Ryzen 7 5700XとRyzen 5 5500/5600を試す - 対Core i5や5800Xで絶妙な性能かも
●PCMark / Procyon / CineBench / POV-Ray / TMPGEnc / 3DMark
こちらでご紹介したように、AMDはDesktop向けにRyzen 5000シリーズとRyzen 4000シリーズを追加する事を発表した。発売日は4月15日とされ、ローエンドのRyzen 3 4100で14,800円、トップエンドのRyzen 7 5700Xで42,800円とされている。秋葉原では既に発売が開始されており、概ねAMDの発表した予想小売価格に近い値付けとなっている。
さてこの追加された製品のうち、Ryzen 5000シリーズ3製品について簡単に性能を確認してみた。
今回は写真のRyzen 7 5700Xのほか、より手頃なRyzen 5 5500/5600も一緒に評価する
○評価機材
今回評価したのはRyzen 5 5500/5600(Photo01〜12)とRyzen 7 5700X(Photo13〜17)である。その他の環境は表1の通り。比較対象としては、Ryzen 7 5800XとCore i5-12600Kを持ってきた。Ryzen 7 5800Xについては、Ryzen 7 5700Xとの比較用である。この2つの製品は動作周波数が3.4GHz/4.6GHz vs 3.8GHz/4.7GHzと、Baseはちょっと差があるがBoostはさほどでもなく、その割にTDPは65W(Ryzen 7 5800Xは100W)と手頃であり、コア数を必要とするユーザーにとっても割と良い選択肢になり得る。実はこの2製品、実売価格もかなり接近している。Ryzen 7 5700Xはこちらにもある様に43,000円前後、対してRyzen 7 5800Xはこちらで触れた様に46,000円前後だったのが、この原稿執筆段階ではさらに値下がりして43,383円とかになっている(Photo18)事を考えるとほぼ同等といったところで、性能を取るか消費電力を取るかといった感じなので、その性能差(と消費電力差)はどの程度なのかを見極めてみたい。
Photo01: パッケージは当然ながら見た所一緒。
Photo02: 上面のシールが唯一の差となる。クーラー内蔵なのでちょっと箱は重い。
Photo03: こちらのグレードはCPUクーラー(Wraith Stealth)が付属する。
Photo04: CPUパッケージは他と変わらず。下の黒い箱にクーラーが内蔵されている。
Photo05: Ryzen 5 5500。製造は2020年となっている。
Photo06: Ryzen 5 5600も製造は2020年。
Photo07: おなじみWraith Stealth。
Photo08: フィン部分は薄めだが、これで65Wまで対応できる。正直、良くできたクーラーだと思う。
Photo09: Ryzen 5 5500はCezanneをベースにGPUを無効化したダイとなる(ため、L3も16MB)。
Photo10: 勿論Windowsからは問題なく認識される。
Photo11: Ryzen 5 5600はVermeerベース。なのでL3は32MB。
Photo12: Windowsから見ると、Ryzen 5 5500の高クロック版といった風にしか見えない。
Photo13: CPUクーラーは内蔵されないので、パッケージは当然軽め。
Photo14: 内蔵されるのはCPUだけ。正直言えばTDPは65Wなのだし、Wraith Stealthを同梱してくれても構わない気がするのだが、OC対応のXモデルだからOCするとWraith Stealthでは厳しいという部分もあるのだろう。
Photo15: こちらも2020年製造となっている。
Photo16: 当然Vermeer。L3は32MB。
Photo17: きちんと8core/16threadで認識される。
Photo18: Keepaによる価格推移。4月23日あたりから今の価格まで落ちている。
一方Ryzen 5は5500が23,500円前後、5600が29,000円前後とされている。対抗馬となるのは、本来だとCore i5-12400あたり(原稿執筆時点のAmazonでの価格は27,980円)になるのだが、機材調達の関係でもう少しグレードが上がるCore i5-12600Kになってしまった。Amazonでは原稿執筆段階では品切れだが、Keepaを見ると直前の価格が38,771円となっている(Photo19)。この辺りを勘案して、Ryzen 5 5500/5600の価格性能比がどの程度か(逆に言えば、Core i5-12600KがRyzen 5 5500/5600より1万円高いのは妥当か)を判断してみたいと思う。
Photo19: 割と高め安定というか、4万をちょい切る位で安定している。
ところでテスト環境だが、これは実は先にレポートしたRyzen 7 5800X3Dのテストの際の環境そのままである。というか、テストそのものは一緒に行っており、ただ分析は全部まとめて出すと間に合わない&分析項目が多くなりすぎるという事で分割させていただいた。そんな訳で個々のテスト手順(ゲームにおけるグラフィック品質の設定)は全く同一である。
グラフ中の表記は
R5 5500:Ryzen 5 5500
R5 5600:Ryzen 5 5600
R7 5700X:Ryzen 7 5700X
R7 5800X:Ryzen 7 5800X
i5-12600K:Core i5-12600K
となっている。また本文中の解像度表記は、いつものように
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただいた。
○◆PCMark 10 v2.1.2535(グラフ1〜6)
PCMark 10 v2.1.2535
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
グラフ1
グラフ2
グラフ3
グラフ4
グラフ5
グラフ6
ではまずPCMarkから。Overall(グラフ1)を見ると、全体的にちょっと不思議な傾向である。まずCore i5-12600Kが妙に高いスコアなのだが、PCMark 10 Applicationsではそれほどでもないところを見ると、スコアの差はCPU性能そのものではない気がする。あと面白いのは、Ryzenの中ではRyzen 5 5600Xが最高速な事だ。この傾向はTest Group(グラフ2)でも共通である。
Essential(グラフ3)ではApp Startupのみ飛びぬけてCore i5-12600Kが高速。一方Ryzen 5 5600も良いスコアであり、逆にRyzen 7 57000XはRyzen 7 5800Xと大差なし。この傾向はProductivity(グラフ4)も似ており、今度はSpreadsheetsでのみCore i5-12600Kが飛びぬけている。Contents Creation(グラフ5)ではRendering And Visualizationのみ、突出してCore i5-12600Kの性能が高い。このDigital Contents CreationではまたRyzen 7 5800XよりもRyzen 7 5700XやRyzen 5 5600Xの方がスコアが高いという珍事も発生している。そしてApplications(グラフ6)では、やはりCore i5-12600KがExcelのみスコアが極端に高い、と言う結果になっている。
実はこの傾向は、Ryzen 7 5800X3Dに結構似ている。あちらはメモリアクセスが多くなるアプリケーションで、大容量L3の効果で高速化(Excelとかが良い例)だったが、こちらはCore i5-12600KのみDDR5の効果でこうした処理が高速化されているように見える。
一方でRyzen 5 5600は、TDPこそ65WながらBase 3.7GHzとやや周波数が高めで、しかも6コアということでBoostを掛けやすい(全コアBoostにしても、8コア製品より消費電力が低めに抑えられる)あたりが好成績に繋がった様に思われる。Ryzen 7 5700Xはこれに比べるとややスコア低めであるが、Ryzen 7 5800Xから大きく性能を落としているという風でもない。
○◆Procyon v2.0.399(グラフ7〜10)
Procyon v2.0.399
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon
グラフ7
グラフ8
グラフ9
グラフ10
引き続きProcyon。こちらでもやはりCore i5-12600Kのスコアがトップで、Ryzen 5はともかくRyzen 7 5700X/5800Xの存在価値が問われかねないが、DDR5を利用しているという時点でシステムコスト的にはCore i5-12600Kの方が高価という事を考えると、まぁ性能/価格比では同等と考えてよい様にも思われる。
それはともかくとして、Ryzenの方を見てみると、全体にRyzen 5 5500はそれなりに性能差があるが、Ryzen 5 5600とRyzen 7 5700X/5800Xの性能差がそれほど無い、というのは象徴的である。唯一ここで明白に差が出ているのはVideo Editing。やはりコア数×動作周波数、がそのままストレートに効いてくる感じであり、ここではRyzen 5 5500/5600はおろかRyzen 7 5700XもRyzen 7 5800Xには敵わないといったところだろうか。
○◆CineBench R23(グラフ11)◆POV-Ray V3.7.1 Beta9(グラフ12)◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.19.21(グラフ13)
CineBench R23
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench
POV-Ray V3.7.1 Beta9
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.19.21
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html
グラフ11
グラフ12
グラフ13
コア数×動作周波数がそのまま反映される、というのがこうしたレンダリング系やエンコード系であり、こうしたシーンではRyzen 7 5700XはRyzen 7 5800Xに敵わないし、Ryzen 5 5500/5600は結構大きな性能差となることが結果からも明白である。ただ逆に言えば、こうしたレンダリング/エンコード系の処理を激しくやりたい、という訳で無ければそれほど性能差が無い(これはPCMark 10の結果からも明らか)訳で、どんな用途を求めているか次第ということになる。とりあえずレンダリングやエンコードでは、安いCPUの性能はそれなり、という当然の結論になる。
○◆3DMark v2.22.7336(グラフ14〜17)
3DMark v2.22.7336
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
グラフ14
グラフ15
グラフ16
グラフ17
では3Dでは? ということでまずは定番の3DMarkを。Overall(グラフ14)を見ると、まぁGPUがGeForce RTX 3080 Tiと比較的高性能な部類のものを使っている事もあるが、予想以上に性能差が少ない。大きくばらけるのはNightRaid程度である。この傾向はGraphics Test(グラフ15)も同じで、特にFireStrike以降ではもうCPUによるスコア差が皆無としていいほどに拮抗した性能になっている。勿論Physics/CPU Test(グラフ16)では性能差が見られるが、問題はこれが実際のゲームでどこまで関係してくるか? というあたりではないかと思う。Combined Test(グラフ17)では、負荷の低いFireStrikeでは差が大きい(何故Core i5-12600Kが一番スコアが悪いのかが良く判らない)が、FireStrike Extreme/UltraとGPU側の負荷が上がるにつれて差が殆ど無くなるあたり、CPU性能差が出るのは解像度が低い時だけ、という当たり前といえば当たり前の結果になったが、逆にGPUの足を引っ張るほど深刻な性能不足ということはまぁ無さそう、と判断される。
●ゲームその1:Borderlands 3 / F1 2021 / Far Cry 6 / Metro Exodus
○◆Borderlands 3(グラフ18〜24)
Borderlands 3
2K Games
https://borderlands.com/ja-JP/
では実際のゲームを使った場合はどうか? 最初はBorderland 3、設定方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。全体的な品質は「ウルトラ」である。
グラフ18
グラフ19
グラフ20
グラフ21
グラフ22
グラフ23
グラフ24
結果(グラフ18〜20)を見る限り、確かに2Kではそれなりに差があると言えばある(なぜかRyzen 7 5700Xが一番平均フレームレートが低い)のだが、2.5Kあたりではだいぶ収束し、3K以上では大差なしという格好になっている。まぁこれは当然ではあるのだが。
実際のフレームレート変動を見ると、2K(グラフ21)では結構差が大きいのだが、75秒あたりからで言えば一番高速なのがCore i5-12600K、次がRyzen 5 5500というのはちょっと不思議である(15〜25秒あたりも同じ傾向)。ただ2.5K(グラフ22)だと差が縮まるうえ、40〜60秒付近ではむしろCore i5-12600KやRyzen 5 5500の方がフレームレートが下回る結果になっており、3K/4K(グラフ23・24)では全体的にCore i5-12600KやRyzen 5 5500が低め、という事になるともう単純にCPUの性能とは言い切れない。強いて言えばL3キャッシュの容量の違いということだろうか? こうなってくると、どちらが良いとも言いにくい。とりあえず、Ryzen 4製品に関しては「大きな違いは無い」というあたりに収束しそうだ。
○◆F1 2021(グラフ25〜31)
F1 2021
EA Sports
https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-2021
ベンチマーク方法はこちらのF1 2022の項目に準ずる。設定は
Anisotropic Filtering: 16x
Anti-Aliasing: TAA Only
Detail Preset: Ultra
DXR: Medium
としている。
グラフ25
グラフ26
グラフ27
グラフ28
グラフ29
グラフ30
グラフ31
結果(グラフ25〜27を見ると、これも2Kのみ大きく差があるが、2.5K以上は収束するという何時ものパターンであり、なのでCPU性能差は2Kで判断するのが妥当かと思う。その2K、とりあえずCore i5-12600Kは別として、Ryzen 7 5800Xに続くのがRyzen 5 5600というのは考えさせられるものがある。とはいえRyzen 7 5700Xもそう大きな差ではない。CezanneベースのRyzen 5 5500は、ちょっと無視できない性能差だと思うが、それ以外の3製品はそう大きな差ではない、として良いかと思う。これはフレームレート変動(グラフ28〜31)からも明白で、実際2Kの場合Ryzen 7 5800XとRyzen 5 5600はほぼ重なっているし、Ryzen 7 5700Xも差はそう大きくないとして良いかと思う。
ところでRyzen 5 5500がここまで性能差が出る理由が良く判らない。一つはL3が16MBという事だが、それだけで2.5Kでここまで差が出るのか、ちょっと不思議ではある。
○◆Far Cry 6(グラフ32〜38)
Far Cry 6
Ubisofy Entertainment
https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6
ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は
Quality: High
Antialias: TAA
DXR Reflections/Shadows On
としている。
グラフ32
グラフ33
グラフ34
グラフ35
グラフ36
グラフ37
グラフ38
こちらではもう少し差の出方が顕著だ。結果(グラフ32〜34)を見ると、3Kあたりまで明確な性能差がある。2Kの時点で言えば最高速がRyzen 7 5800X、ついでCore i5-12600K、Ryzen 5 5600、Ryzen 7 5700Xときて最後がRyzen 5 5500となっており、これは3Kあたりまでほぼ共通。4KではRyzen 5 5500以外はほぼ同等スコアになっているが、要するにこれはそれだけRyzen 5 5500が奮わないという事でもある。
これはフレームレート変動(グラフ35〜38)でも明白で、2K(グラフ35)だとRyzen 7 5800XとCore i5-12600K、Ryzen 5 5600がそれぞれ20fps近く違う(20〜30秒付近)あたりからも性能差が明白、として良いかと思う。
○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ39〜45)
Metro Exodus PC:Enhanced Edition
4A Games
https://www.metrothegame.com/
ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定はUltraのプリセットをそのまま利用した。
グラフ39
グラフ40
グラフ41
グラフ42
グラフ43
グラフ44
グラフ45
結果(グラフ39〜41)を見ると、Ryzen 5 5500以外はほぼ同等、といった感じになっている。まぁそれだけGPU負荷が高いという話であるが、GeForce RTX 3080 Tiですらこんな感じなので、もっと下位グレードだと更に差は少ない事になる。
フレームレート変動(グラフ42〜45)を見ても、もうRyzen 5 5500以外はちょっと太目の1本の線、という感じになっており、ここでは大きな性能差は無いとして良い様に思われる。
●ゲームその2:Tomb Raider / Division 2 / Watch Dogs
○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ46〜52)
Shadow of the Tomb Raider
SQUARE ENIX
https://tombraider.square-enix-games.com/en-us
設定方法はこちらに準じる。QualityはHighとした。
グラフ46
グラフ47
グラフ48
グラフ49
グラフ50
グラフ51
グラフ52
結果(グラフ46〜48)を見ると、こちらもFar Cry 6同様に2.5Kあたりまで性能差が顕著である。もっともフレームレート変動の2K(グラフ49)を見ると、Ryzen 5 5500を除くとそれなりに性能差があるのは15〜40秒くらいの間と、80秒以降という感じ。特に性能差が顕著なのはその80秒以降で、恐らく平均フレームレートの差はこの80秒以降でついているものと思われる。面白いのはその80秒以降で一番フレームレートが低いのは(Ryzen 5 5500を別にすると)Core i5-12600Kということ。平均フレームレートの数値だけ見てるとそういう感じではないのだが、必ずしもCore i5-12600Kが高速とは言い切れない事が読み取れる。またここでは辛うじてRyzen 5 5600よりもRyzen 7 5700Xの方が高速だが、平均フレームレートを見ると重なっているあたり、その性能差は微妙という感じだ。
○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ53〜59)
Tom Clancy's The Division 2
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/division2/
設定方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。QualityはUltraとした。
グラフ53
グラフ54
グラフ55
グラフ56
グラフ57
グラフ58
グラフ59
これまでに比べて性能差が少ないのがこちら。結果(グラフ53〜55)を見ると、Ryzen 5 5500以外は「性能に大差なし」としてしまって良い様にも思われるほどだ。これは平均フレームレート(グラフ56〜59)からも明白で、2Kにしても明確な性能差があるとは言いにくい。The Division 2をプレイする限り、Ryzen系はRyzen 5 5500以外どれでも同等、としても良い程だと言える。
○◆Watch Dogs:Legion(グラフ60〜66)
Watch Dogs:Legion
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/
ゲームベンチマークの最後はこちらを。ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は
Quality: Very High
RT Reflection: Off
とした。
グラフ60
グラフ61
グラフ62
グラフ63
グラフ64
グラフ65
グラフ66
ということでゲームベンチの最後はCPU負荷高めなこちら。結果(グラフ60〜62)を見ると、見事にばらついているのが判る。どうにか収束するのが4K、というあたりからもCPU依存度の高さが判る。ここでは再びCore i5-12600Kがその性能を誇っており、以下Ryzen 7 5800X、Ryzen 5 5600、Ryzen 7 5700Xと来てRyzen 5 5500の順になる。ただ見た目、Ryzen 5 5600とRyzen 7 5700Xの差はそれほど大きくない様に見える。
これはフレームれーど天道(グラフ63〜66)を見ても判る。2KにおいてRyzen 5 5600とRyzen 7 5700Xはかなりの部分で重なり合っており、そのちょっと上にRyzen 7 5800Xが居るという感じ。2.5Kではさらに重なり合う時間が多く、3KだとRyzen 5 5500まで重なりつつあるが、これはこの辺りの解像度になるとGPU負荷が相対的に高くなるからという事かと思う。
●RMMT 1.1 / Sandra 20/21
○◆RMMT 1.1(グラフ67〜68)
RMMT 1.1
Rightmark.org
http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml
グラフ67
グラフ68
続くSandraの前に、一応こちらも確認しておく。とりあえずDDR5を利用しているCore i5-12600Kは論外として、DDR4を利用するRyzenに関しては概ね同等といったところ。むしろRead(グラフ67)でRyzen 7 5800XがThread数が増えると妙に成績が落ちるのがちょっと気になるところではあるが。また8ThreadでRyzen 5 5600が一番帯域が上、というのも6コアである事を考えるとちょっと不思議ではある。逆にWrite(グラフ68)はまぁこんなもんだろう、という妥当な結果と考えられる。
○◆Sandra 20/21 2021.11.31.81 Tech Support(グラフ69〜106)
Sandra 20/21 2021.11.31.49 Tech Support
SiSoftware
https://www.sisoftware.co.uk/
グラフ69
グラフ70
グラフ71
グラフ72
まずDhrystone/Whetstone(グラフ69〜72)。MT/MC(グラフ69・71)はほぼ動作周波数×コア数といった結果で不思議はない。逆に1T(グラフ70・72)で見ると、性能差はずっと縮まる。ここまでのゲームベンチマークではRyzen 5 5500とRyzen 5 5600の間には結構明確な性能差が見られたが、純粋に演算性能だけ比較するとそれほど差が無い事が確認できる。これはRyzen 7 5700XとRyzen 7 5800Xでも同様だ。
グラフ73
グラフ74
グラフ75
グラフ76
CPU Multimedia(グラフ73〜76)も同じで、こちらだとCore i5-12600Kの性能があまり芳しくない以外はDhrystone/Whetstoneと同じとなっている。
グラフ77
グラフ78
グラフ79
グラフ80
Cryptography(グラフ77〜80)のうち、AES Encryption/Decryptionに関しては、AES命令のスループットそのものはRyzenの方が上だが、メモリ帯域が頭打ちになるためか、MT/MCではCore i5-12600Kの方が上である。あと気になるのは1TでRyzen 5 5500が意外に性能が伸びない事。同じZen 3コアといいつつ、CezanneとVermeerではAES命令のスループットが異なるのか、それとも1TであってもL3容量が半減しているのはペナルティが大きいのか、どっちなのだろう? 逆にHashingに関しては専用命令が無い事もあって、ほぼ動作周波数×コア数に関係した結果になっている。不思議なのは、1TだとCore i5-12600Kの性能は悪くないのに、MT+MCだと芳しくない事だ。どういう理由なのだろう?
グラフ81
グラフ82
グラフ83
グラフ84
グラフ85
グラフ86
Financial Analysis(グラフ81〜83)は、比較的穏当な結果になっている。Core i5-12600KとRyzenではものによって得手不得手があるので、どちらが上というのはケースバイケースになるが、Ryzenに関してはほぼ性能が想定通りに収まっていると言える。これは次のScientific Analysis(グラフ84〜86)も同じである。FFT(グラフ85)に関しては、やはりDDR5の効果でCore i5-12600Kが高速だが、逆にそれ以外で言えばRyzen系が健闘している。
グラフ87
グラフ88
グラフ89
グラフ90
グラフ91
グラフ92
AI Training/Inference(グラフ87〜90)も傾向としては同じ。Core i5-12600KはMT+MCでは高速だが、1Tだと急速に性能が落ちる。対してRyzenは比較的高め安定という感じ。例外はRyzen 5 5500で、やはりL3の容量半減がAI向けでは大きな性能面でのディスアドバンテージになっていることが伺える。Image Processing(グラフ91・92)も傾向としては同じで、MT+MC(グラフ91)ではほぼ動作周波数×コア数で決まる感じ。逆に1T(グラフ92)は純粋に動作周波数の差、という感じだ。
グラフ93
グラフ94
グラフ95
グラフ96
Inter-Thread Latency(グラフ93・94)は、Ryzen系では当たり前であるが意外に大きな差は無い。ただしBandwidth(グラフ95・96)は当然動作周波数の差が大きい。面白いのはRyzen 5 5600Xの4×1Mのケース。8 CoreのRyzen 7 5700X/5800XはギリギリL3が溢れる関係でグンと性能が落ちているのだが、6 CoreのRyzen 5 5600XはL3 Hitする関係で高め安定である。ただこれは理屈を考えれば当然の話で不思議ではないのだが。
グラフ97
グラフ98
絶対的なメモリアクセス帯域(グラフ97・98)は当然ながらMCだとCore i5-12600Kが一番帯域が大きいが、1TにするとRyzen系が上位に来る。要するにコアのLoad/Storeユニットの性能そのものはRyzen系にアドバンテージがあるが、DDR4が足かせになっているわけだ。例外はRyzen 5 5500で、単にL3が半分というだけでなく、元々はGPUとBandwidth Sharingの機能が入ったCezanneコアであることが関係しているのかもしれない(とでも思わないと、1Tでの低迷が説明付かない)。
グラフ99
グラフ100
Cache&Memory Bandwidth(グラフ99・100)の結果を見ると、そのRyzen系のL3の効果が改めて確認できる。L3は持つもののBandwidthはそれなりのCore i5-12600Kの1MB以降を見るとこれは明らかである。
グラフ101
グラフ102
グラフ103
グラフ104
グラフ105
グラフ106
最後にLatency(グラフ101〜106)だが、こちらに関してはあまり特筆すべきことは無い。Ryzen系も特におかしな傾向は見当たらず、ほぼこれまでの結果と一致しているとして良いかと思う。
ちょっとここでSandraの結果だけまとめておくと、純粋なCPU性能という観点で言えば、素直に
Ryzen 5 5500 < Ryzen 5 5600 < Ryzen 7 5700X < Ryzen 7 5800X
の順になっており、またその性能差もコア数や動作周波数の差を考えれば妥当な範囲であると考えられる。相違点としては、やはりRyzen 5 5500のみL3が16MBであり、これが性能に及ぼすインパクトは意外に大きいというあたりだろうか。
●消費電力測定 / 考察と総評
○◆消費電力測定(グラフ107〜114)
最後に消費電力について。Sandra 2021のDhrystone/Whetstone(グラフ107)、CineBench All CPU(グラフ108)、CineBench Single CPU(グラフ109)、TMPGEnc Video Mastering Works 7(グラフ110)、3DMark FireStrike Demo(グラフ111)、Metro Exodus 2K(グラフ112)の6つを測定、それぞれの平均値をグラフ113、平均値とIdle状態の差をグラフ114にまとめてみた。全体を通してみると、やはりRyzen 7 5800Xの消費電力の高さが目立つ。その次にCore i5-12600Kが位置しているというのはまぁ予測できる範囲ではあるが、そりゃ消費電力がこれだけ大きければそうなるよな、という、ある意味納得できる数字である。
グラフ107
グラフ108
グラフ109
グラフ110
グラフ111
グラフ112
グラフ113
グラフ114
Ryzen 5 5600とRyzen 7 5700Xの消費電力がほぼ同等、というのもここから読み取れる。まぁ実際どちらもTDPは65W枠だから当然であり、そうなると65Wを8コアで分配するRyzen 7 5700Xより6コアで分配するRyzen 5 5600の方が動作周波数を上げやすく、それだけ性能が上がる、というのも理解できる。ならRyzen 7 5700Xは要らない子か? というとそんなこともなく、例えばグラフ108で言えばRyzen 7 5700XはRyzen 5 5600と同じ160W近い消費電力をピークで維持しているが、そのピークの時間が10秒ほどRyzen 5 5600より短い。要するにMulti-Thread性能が効果的なアプリケーションでは確実にRyzen 7 5700Xの方が性能が上だし、性能/消費電力比も良い。問題はそうしたアプリケーションはレンダリングとかエンコード、数値計算などに限られており、Office ApplicationとかゲームのシーンではまだSingle-Thread性能の方が大きな影響がある、というあたりかと思う。
○考察と総評 - 既存モデルの値崩れ次第で難しい判断に
ということで駆け足でRyzen 5 5500/5600とRyzen 7 5700Xの3製品を試してみた。冒頭に書いた「Ryzen 7 5700XとRyzen 7 5800Xの性能差と消費電力差」、それと「Ryzen 5 5500/5600の価格性能比がどの程度か」を考えてみたい。
まずRyzen 7 5700Xについて。確かに消費電力は低くなっており、性能/消費電力比はRyzen 7 5800Xよりもかなり良好だと思う。ただし性能/価格比で言うと、これも冒頭に書いたようにRyzen 7 5800Xの値崩れが著しく、ほぼ同じ価格で購入できる事を考えるとやはりRyzen 7 5800Xの方がマシ、という結論になるのは避けられない。コア数が多い方が良く、かつ消費電力は押さえたいというニッチなニーズをお持ちの方には最適かと思うが、そうでなければ後述するRyzen 5 5600の方が良いという結論になる。
次にそのRyzen 5 5500/5600だが、やはりRyzen 5 5500はCezanneコアという事もあり、16MB L3が割と深刻に性能に影響を及ぼしている様に見える。確かに値段は安いが、それに見合った性能というべきか。一方意外にお買い得なのがRyzen 5 5600である。ゲームとかOffice Applicationでの性能も悪くない。勿論レンダリングとかエンコードの性能はRyzen 7には及ばないので、こうした事を多用するユーザーにはお勧めできないが、逆にあまりお金を掛けずにGaming Desktopを構築したいとかいうのであれば、価格的にも消費電力的にもRyzen 5 5600は非常にお勧めである。価格的、というのは今回のCore i5-12600Kと比較した場合、CPU単体で1万弱、メモリ(DDR4 vs DDR5)でこれも1万弱、しかも実はマザーボードの値段もだいぶ違う(H670マザーボードが大体2万5,000円前後、対してB550は1万5,000円前後)事を考えると、実質今回のテスト構成だと総額で3万違ってくる。勿論DDR4マザーボードと組み合わせれば価格差は大分減るが、その代わりCore i5-12600K側の性能は確実に落ちる。性能/価格比を考えれば、Ryzen 5 5600はかなり良い選択肢と言えるだろう。
問題があるとすれば、Ryzen 5 5500/5600はOC出来ない事。それと今年後半にはAM5プラットフォームが導入されるのに、今更AM4を買うか? という話であろう(これはRyzen 7 5700Xにも言えるが)。その意味では、これから新規にマシンを組むというユーザーは、とりあえず低価格でバランスの良いRyzen 5 5600をベースにするか、将来のアップグレードの余地があるCore i5-12600Kを(総額で3万余分に払って)購入するかという選択肢となる。どちらが良いか? というのはもう個人の好みとしか言いようがない。
一方Ryzen 7 5700Xは、既にAM4プラットフォームを所有するユーザー向けの、最後のアップグレード向けという感じになりそうだ。消費電力が65Wのままだから既存のプラットフォームでも無理は少ないし、OCをしないなら既存のCPUクーラーのままでも行けるだろう。AMD 300シリーズチップセットでの動作もサポートされたことだし、AM4を使いつくしたいユーザー向けと言う位置づけになるかと思う。先にも書いたが価格性能比ではRyzen 7 5800Xの方が良いと思う。ただしこちらは105WのTDPが、特にアップグレード向けではネックになりそうだ。ちなみに消費電力を問題にするならRyzen 7 5800X3Dの方がいいかもしれないが、こちらは更に価格が上がるあたりが問題だろうか。その意味では、価格と消費電力、性能のバランスが取れているのがRyzen 7 5700Xとなるだろう。
こちらでご紹介したように、AMDはDesktop向けにRyzen 5000シリーズとRyzen 4000シリーズを追加する事を発表した。発売日は4月15日とされ、ローエンドのRyzen 3 4100で14,800円、トップエンドのRyzen 7 5700Xで42,800円とされている。秋葉原では既に発売が開始されており、概ねAMDの発表した予想小売価格に近い値付けとなっている。
今回は写真のRyzen 7 5700Xのほか、より手頃なRyzen 5 5500/5600も一緒に評価する
○評価機材
今回評価したのはRyzen 5 5500/5600(Photo01〜12)とRyzen 7 5700X(Photo13〜17)である。その他の環境は表1の通り。比較対象としては、Ryzen 7 5800XとCore i5-12600Kを持ってきた。Ryzen 7 5800Xについては、Ryzen 7 5700Xとの比較用である。この2つの製品は動作周波数が3.4GHz/4.6GHz vs 3.8GHz/4.7GHzと、Baseはちょっと差があるがBoostはさほどでもなく、その割にTDPは65W(Ryzen 7 5800Xは100W)と手頃であり、コア数を必要とするユーザーにとっても割と良い選択肢になり得る。実はこの2製品、実売価格もかなり接近している。Ryzen 7 5700Xはこちらにもある様に43,000円前後、対してRyzen 7 5800Xはこちらで触れた様に46,000円前後だったのが、この原稿執筆段階ではさらに値下がりして43,383円とかになっている(Photo18)事を考えるとほぼ同等といったところで、性能を取るか消費電力を取るかといった感じなので、その性能差(と消費電力差)はどの程度なのかを見極めてみたい。
Photo01: パッケージは当然ながら見た所一緒。
Photo02: 上面のシールが唯一の差となる。クーラー内蔵なのでちょっと箱は重い。
Photo03: こちらのグレードはCPUクーラー(Wraith Stealth)が付属する。
Photo04: CPUパッケージは他と変わらず。下の黒い箱にクーラーが内蔵されている。
Photo05: Ryzen 5 5500。製造は2020年となっている。
Photo06: Ryzen 5 5600も製造は2020年。
Photo07: おなじみWraith Stealth。
Photo08: フィン部分は薄めだが、これで65Wまで対応できる。正直、良くできたクーラーだと思う。
Photo09: Ryzen 5 5500はCezanneをベースにGPUを無効化したダイとなる(ため、L3も16MB)。
Photo10: 勿論Windowsからは問題なく認識される。
Photo11: Ryzen 5 5600はVermeerベース。なのでL3は32MB。
Photo12: Windowsから見ると、Ryzen 5 5500の高クロック版といった風にしか見えない。
Photo13: CPUクーラーは内蔵されないので、パッケージは当然軽め。
Photo14: 内蔵されるのはCPUだけ。正直言えばTDPは65Wなのだし、Wraith Stealthを同梱してくれても構わない気がするのだが、OC対応のXモデルだからOCするとWraith Stealthでは厳しいという部分もあるのだろう。
Photo15: こちらも2020年製造となっている。
Photo16: 当然Vermeer。L3は32MB。
Photo17: きちんと8core/16threadで認識される。
Photo18: Keepaによる価格推移。4月23日あたりから今の価格まで落ちている。
一方Ryzen 5は5500が23,500円前後、5600が29,000円前後とされている。対抗馬となるのは、本来だとCore i5-12400あたり(原稿執筆時点のAmazonでの価格は27,980円)になるのだが、機材調達の関係でもう少しグレードが上がるCore i5-12600Kになってしまった。Amazonでは原稿執筆段階では品切れだが、Keepaを見ると直前の価格が38,771円となっている(Photo19)。この辺りを勘案して、Ryzen 5 5500/5600の価格性能比がどの程度か(逆に言えば、Core i5-12600KがRyzen 5 5500/5600より1万円高いのは妥当か)を判断してみたいと思う。
Photo19: 割と高め安定というか、4万をちょい切る位で安定している。
ところでテスト環境だが、これは実は先にレポートしたRyzen 7 5800X3Dのテストの際の環境そのままである。というか、テストそのものは一緒に行っており、ただ分析は全部まとめて出すと間に合わない&分析項目が多くなりすぎるという事で分割させていただいた。そんな訳で個々のテスト手順(ゲームにおけるグラフィック品質の設定)は全く同一である。
グラフ中の表記は
R5 5500:Ryzen 5 5500
R5 5600:Ryzen 5 5600
R7 5700X:Ryzen 7 5700X
R7 5800X:Ryzen 7 5800X
i5-12600K:Core i5-12600K
となっている。また本文中の解像度表記は、いつものように
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただいた。
○◆PCMark 10 v2.1.2535(グラフ1〜6)
PCMark 10 v2.1.2535
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
グラフ1
グラフ2
グラフ3
グラフ4
グラフ5
グラフ6
ではまずPCMarkから。Overall(グラフ1)を見ると、全体的にちょっと不思議な傾向である。まずCore i5-12600Kが妙に高いスコアなのだが、PCMark 10 Applicationsではそれほどでもないところを見ると、スコアの差はCPU性能そのものではない気がする。あと面白いのは、Ryzenの中ではRyzen 5 5600Xが最高速な事だ。この傾向はTest Group(グラフ2)でも共通である。
Essential(グラフ3)ではApp Startupのみ飛びぬけてCore i5-12600Kが高速。一方Ryzen 5 5600も良いスコアであり、逆にRyzen 7 57000XはRyzen 7 5800Xと大差なし。この傾向はProductivity(グラフ4)も似ており、今度はSpreadsheetsでのみCore i5-12600Kが飛びぬけている。Contents Creation(グラフ5)ではRendering And Visualizationのみ、突出してCore i5-12600Kの性能が高い。このDigital Contents CreationではまたRyzen 7 5800XよりもRyzen 7 5700XやRyzen 5 5600Xの方がスコアが高いという珍事も発生している。そしてApplications(グラフ6)では、やはりCore i5-12600KがExcelのみスコアが極端に高い、と言う結果になっている。
実はこの傾向は、Ryzen 7 5800X3Dに結構似ている。あちらはメモリアクセスが多くなるアプリケーションで、大容量L3の効果で高速化(Excelとかが良い例)だったが、こちらはCore i5-12600KのみDDR5の効果でこうした処理が高速化されているように見える。
一方でRyzen 5 5600は、TDPこそ65WながらBase 3.7GHzとやや周波数が高めで、しかも6コアということでBoostを掛けやすい(全コアBoostにしても、8コア製品より消費電力が低めに抑えられる)あたりが好成績に繋がった様に思われる。Ryzen 7 5700Xはこれに比べるとややスコア低めであるが、Ryzen 7 5800Xから大きく性能を落としているという風でもない。
○◆Procyon v2.0.399(グラフ7〜10)
Procyon v2.0.399
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon
グラフ7
グラフ8
グラフ9
グラフ10
引き続きProcyon。こちらでもやはりCore i5-12600Kのスコアがトップで、Ryzen 5はともかくRyzen 7 5700X/5800Xの存在価値が問われかねないが、DDR5を利用しているという時点でシステムコスト的にはCore i5-12600Kの方が高価という事を考えると、まぁ性能/価格比では同等と考えてよい様にも思われる。
それはともかくとして、Ryzenの方を見てみると、全体にRyzen 5 5500はそれなりに性能差があるが、Ryzen 5 5600とRyzen 7 5700X/5800Xの性能差がそれほど無い、というのは象徴的である。唯一ここで明白に差が出ているのはVideo Editing。やはりコア数×動作周波数、がそのままストレートに効いてくる感じであり、ここではRyzen 5 5500/5600はおろかRyzen 7 5700XもRyzen 7 5800Xには敵わないといったところだろうか。
○◆CineBench R23(グラフ11)◆POV-Ray V3.7.1 Beta9(グラフ12)◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.19.21(グラフ13)
CineBench R23
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench
POV-Ray V3.7.1 Beta9
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.19.21
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html
グラフ11
グラフ12
グラフ13
コア数×動作周波数がそのまま反映される、というのがこうしたレンダリング系やエンコード系であり、こうしたシーンではRyzen 7 5700XはRyzen 7 5800Xに敵わないし、Ryzen 5 5500/5600は結構大きな性能差となることが結果からも明白である。ただ逆に言えば、こうしたレンダリング/エンコード系の処理を激しくやりたい、という訳で無ければそれほど性能差が無い(これはPCMark 10の結果からも明らか)訳で、どんな用途を求めているか次第ということになる。とりあえずレンダリングやエンコードでは、安いCPUの性能はそれなり、という当然の結論になる。
○◆3DMark v2.22.7336(グラフ14〜17)
3DMark v2.22.7336
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
グラフ14
グラフ15
グラフ16
グラフ17
では3Dでは? ということでまずは定番の3DMarkを。Overall(グラフ14)を見ると、まぁGPUがGeForce RTX 3080 Tiと比較的高性能な部類のものを使っている事もあるが、予想以上に性能差が少ない。大きくばらけるのはNightRaid程度である。この傾向はGraphics Test(グラフ15)も同じで、特にFireStrike以降ではもうCPUによるスコア差が皆無としていいほどに拮抗した性能になっている。勿論Physics/CPU Test(グラフ16)では性能差が見られるが、問題はこれが実際のゲームでどこまで関係してくるか? というあたりではないかと思う。Combined Test(グラフ17)では、負荷の低いFireStrikeでは差が大きい(何故Core i5-12600Kが一番スコアが悪いのかが良く判らない)が、FireStrike Extreme/UltraとGPU側の負荷が上がるにつれて差が殆ど無くなるあたり、CPU性能差が出るのは解像度が低い時だけ、という当たり前といえば当たり前の結果になったが、逆にGPUの足を引っ張るほど深刻な性能不足ということはまぁ無さそう、と判断される。
●ゲームその1:Borderlands 3 / F1 2021 / Far Cry 6 / Metro Exodus
○◆Borderlands 3(グラフ18〜24)
Borderlands 3
2K Games
https://borderlands.com/ja-JP/
では実際のゲームを使った場合はどうか? 最初はBorderland 3、設定方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。全体的な品質は「ウルトラ」である。
グラフ18
グラフ19
グラフ20
グラフ21
グラフ22
グラフ23
グラフ24
結果(グラフ18〜20)を見る限り、確かに2Kではそれなりに差があると言えばある(なぜかRyzen 7 5700Xが一番平均フレームレートが低い)のだが、2.5Kあたりではだいぶ収束し、3K以上では大差なしという格好になっている。まぁこれは当然ではあるのだが。
実際のフレームレート変動を見ると、2K(グラフ21)では結構差が大きいのだが、75秒あたりからで言えば一番高速なのがCore i5-12600K、次がRyzen 5 5500というのはちょっと不思議である(15〜25秒あたりも同じ傾向)。ただ2.5K(グラフ22)だと差が縮まるうえ、40〜60秒付近ではむしろCore i5-12600KやRyzen 5 5500の方がフレームレートが下回る結果になっており、3K/4K(グラフ23・24)では全体的にCore i5-12600KやRyzen 5 5500が低め、という事になるともう単純にCPUの性能とは言い切れない。強いて言えばL3キャッシュの容量の違いということだろうか? こうなってくると、どちらが良いとも言いにくい。とりあえず、Ryzen 4製品に関しては「大きな違いは無い」というあたりに収束しそうだ。
○◆F1 2021(グラフ25〜31)
F1 2021
EA Sports
https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-2021
ベンチマーク方法はこちらのF1 2022の項目に準ずる。設定は
Anisotropic Filtering: 16x
Anti-Aliasing: TAA Only
Detail Preset: Ultra
DXR: Medium
としている。
グラフ25
グラフ26
グラフ27
グラフ28
グラフ29
グラフ30
グラフ31
結果(グラフ25〜27を見ると、これも2Kのみ大きく差があるが、2.5K以上は収束するという何時ものパターンであり、なのでCPU性能差は2Kで判断するのが妥当かと思う。その2K、とりあえずCore i5-12600Kは別として、Ryzen 7 5800Xに続くのがRyzen 5 5600というのは考えさせられるものがある。とはいえRyzen 7 5700Xもそう大きな差ではない。CezanneベースのRyzen 5 5500は、ちょっと無視できない性能差だと思うが、それ以外の3製品はそう大きな差ではない、として良いかと思う。これはフレームレート変動(グラフ28〜31)からも明白で、実際2Kの場合Ryzen 7 5800XとRyzen 5 5600はほぼ重なっているし、Ryzen 7 5700Xも差はそう大きくないとして良いかと思う。
ところでRyzen 5 5500がここまで性能差が出る理由が良く判らない。一つはL3が16MBという事だが、それだけで2.5Kでここまで差が出るのか、ちょっと不思議ではある。
○◆Far Cry 6(グラフ32〜38)
Far Cry 6
Ubisofy Entertainment
https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6
ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は
Quality: High
Antialias: TAA
DXR Reflections/Shadows On
としている。
グラフ32
グラフ33
グラフ34
グラフ35
グラフ36
グラフ37
グラフ38
こちらではもう少し差の出方が顕著だ。結果(グラフ32〜34)を見ると、3Kあたりまで明確な性能差がある。2Kの時点で言えば最高速がRyzen 7 5800X、ついでCore i5-12600K、Ryzen 5 5600、Ryzen 7 5700Xときて最後がRyzen 5 5500となっており、これは3Kあたりまでほぼ共通。4KではRyzen 5 5500以外はほぼ同等スコアになっているが、要するにこれはそれだけRyzen 5 5500が奮わないという事でもある。
これはフレームレート変動(グラフ35〜38)でも明白で、2K(グラフ35)だとRyzen 7 5800XとCore i5-12600K、Ryzen 5 5600がそれぞれ20fps近く違う(20〜30秒付近)あたりからも性能差が明白、として良いかと思う。
○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ39〜45)
Metro Exodus PC:Enhanced Edition
4A Games
https://www.metrothegame.com/
ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定はUltraのプリセットをそのまま利用した。
グラフ39
グラフ40
グラフ41
グラフ42
グラフ43
グラフ44
グラフ45
結果(グラフ39〜41)を見ると、Ryzen 5 5500以外はほぼ同等、といった感じになっている。まぁそれだけGPU負荷が高いという話であるが、GeForce RTX 3080 Tiですらこんな感じなので、もっと下位グレードだと更に差は少ない事になる。
フレームレート変動(グラフ42〜45)を見ても、もうRyzen 5 5500以外はちょっと太目の1本の線、という感じになっており、ここでは大きな性能差は無いとして良い様に思われる。
●ゲームその2:Tomb Raider / Division 2 / Watch Dogs
○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ46〜52)
Shadow of the Tomb Raider
SQUARE ENIX
https://tombraider.square-enix-games.com/en-us
設定方法はこちらに準じる。QualityはHighとした。
グラフ46
グラフ47
グラフ48
グラフ49
グラフ50
グラフ51
グラフ52
結果(グラフ46〜48)を見ると、こちらもFar Cry 6同様に2.5Kあたりまで性能差が顕著である。もっともフレームレート変動の2K(グラフ49)を見ると、Ryzen 5 5500を除くとそれなりに性能差があるのは15〜40秒くらいの間と、80秒以降という感じ。特に性能差が顕著なのはその80秒以降で、恐らく平均フレームレートの差はこの80秒以降でついているものと思われる。面白いのはその80秒以降で一番フレームレートが低いのは(Ryzen 5 5500を別にすると)Core i5-12600Kということ。平均フレームレートの数値だけ見てるとそういう感じではないのだが、必ずしもCore i5-12600Kが高速とは言い切れない事が読み取れる。またここでは辛うじてRyzen 5 5600よりもRyzen 7 5700Xの方が高速だが、平均フレームレートを見ると重なっているあたり、その性能差は微妙という感じだ。
○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ53〜59)
Tom Clancy's The Division 2
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/division2/
設定方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。QualityはUltraとした。
グラフ53
グラフ54
グラフ55
グラフ56
グラフ57
グラフ58
グラフ59
これまでに比べて性能差が少ないのがこちら。結果(グラフ53〜55)を見ると、Ryzen 5 5500以外は「性能に大差なし」としてしまって良い様にも思われるほどだ。これは平均フレームレート(グラフ56〜59)からも明白で、2Kにしても明確な性能差があるとは言いにくい。The Division 2をプレイする限り、Ryzen系はRyzen 5 5500以外どれでも同等、としても良い程だと言える。
○◆Watch Dogs:Legion(グラフ60〜66)
Watch Dogs:Legion
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/
ゲームベンチマークの最後はこちらを。ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は
Quality: Very High
RT Reflection: Off
とした。
グラフ60
グラフ61
グラフ62
グラフ63
グラフ64
グラフ65
グラフ66
ということでゲームベンチの最後はCPU負荷高めなこちら。結果(グラフ60〜62)を見ると、見事にばらついているのが判る。どうにか収束するのが4K、というあたりからもCPU依存度の高さが判る。ここでは再びCore i5-12600Kがその性能を誇っており、以下Ryzen 7 5800X、Ryzen 5 5600、Ryzen 7 5700Xと来てRyzen 5 5500の順になる。ただ見た目、Ryzen 5 5600とRyzen 7 5700Xの差はそれほど大きくない様に見える。
これはフレームれーど天道(グラフ63〜66)を見ても判る。2KにおいてRyzen 5 5600とRyzen 7 5700Xはかなりの部分で重なり合っており、そのちょっと上にRyzen 7 5800Xが居るという感じ。2.5Kではさらに重なり合う時間が多く、3KだとRyzen 5 5500まで重なりつつあるが、これはこの辺りの解像度になるとGPU負荷が相対的に高くなるからという事かと思う。
●RMMT 1.1 / Sandra 20/21
○◆RMMT 1.1(グラフ67〜68)
RMMT 1.1
Rightmark.org
http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml
グラフ67
グラフ68
続くSandraの前に、一応こちらも確認しておく。とりあえずDDR5を利用しているCore i5-12600Kは論外として、DDR4を利用するRyzenに関しては概ね同等といったところ。むしろRead(グラフ67)でRyzen 7 5800XがThread数が増えると妙に成績が落ちるのがちょっと気になるところではあるが。また8ThreadでRyzen 5 5600が一番帯域が上、というのも6コアである事を考えるとちょっと不思議ではある。逆にWrite(グラフ68)はまぁこんなもんだろう、という妥当な結果と考えられる。
○◆Sandra 20/21 2021.11.31.81 Tech Support(グラフ69〜106)
Sandra 20/21 2021.11.31.49 Tech Support
SiSoftware
https://www.sisoftware.co.uk/
グラフ69
グラフ70
グラフ71
グラフ72
まずDhrystone/Whetstone(グラフ69〜72)。MT/MC(グラフ69・71)はほぼ動作周波数×コア数といった結果で不思議はない。逆に1T(グラフ70・72)で見ると、性能差はずっと縮まる。ここまでのゲームベンチマークではRyzen 5 5500とRyzen 5 5600の間には結構明確な性能差が見られたが、純粋に演算性能だけ比較するとそれほど差が無い事が確認できる。これはRyzen 7 5700XとRyzen 7 5800Xでも同様だ。
グラフ73
グラフ74
グラフ75
グラフ76
CPU Multimedia(グラフ73〜76)も同じで、こちらだとCore i5-12600Kの性能があまり芳しくない以外はDhrystone/Whetstoneと同じとなっている。
グラフ77
グラフ78
グラフ79
グラフ80
Cryptography(グラフ77〜80)のうち、AES Encryption/Decryptionに関しては、AES命令のスループットそのものはRyzenの方が上だが、メモリ帯域が頭打ちになるためか、MT/MCではCore i5-12600Kの方が上である。あと気になるのは1TでRyzen 5 5500が意外に性能が伸びない事。同じZen 3コアといいつつ、CezanneとVermeerではAES命令のスループットが異なるのか、それとも1TであってもL3容量が半減しているのはペナルティが大きいのか、どっちなのだろう? 逆にHashingに関しては専用命令が無い事もあって、ほぼ動作周波数×コア数に関係した結果になっている。不思議なのは、1TだとCore i5-12600Kの性能は悪くないのに、MT+MCだと芳しくない事だ。どういう理由なのだろう?
グラフ81
グラフ82
グラフ83
グラフ84
グラフ85
グラフ86
Financial Analysis(グラフ81〜83)は、比較的穏当な結果になっている。Core i5-12600KとRyzenではものによって得手不得手があるので、どちらが上というのはケースバイケースになるが、Ryzenに関してはほぼ性能が想定通りに収まっていると言える。これは次のScientific Analysis(グラフ84〜86)も同じである。FFT(グラフ85)に関しては、やはりDDR5の効果でCore i5-12600Kが高速だが、逆にそれ以外で言えばRyzen系が健闘している。
グラフ87
グラフ88
グラフ89
グラフ90
グラフ91
グラフ92
AI Training/Inference(グラフ87〜90)も傾向としては同じ。Core i5-12600KはMT+MCでは高速だが、1Tだと急速に性能が落ちる。対してRyzenは比較的高め安定という感じ。例外はRyzen 5 5500で、やはりL3の容量半減がAI向けでは大きな性能面でのディスアドバンテージになっていることが伺える。Image Processing(グラフ91・92)も傾向としては同じで、MT+MC(グラフ91)ではほぼ動作周波数×コア数で決まる感じ。逆に1T(グラフ92)は純粋に動作周波数の差、という感じだ。
グラフ93
グラフ94
グラフ95
グラフ96
Inter-Thread Latency(グラフ93・94)は、Ryzen系では当たり前であるが意外に大きな差は無い。ただしBandwidth(グラフ95・96)は当然動作周波数の差が大きい。面白いのはRyzen 5 5600Xの4×1Mのケース。8 CoreのRyzen 7 5700X/5800XはギリギリL3が溢れる関係でグンと性能が落ちているのだが、6 CoreのRyzen 5 5600XはL3 Hitする関係で高め安定である。ただこれは理屈を考えれば当然の話で不思議ではないのだが。
グラフ97
グラフ98
絶対的なメモリアクセス帯域(グラフ97・98)は当然ながらMCだとCore i5-12600Kが一番帯域が大きいが、1TにするとRyzen系が上位に来る。要するにコアのLoad/Storeユニットの性能そのものはRyzen系にアドバンテージがあるが、DDR4が足かせになっているわけだ。例外はRyzen 5 5500で、単にL3が半分というだけでなく、元々はGPUとBandwidth Sharingの機能が入ったCezanneコアであることが関係しているのかもしれない(とでも思わないと、1Tでの低迷が説明付かない)。
グラフ99
グラフ100
Cache&Memory Bandwidth(グラフ99・100)の結果を見ると、そのRyzen系のL3の効果が改めて確認できる。L3は持つもののBandwidthはそれなりのCore i5-12600Kの1MB以降を見るとこれは明らかである。
グラフ101
グラフ102
グラフ103
グラフ104
グラフ105
グラフ106
最後にLatency(グラフ101〜106)だが、こちらに関してはあまり特筆すべきことは無い。Ryzen系も特におかしな傾向は見当たらず、ほぼこれまでの結果と一致しているとして良いかと思う。
ちょっとここでSandraの結果だけまとめておくと、純粋なCPU性能という観点で言えば、素直に
Ryzen 5 5500 < Ryzen 5 5600 < Ryzen 7 5700X < Ryzen 7 5800X
の順になっており、またその性能差もコア数や動作周波数の差を考えれば妥当な範囲であると考えられる。相違点としては、やはりRyzen 5 5500のみL3が16MBであり、これが性能に及ぼすインパクトは意外に大きいというあたりだろうか。
●消費電力測定 / 考察と総評
○◆消費電力測定(グラフ107〜114)
最後に消費電力について。Sandra 2021のDhrystone/Whetstone(グラフ107)、CineBench All CPU(グラフ108)、CineBench Single CPU(グラフ109)、TMPGEnc Video Mastering Works 7(グラフ110)、3DMark FireStrike Demo(グラフ111)、Metro Exodus 2K(グラフ112)の6つを測定、それぞれの平均値をグラフ113、平均値とIdle状態の差をグラフ114にまとめてみた。全体を通してみると、やはりRyzen 7 5800Xの消費電力の高さが目立つ。その次にCore i5-12600Kが位置しているというのはまぁ予測できる範囲ではあるが、そりゃ消費電力がこれだけ大きければそうなるよな、という、ある意味納得できる数字である。
グラフ107
グラフ108
グラフ109
グラフ110
グラフ111
グラフ112
グラフ113
グラフ114
Ryzen 5 5600とRyzen 7 5700Xの消費電力がほぼ同等、というのもここから読み取れる。まぁ実際どちらもTDPは65W枠だから当然であり、そうなると65Wを8コアで分配するRyzen 7 5700Xより6コアで分配するRyzen 5 5600の方が動作周波数を上げやすく、それだけ性能が上がる、というのも理解できる。ならRyzen 7 5700Xは要らない子か? というとそんなこともなく、例えばグラフ108で言えばRyzen 7 5700XはRyzen 5 5600と同じ160W近い消費電力をピークで維持しているが、そのピークの時間が10秒ほどRyzen 5 5600より短い。要するにMulti-Thread性能が効果的なアプリケーションでは確実にRyzen 7 5700Xの方が性能が上だし、性能/消費電力比も良い。問題はそうしたアプリケーションはレンダリングとかエンコード、数値計算などに限られており、Office ApplicationとかゲームのシーンではまだSingle-Thread性能の方が大きな影響がある、というあたりかと思う。
○考察と総評 - 既存モデルの値崩れ次第で難しい判断に
ということで駆け足でRyzen 5 5500/5600とRyzen 7 5700Xの3製品を試してみた。冒頭に書いた「Ryzen 7 5700XとRyzen 7 5800Xの性能差と消費電力差」、それと「Ryzen 5 5500/5600の価格性能比がどの程度か」を考えてみたい。
まずRyzen 7 5700Xについて。確かに消費電力は低くなっており、性能/消費電力比はRyzen 7 5800Xよりもかなり良好だと思う。ただし性能/価格比で言うと、これも冒頭に書いたようにRyzen 7 5800Xの値崩れが著しく、ほぼ同じ価格で購入できる事を考えるとやはりRyzen 7 5800Xの方がマシ、という結論になるのは避けられない。コア数が多い方が良く、かつ消費電力は押さえたいというニッチなニーズをお持ちの方には最適かと思うが、そうでなければ後述するRyzen 5 5600の方が良いという結論になる。
次にそのRyzen 5 5500/5600だが、やはりRyzen 5 5500はCezanneコアという事もあり、16MB L3が割と深刻に性能に影響を及ぼしている様に見える。確かに値段は安いが、それに見合った性能というべきか。一方意外にお買い得なのがRyzen 5 5600である。ゲームとかOffice Applicationでの性能も悪くない。勿論レンダリングとかエンコードの性能はRyzen 7には及ばないので、こうした事を多用するユーザーにはお勧めできないが、逆にあまりお金を掛けずにGaming Desktopを構築したいとかいうのであれば、価格的にも消費電力的にもRyzen 5 5600は非常にお勧めである。価格的、というのは今回のCore i5-12600Kと比較した場合、CPU単体で1万弱、メモリ(DDR4 vs DDR5)でこれも1万弱、しかも実はマザーボードの値段もだいぶ違う(H670マザーボードが大体2万5,000円前後、対してB550は1万5,000円前後)事を考えると、実質今回のテスト構成だと総額で3万違ってくる。勿論DDR4マザーボードと組み合わせれば価格差は大分減るが、その代わりCore i5-12600K側の性能は確実に落ちる。性能/価格比を考えれば、Ryzen 5 5600はかなり良い選択肢と言えるだろう。
問題があるとすれば、Ryzen 5 5500/5600はOC出来ない事。それと今年後半にはAM5プラットフォームが導入されるのに、今更AM4を買うか? という話であろう(これはRyzen 7 5700Xにも言えるが)。その意味では、これから新規にマシンを組むというユーザーは、とりあえず低価格でバランスの良いRyzen 5 5600をベースにするか、将来のアップグレードの余地があるCore i5-12600Kを(総額で3万余分に払って)購入するかという選択肢となる。どちらが良いか? というのはもう個人の好みとしか言いようがない。
一方Ryzen 7 5700Xは、既にAM4プラットフォームを所有するユーザー向けの、最後のアップグレード向けという感じになりそうだ。消費電力が65Wのままだから既存のプラットフォームでも無理は少ないし、OCをしないなら既存のCPUクーラーのままでも行けるだろう。AMD 300シリーズチップセットでの動作もサポートされたことだし、AM4を使いつくしたいユーザー向けと言う位置づけになるかと思う。先にも書いたが価格性能比ではRyzen 7 5800Xの方が良いと思う。ただしこちらは105WのTDPが、特にアップグレード向けではネックになりそうだ。ちなみに消費電力を問題にするならRyzen 7 5800X3Dの方がいいかもしれないが、こちらは更に価格が上がるあたりが問題だろうか。その意味では、価格と消費電力、性能のバランスが取れているのがRyzen 7 5700Xとなるだろう。