「婚姻数、戦後最低の50万人」が暗示する日本の怖い現実
2020年、日本の婚姻数は戦後最低の52万5,507組となった。2019年は59万9,007組だったため、1年間で7万3,500件も婚姻数が減ったことになる。コロナ禍で結婚を先延ばししたカップルが多かったからだ。一時的な現象ではあるが、婚姻数の減少は日本の未来に暗い影を落とす。
■2020年の婚姻数は「52万5,507組」、戦後最低
まずは、戦後から現在までの年間婚姻数の推移を見ていこう。以下、5年ごとの数字を示した。1972年の109万9,984組をピークに婚姻数は減っており、2020年はコロナの影響があったとはいえ、ピーク時の半分以下になっている。
■コロナ禍が影響して婚姻数が大きく減少
新型コロナウイルスの感染拡大で、結婚式や披露宴を開きにくくなった。遠距離恋愛をしているカップルの場合、都道府県をまたいで会うことも困難になり、結果として結婚まで話が至らなかったケースもあるはずだ。
「婚活」がしにくくなったことも、少なからず影響している。2020年1月に国内でコロナ患者が初確認されたあと、国内では婚活イベントの開催が難しくなった。本来であれば2020年内に出会い、そのまま年内にスピード結婚するカップルも相当数いたはずだが、そのようなケースも極端に減ったと思われる。
では、婚姻数が減るとどのような影響が出てくるだろうか。直接的に起きることは、出生数の減少だ。そして出生数が減少すれば総人口も減り、将来的な労働力不足、そして少子高齢化の加速などにつながる。
労働力不足の悪化は、企業にとってはマイナスが多い。事業の拡大に向けて人手を増やすことが難しくなるほか、雇用コストも上昇することになる。雇用コストが増加するのは、人手不足の中では人を雇うための採用活動に、より時間と手間がかかるようになるからだ。
■コロナ禍が収束しても減少傾向は止まらない?
一方、中には、コロナ禍が収束すればこのような状況が解消すると楽観視する人もいるかもしれない。しかし、婚姻数は年々減少の一途をたどっており、しかもそれが単純に日本の人口減に伴う減少ではないから問題はやっかいだ。「婚姻率」が大きく減っているのである。
婚姻率とは、「人口1,000人に対する婚姻件数の割合」を指す。この婚姻率が戦後、以下のように推移してきた。ピークは1971年の10.5で、2020年は4.3まで落ち込んでいる。ちなみにビフォーコロナでも4.8で、ピークの半分以下となっている。
■50歳時未婚率も戦後最高、男性25.7%、女性16.4%に
婚姻率ではなく「未婚率」でみても、結婚をしない男女が増えていることがうかがえる。
2020年国勢調査の結果によれば、「50歳時未婚率」(45〜49歳の未婚率と50〜54歳の未婚率の平均 ※かつては「50歳時未婚率」のことを「生涯未婚率」と呼んでいた)は、男性が25.7%、女性が16.4%となっている。
国勢調査が前回あった2015年と比べると、男女ともに2.3ポイント上昇している。ちなみに1985年までは男女ともに50歳時未婚率は5%以下だった。
■日本はどうすべきか、さらに真剣な議論が必要
もちろん、全ての人が結婚しなければならないわけではない。しかし、結婚に対する考え方が多様化し、日本の平均年収が上がらずに結婚に躊躇する人が増える中、今後も婚姻率が下がり続け、未婚率が増え続ける可能性は高い。
その場合、労働力不足や少子高齢化の問題は一層深刻化する。まさに、日本の未来に暗い影を落としていると言えるだろう。では日本はこれからどうしていけばいいのか。その答えを導き出すのは難しいが、今までにも増して政治の場での議論が必要になると言えるのは確かだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)