「2極化が進んだ一年」2021年のスマホ主要20機種を改めて振り返る【後編】
2021年に登場した製品を見ることで、スマホ市場を改めて振り返る本稿。前編では人気モデルや各メーカーのハイエンドモデルを見てきましたが、後編となる今回はカメラ機能に特化したモデルや折りたたみスマホを取り上げて振り返っていきます。
【その11】味わい深い写真を撮影できるAQUOS R6とLeitz Phone
スマホの数ある機能の中でも、「カメラ」はメーカーの個性が出る部分です。2021年はカメラ機能を磨き上げたハイエンドスマホが多数登場しました。
スマホらしからぬアプローチを仕掛けたのがシャープです。「AQUOS R6」はコンデジ向けの1インチイメージセンサーをスマホの薄型ボディに詰め込んで、味わい深いボケ感のある写真を撮れるようにしました。また、このAQUOS R6の派生モデルとして、カメラの名門・ライカと共同で開発した「Leitz Phone」も発売されました。
AQUOS R6とLeitz Phoneの写りは良くも悪くもスマホらしからぬ出来。料理や動く被写体などは苦手ですが、スナップショットはほかのスマホでは表現できない味わいがあります。
一方で「スマホのカメラ」らしい機動性や、手軽さを失わせてしまった部分もあります。カメラを起動してからシャッターを切るまでのスピードや、光学ボケを入れたくないシーンでボケてしまうといった点は、1インチセンサーの構造的な弱点と言えるでしょう。
また、ライカのスマホ参入はそのこと自体がニュースですが、Leitz Phoneは、AQUOS R6の派生モデルと言える程度のカスタマイズにとどまっています。ただし、Leitz Phoneの発表と同時に、ライカはシャープとの長期的な提携締結も発表。2022年以降の新モデルでは、“カメラの流儀”を融合させたLeitz Phoneの登場も期待できそうです。
【その12】スマホと高級コンデジを合体させたようなXperia PRO-I
ソニーはカメラに特化したSIMフリーモデル「Xperia PRO-I」を発売しました。スマホと高級コンデジを1台に合体させたようなモデルです。カメラ向けイメージセンサーで高いシェアを持つソニーらしく、高速連写や瞳AFといった、デジカメ譲りの特徴を備えています。センサーサイズはAQUOS R6と同じ1インチですが、より純粋にカメラとしての機動性を追求した仕上がりになっています。
1インチセンサー搭載という点では、7月に発表されたAQUOS R6に先行されましたが、その使い方はよりこなれたものとなっています。
ややマニアックな話になりますが、Xperia PRO-Iのセンサーは、フォーカスあわせが高速な「像面位相差AFオートフォーカス」をスマホで初めて搭載し、瞳AFに対応するなど、動体撮影にも強くなっています。また、2段階の光学式絞りの搭載で「全体がボケない」写真を撮りやすくなっていることも見逃せません。
さらに、描写が甘めになりがちなセンサーの周縁部はあえて撮影領域とせず、手ぶれ補正などで活用するなど、よりカメラとしての機動性を重視した仕様。ソニーは一眼レフカメラ「αシリーズ」やイメージセンサーそのもの開発も手がけていますが、Xperia PRO-Iは、まさにその総力を結集してスマホにつぎ込んだ“カメラ特化型スマホ”です。スマホカメラと高級コンデジの両方の機能を併せ持つ分、どうしても値段は高くなってしまいますが、カメラ専用機を使っている人ならば、その価値を理解できるでしょう。
【その13】デジタルズーム最大100倍の望遠を実現したGalaxy S21 Ultra
スマホらしいアプローチを貫徹したのが、サムスン電子の「Galaxy S21 Ultra」です。背面カメラを4つ備え、組み合わせて動かすことで超広角からズームまで幅広くカバーします。さらに、デジタルズーム併用で最大100倍の望遠も可能。2021年は高倍率ズームを備えたスマホが多く登場しましたが、この機種が随一の高倍率スマホとなりました。
また、カメラ以外にも、Galaxy Sシリーズでは初めて手書き入力の「Sペン」に対応した点も特徴となっています。
サムスン電子では長らく、最上位モデルを「Sシリーズ」とペン対応の「Noteシリーズ」の2種類投入してきましたが、2021年はNoteシリーズの投入は見送られました。その代わり、このGalaxy S21 Ultraと、折りたたみ型のGalaxy Z Fold3がSペン対応となり、“ペンで書けるスマホ”という強みを受け継いでいます。
【その14】背面カメラを物理的に動かせるフリップカメラ搭載のZenfone 8 Flip
ASUSの「Zenfone 8 Flip」は、背面に備わった3眼カメラを動かして、そのままセルフィー(自分撮り)に使えるというギミックが楽しいスマホです。自分撮りでも高画質な写真を撮影可能。カメラが自動で動いてパノラマ撮影する機能も備えています。
単に自分撮りがきれいに撮れるという以上に、起動時のユーモラスな動きも魅力となっています。また、ディスプレイの“切り欠き”がなく、画面が引き立つという点もメリットです。
ただし、Zenfone 8 Flipにも弱点はあります。それは、重さです。6.67インチと画面やカメラを動かすモーター、大容量のバッテリーなどを詰め込んだ結果、重さは約230gと片手持ちではややつらい重さになっています。
なお、ASUSはZenfone 8 Flipと同時に発表された小型の5Gスマホ「Zenfone 8」も発表しています。こちらの日本向けモデルはZenFoneシリーズとしては初めて「おサイフケータイ」への対応を果たしている点がポイントです。
【その15】顕微鏡カメラ搭載のFind X3 Pro
カメラを特徴としながらも、変わったアプローチを取ったのが、OPPOのフラッグシップモデル「Find X3 Pro」です。このスマホはマクロならぬ「顕微鏡カメラ」を搭載。植物の葉脈や布地の繊維まで拡大して撮れるというトリッキーな機能を売りにしています。さらに、世界初の機能として、静止画・動画ともに10ビットカラーの広色域撮影にも対応しました。
OPPOの上位モデルが繰り出してくる“ちょっとおもしろい機能”は、スマホウォッチャーとしては毎年楽しみなものとなっています。2018年に発売されたFind Xでは電動式カメラが上部に飛び出すギミックを搭載し、“切り欠きなし”の画面を実現しました。2020年にスマホ市場で起きた“高倍率ズーム”競争の先駆けも、OPPOの「Reno 10× Zoom(リノ ジュウバイズーム)」でした。
2021年に出たFind X3 Proの顕微鏡カメラや10ビットカラー対応もOPPOらしい“ちょっとおもしろい機能”という試みではありますが、どちらも長く続くかは微妙なところです。というのも、顕微鏡カメラは確かにうまく撮れればマクロの世界を写せますが、被写体にしっかりとピントを合わせるのがかなり難しいです。撮影物から数mmの位置でスマホを上下させるのには苦労します。
また、10ビットカラーで夕焼けなどを色鮮やかに撮影できて、本体のディスプレイで鮮やかな色味をそのまま写せる、というのは画期的なことですが、やや時期尚早な機能と言えるかもしれません。色鮮やかに撮った夕焼けをSNSでシェアしても、大抵はSNS側や表示するスマホ側で8ビットに減色されてしまうからです。
これらを鑑みると、先駆的な機能をいち早く手にしたい人にとっては注目したいブランドと言えるでしょう。
【その16】日本に展開された、折りたためるGalaxy Z Fold 3とGalaxy Z Flip 3
ディスプレイを折りたためる「フォルダブルスマートフォン」は、日本ではサムスン電子とモトローラ、そしてマイクロソフトの3社が新製品を投入しました。サムスン電子は、開くとタブレットのように使える横折りタイプの「Galaxy Z Fold 3」と、ポケットにすっぽり入る縦折りタイプの「Galaxy Z Flip 3」の2製品。それぞれ使い勝手を意識した改良がなされており、折りたたみスマホの弱点だった防水に対応するほか、日本向けにはおサイフケータイもサポートしました。
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【その17】razr 5Gはモトローラ初の縦折りスマホ
モトローラは同社初となる縦折りスマホ「razr 5G」を日本に投入。Galaxyの取り扱いがないソフトバンクが国内独占販売で取り扱っています。
モトローラの折りたたみスマホとしては2018年に海外で発売した「razr」が初の製品で、razr 5Gは形状そのままで5Gに対応した2代目の製品となります。
Galaxy Z Flip3と比べると防水に非対応な点や画面解像度などで見劣りする部分もあります。ただし、モトローラの往年の人気機種をモチーフとしているだけあって、モノとしての魅力はたっぷり。折りたたみスマホを“かっこよさ”で選ぶならrazr 5Gは有力候補になるでしょう。
【その18】電子手帳のように使えるSurface Duo 2
2画面タイプのAndroidスマホでは、マイクロソフトが「Surface Duo 2」を発表し、話題を呼びました。電子手帳のように使えるスマホの第2弾で、新たに5Gもサポート。前モデル「Surface Duo」と比べると販売国も拡大し、日本では2022年1月11日に発売されました。
価格は約18万円からとスマホとしては高価ですが、2つのアプリを各画面で開いてマルチタスク操作ができるといった点では、Galaxy Z Fold3のような折りたたみスマホとも負けず劣らず。電子書籍を見開き表示したり、カレンダーの予定を参照したりといった操作では、文庫本のような形状のメリットを存分に発揮できそうです。
【その19】中国メーカー各社も折りたたみスマホを展開
折りたたみスマホは韓国のサムスン電子が先行していますが、2021年には中国メーカー各社も競って新製品を発表しました。ファーウェイは横折りタイプの「Mate X2」を中国市場向けに投入したほか、同社初の縦折りタイプの「HUAWEI P50 Pocket」を発表しています。
また、春にはシャオミが「Mi MIX FOLD」を、冬にはOPPOが「Find N」を発表し、フォルダブルスマホに進出しました。両社の折りたたみスマホは、中国市場を中心に展開していますが、2022年以降に日本で展開する可能性もありそうです。
【その20】ユニークな2画面スマホを展開していたLGは撤退
一方で、2画面スマホでユニークな機種を投入していたLGは、2020年末発売の「LG VELVET」を最後にスマホ市場からの撤退を発表しています。LG VELVETは、専用ディスプレイ付きケースをオプションとして用意し、単体では1画面スマホで、ケースを装着すると2画面で使える製品です。海外ではさらに風変わりなT字型に変形する2画面スマホ「LG Wing」も発売していました。
2022年のスマホ市場は2極化傾向がさらに強まる
2021年は低価格な5Gスマホが多数登場する一方で、高価格帯のスマホはより個性的なモデルが増えるなど、2極化が進んだ年となりました。この傾向は2022年にもさらに強まることになるでしょう。
ハイエンドスマホは、カメラや折りたたみなど、特徴的な機能をさらに磨き上げて、デジカメやテレビなどの家電製品と融合したような製品がでてくるかもしれません。また、ライカやバルミューダのように、著名なブランドが進出するケースも増えそうです。
もう1つの方向性として、AQUOS wishのようにライフスタイルにあわせて選ぶスマホも増えていくでしょう。高価格帯のスマホでは、ファッションブランドやスポーツチーム、人気アニメなどとのコラボモデルが増加するかもしれません。ちょうど3Gの「ガラケー」(フィーチャーフォン)の全盛期の頃がそうだったように、性能や機能を競うだけの勝負ではなくなっていくことになるでしょう。
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