現在の住まいを売却して別の住まいを購入するというケースの住み替えでは、売却・購入のタイミングや資金計画を慎重に考える必要があります。無計画に進めていくと、余分な手間や費用がかかるためです。

そこで今回は、売却・購入を伴う住み替えの注意点について解説します。長く住み続けるつもりでも、いずれ住み替えが必要になるかもしれません。ぜひ参考にしてください。

住み替えとは?

住み替えとは、文字どおり住む家を替えることを表す言葉です。さまざまなパターンがありますが、基本的には賃貸借契約や売買契約などの不動産取引を伴うケースを指します。賃貸から賃貸への住み替えは比較的スムーズに進むでしょう。持ち家から持ち家への住み替えの場合には、購入と売却のどちらを先にするか、ローンが完済できるかなど、いくつかの注意が必要です。

> 【PR】安心の住み替えサポートサービス「住み替えコンシェルジュ」に相談してみる

マイホームを住み替える主な理由

マイホームの住み替えを検討するきっかけにはどのようなものがあるのか、主な理由を紹介します。

参考:国土交通省:「住生活に関する意識調査の結果概要」

現在の住まいに不満や不安がある

最も大きな理由としては、現在の住まいへの不満や不安があげられます。よく聞かれるのが「建物や設備が古くなったので新しい家に移りたい」という理由ですが、リフォームやリノベーションでも不満は解消できることもあるでしょう。実際には、「バスの本数が減らされて利便性が悪くなった」「災害リスクがある」「ご近所トラブルに悩まされている」などの外的要因も重なって住み替えに踏み切るケースが多いようです。

現在のライフスタイルに合わない
ライフスタイルの変化をきっかけにした住み替えも少なくありません。たとえば、単身者なら「会社や学校へのアクセスがよい場所へ移りたい」、子育て世帯なら「家族が増えたので広い家に移りたい」「子育て環境のよいエリアへ移りたい」などの理由があげられます。また、シニア世代では「子どもが独立したのでコンパクトな住宅へ移りたい」「退職後は田舎でのんびり暮らしたい」などの声がよく聞かれます。

住宅ローンの支払いが厳しい
コロナ禍では減収や失職によってローン返済が難しくなり、賃貸住宅に住み替えるケースも増えています。比較的残債が少なく売却代金で完済できればよいのですが、売却後にもローンが残る場合はさらに負担が重くなります。慌てて住み替える前に、売却によってローンが完済できるかどうかを調べてみてください。

また、返済が厳しいと感じ始めたら、早めに借入先の金融機関に相談することをおすすめします。状況によっては返済条件の変更に応じてくれるかもしれません。

参照:土地活ナビ調べ「コロナの影響で住宅ローン返済が苦しくなったと感じている人は3割以上!」

マイホームを住み替えるタイミングとは?

マイホームの住み替えには、新居を購入してから売却活動を始める「買い先行」と、売却後に新居探しを始める「売り先行」とがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、スムーズな住み替えを行うには自分に合う方法を選ぶことが大切です。

先に新しい住宅を購入する
現在の住まいの売却前に新居を購入する「買い先行」には、次のメリット・デメリットがあります。

● メリット:新居への住み替えがスムーズ
● デメリット:十分な資金が必要

すでに新居が決まっているため、好きなタイミングで住み替えができます。旧居は空き家にした状態で売却活動ができるので、内見希望者が来るたびに慌てて室内を整える手間もいりません。

ただし、売却代金を新居購入にあてられないという点がデメリットです。旧居の住宅ローンが残っている場合は、売却できるまで新居の住宅ローンと併せて返済しなくてはなりません。そのため、十分な資金を用意しておく必要があります。

先に現在住んでいる住宅を売却する
現在の住まいを売却してから新居を購入する「売り先行」のメリット・デメリットには、次のような点があげられます。

● メリット:新居購入の資金計画が立てやすい
● デメリット:仮住まいなどのコストがかかる

売却によって得た代金を新居の購入資金にあてられるため、予算が立てやすいことがメリットといえるでしょう。ただし、引き渡しまでに新居が決まらない場合には、一時的な仮住まいが必要になります。その間の家賃や2度にわたる引っ越しなどで、コストがかかることがデメリットです。かといって新居選びを妥協すると、せっかくの住み替えも後悔することになりかねません。

マイホームを住み替える際の注意点

マイホームを売却して別の住まいを購入し直す場合、どちらを先行するかといったタイミングのほかに、資金面で注意すべき点があります。ここからは、売却と購入を伴う住み替えの注意点を解説します。

旧居の住宅ローンは完済する必要がある
金融機関の抵当権が設定されている間は、持ち主でも勝手に売却できません。抵当権を解除するには住宅ローンの完済が条件となります。売却代金で残債を一括返済できれば問題ありませんが、売却額が残債よりも少ないことも考えられます。その場合、差額分を自己資金で支払うか、住み替えローンを利用するのが一般的です。

住み替えローンとは、旧居の住宅ローンを完済するための資金と新居の購入費用とを、まとめて借りられるローンのことをいいます。旧居と新居のローンが一本化できるため、別々にローンを組むのと比べて手続きの手間や返済負担が軽減できることがメリットです。

ただし、借入額が高額になることから融資審査は厳しめです。また、住み替えローンを利用する際は、売却と購入の決済日・引き渡し日を同日にしなくてはなりません。売却・購入を計画的に進めることはもちろん、後ほど解説する「買い替え特約」をつけることも忘れないようにしてください。

住宅の売買やローン契約などの諸費用がかかる
不動産取引や住宅ローンの利用には諸費用がかかります。どのような費用が発生するのか、以下に簡単に紹介します。

● 売却:売却価格の4%程度
  印紙税、抵当権抹消費用、ローン完済手数料、仲介手数料(買主が不動産会社の場合は不要)など
● 購入:購入価格の5~6%程度
  印紙税、登記費用、不動産取得税、火災保険料、仲介手数料(売主が不動産会社の場合は不要)など
● 住宅ローン関連費用
  印紙税、抵当権設定費用、ローン手数料など
● その他の費用
  引っ越し代、仮住まいの費用(家賃、敷金、礼金、仲介手数料など)、リフォーム費用など

買い替え特約の利用を検討する
買い替え特約とは、約束した日までに旧居が売却できなかった場合、違約金なしで新居の購入計画を解消できるという取り決めです。買主が売買契約を解除する際、通常は放棄しなくてはならない手付金も買い替え特約によって返還されます。

この特約を付けるには住み替え先の売主の承諾が必要です。しかしながら、売主にとってはリスクとなるため、承諾を得られないことが珍しくありません。そのため、不動産会社にも協力してもらう必要があります。特に、住み替えローンを利用する場合は売却と購入の決済日を合わせなくてはならず、不動産会社の協力が欠かせません。

なお、売却の仲介を依頼する不動産会社とは専属専任媒介契約または専任媒介契約を結び、さらに新居購入の仲介も同じ不動産会社に依頼することで、スムーズに協力してもらえる可能性があります。

まとめ

住み替えした人の多くは、現在の住まいへの不満やライフスタイルの変化などをきっかけに、住み替えの検討を始めています。住み替えにはいくつかのパターンがありますが、マイホームを売却して新たに購入するケースでは、売買のタイミングや住宅ローンの有無などに注意しなくてはなりません。ローンの残債がある場合は、旧居・新居のローンが一本化できる住み替えローンを利用するのも一つの方法です。