力、コミュニティ力が大切。

－東京の水道水から基準値を超える放射性物質が検出されたが、もし知事だったらどういう対応を取るか

まずその地区は（水を）ストップさせます。正しい情報を発信すること、そして検証。それから対策。これをスピード感を持ってやる。

－情報公開について。東京都は会見をオープンにしているが、記者クラブはあり、記者室はフリー、海外メディアは使えない。それをどう思うか、そして、災害時の情報公開をどうして行くか

記者クラブがあるのはかまわない、ただ、フリーにも部屋を提供したい。1時間の会見だったら、前半40分は記者クラブ、後半20分はフリーランス、宮崎ではそうしていた。情報の発信に格差をつけるつもりはない。行政は情報をどちらかといえば、隠蔽したがる。基本的には情報は開放しなければならない。特に、非常時においては。

－首都圏連合について。賛成か、反対か。賛成であればどのように進めるか

賛成です。地方分権国家の樹立が私の目標。関西連合はもう進み始めた。なぜに首都圏は後れを取っているのか。首都圏から日本を変えるべき。首都圏が国に働きかけて法改正をすると、全国がそれに倣うことができる。権限、財源、人間を地方に委譲してほしい。

－石原都政で一番いけなかったこと、良かったことは

この難しい時代に首都を良く導いたと思っている。（石原氏を）尊敬している。良かったことは環境問題対策、ディーゼル車規制、羽田の国際化。時代に合わなくなった政策は東京オリンピックの誘致。4000億の基金というのはすごい。これを景気対策や被災対策・福祉に回したほうが有効だと思う。おそらく次にアジアでやるときはインドではないかと思っている。もし日本で開催するならば、平和の祭典なので広島・長崎がいいのではないか。それを東京が支援すればいい。


元芸人仲間、大川興行の大川豊総裁が質問したとき、一瞬タレント「そのまんま東」の表情が見えたが、その一瞬以外はドンと構えて早口で持論を展開し、記者たちを引き込んで行くのはさすがだと感じた。最後の最後に出馬を決意した、東国原氏、東日本大震災があったとはいえ、後出し感は否めない。

投票日まであと2週間と少々、首都東京を任せられる人物は誰なのか、政策論争が盛り上がることを切に願う。

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