iPhoneの評価は? 2021年のスマホ主要20機種を改めて振り返る【前編】
2021年もさまざまな新製品が登場したスマホ市場。本稿では、そのなかで象徴的な機種を挙げながら、スマホのトレンドを改めて振り返ります。
2021年のスマホは「2極化」がトレンド
スマホカテゴリでは、ここ数年来続いていた性能の強化が落ち着きを見せており、特にハイエンドモデルでは一度購入したら3〜4年は買い換えずに済むようになってきました。
また、日本では携帯キャリアが販売するスマホの値引き規制が実施され、一昔前のような「スマホと携帯回線のセットで5万円引き」といった割引を実施しづらい環境となりました。
そんななか、2021年のスマホ全体に見られるトレンドは「2極化」です。高価格帯のスマホは、カメラなど特定の機能を磨き上げて魅力を訴求したモデルが増えています。一方で、多くの人にとって必要十分な性能を備えた3万円台までの低価格モデルも増えており、さらには5Gに対応した機種も登場しました。
では、2021年はどんな機種が登場したのでしょうか。まずは人気モデルから見ていきましょう。
【その1】Xperia 1シリーズの集大成ともいえる高い完成度のXperia 1 III
ソニーの「Xperia 1 III」は、2019年から続けてきた「Xperia 1」シリーズのひとつの集大成といえるスマホです。すりガラスの一枚板のような形状のボディは、質感の高さを感じられます。また、エンタメに強いソニーらしく、ディスプレイ、カメラ、オーディオのそれぞれで、こだわりをもって作りこんでいる印象です。なお、小型モデルの「Xperia 5 III」も投入されています。
Xperia 1 IIIはまた、望遠カメラに「可変式望遠レンズ」という新しい機構を搭載した点も注目。ひとつのイメージセンサーで焦点距離を70mmと120mmで切り替え可能となっています。スマホカメラの進化の方向性にひとつのアイデアを示したものと言えるでしょう。
【その2】大画面ながら操作しやすいサイズのGalaxy S21 5G/S21+ 5G
世界シェア1位であるサムスン電子の「Galaxy S21 5G/S21+ 5G」は、高性能を手のひらにぎゅっと詰め込んだような旗艦モデルです。極細ベゼルなうえに発色が鮮やかなディスプレイと、動作の安定感はピカイチ。大画面ながら操作しやすく作られています。NTTドコモからは東京2020オリンピックの記念モデルも発売されました。
昨年度のGalaxy S20シリーズからと比較すると、性能面の強化は小幅なものにとどまっていますが、価格は10万円前後からと、手に入れやすい設定になっています。
高画質なディスプレイ、明るく写るカメラ、コンパクトなボディといった総合力を備えたAndroidスマホがほしいなら、ぜひ検討したい1台でしょう。
【その3】iPhoneは順当なアップデート
iPhoneシリーズは、「iPhone 13 mini」、「iPhone 13」、「iPhone 13 Pro」、「iPhone 13 Pro Max」の4モデルが発売されました。前年度の「iPhone 12」シリーズと同様に「小型5Gスマホ」、「普及版」、「上位版」、「最上位版」という4モデルの展開です。
iPhone 13 Pro/Pro Maxは、Androidスマホのフラッグシップモデルの多くが採用している120Hzの高速駆動ディスプレイを新たに搭載。また、4モデルともカメラを強化し、映画のようなカメラワークで簡単に撮れる「シネマティックモード」を搭載しました。
外観はiPhone 12シリーズから大きな変化はなく、順当なアップデートという印象です。
そのほか、小幅な機能強化と基本性能の増強にとどまり、コロナ禍で重要性が増した指紋認証のTouch IDが復活することもありませんでした。2022年の新モデルでは、より大きな変化が見られるかもしれません。
なお、アップル製品では、「iPad mini」(第6世代)が大きなモデルチェンジを果たしました。高速なチップセットやUSB-C端子などを搭載したほか、ホームボタンを廃止して上位モデルに近いデザインを採用。取り回しの良いサイズ感と高い機能性を兼ね備え、デジタル文房具のようなアイテムに生まれ変わりました。
【2021年発売のiPhone】
iPhone 13 Pro Max
iPhone 13 Pro
iPhone 13
iPhone 13 mini
“尖った”モデルも多数登場
ここ数年来、スマホの性能は飛躍的に向上しており、今では低価格なスマホを選んでもほとんどの用途はまったく問題なくこなせるようになってきています。
こうした状況下で、2021年のハイエンドモデルはメーカーそれぞれの視点から機能を磨き上げた製品が増えており、全般的に高価格化する傾向にあります。特に携帯キャリアが扱うスマホでは、10万円台後半〜20万円という値札もしばしば目にするようになりました。そんな尖ったモデルを見ていきましょう。
【その4】年末に話題をさらったBALMUDA Phone
2021年末に話題をさらったのはバルミューダの「BALMUDA Phone」。スマホ市場に初参入ながらも、大手キャリアのソフトバンクがキャリア独占販売を発表し、全国で販売されています。懐かしさも感じる丸っこい形状で、5G対応のAndroidスマホとしては世界最軽量クラスの軽さも備えています。
バルミューダは「基本アプリ」の作り込みこそがBALMUDA Phoneの強みとしており、電子手帳のような「スケジューラー」など、専用アプリを複数搭載。一方で、カメラではバルミューダ独自の「料理モード」を搭載し、料理を見たまま写すのではなく、思い出の中で“美味しさ”を追体験できる色味で撮れる点を特徴としています。
また、BALMUDA Phoneは「ブランド家電のバルミューダ」がスマホに参入するというニュースとともに、その価格設定でも話題となりました。ソフトバンク版では14.3万円と、かなり強気な価格設定となっています。なお、製造は国内メーカーの京セラが担当。
ですが、スマホとしての基本性能は競合他社の最上位クラスからは一段落ちるものとなっています。ディスプレイや音響設計、電池持ちなど、古参スマホメーカーの同価格帯モデルと比べて、見劣りする面があるのも確かです。
バルミューダでは2022年に、スマホ以外のスマートデバイス(おそらくタブレット端末でしょう)の発表も予定しており、基本アプリは発売後も追加すると予告しています。今後のアップデートや新モデル投入でのブラッシュアップを期待したいところです。
【その5】驚くほど軽いAQUOS zero6
ハイエンドではありませんが、シャープが2021年秋に発売した「AQUOS zero6」もとにかく軽さにこだわったモデルです。6.4インチという大画面ながら、重さは146gと二回り小さい5インチスマホ並み。手に取った瞬間に「え?」と驚いてしまうような軽量感に仕上がっています。
AQUOS zero6の凄みは、スマホとしての基本性能をほとんど落とさず、軽量化を実現したことです。準ハイエンド級の性能で5Gはもちろん対応。6.4インチと大きな画面で、色鮮やかかつなめらかに動作する有機ELディスプレイも搭載しています。
カメラへのこだわりが鮮烈な個性となったフラッグシップモデル「AQUOS R6」に対して、AQUOS zero 6は軽さへのこだわりで、フラッグシップに負けないくらいの“キャラ立ち”しています。
【その6】AI処理の性能が高いPixel 6
グーグルの「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」は、Pixelシリーズ初の独自開発チップ「Tensor」を備えたスマホ。AI処理に強く、録音を自動で文字起こししたり、話した言葉を数秒で翻訳したりできるなど、グーグルらしい独特の使い勝手が特徴です。
カメラはAI処理能力を生かした高解像度ズームや、動きのある瞬間を捉える「モーションモード」といった機能を搭載。デザインでは多眼カメラの出っ張りを「カメラバー」として強調するなど、これまでのPixelシリーズにはない発想も取り入れています。
OSはAndroid 12を搭載し、操作パネルなどのカラーパターンを“自分色”にカスタマイズできる仕組みも導入されました。
前世代の「Pixel 5」ではCPUやカメラの性能が控えめでしたが、今回はまさに「グーグルの最上位スマホ」にふさわしハイスペックとなっています。その反面、やや大きく、重くなってしまっている点がネックと言えます。
【その7】頑丈なアウトドアギアと言い切れるTORQUE 5G
京セラはタフネススマホ「TORQUE」の5G版を発売。無骨なデザインのアウトドアギアで、落としても水に入れても雪山でも壊れないという頑丈さが売りです。アウトドアブランドのコールマンとのコラボモデルも発売されました。
タフネス設計は米軍の物資調達規格(MIL規格)に準拠した21項目の耐久テストをクリア。さらに高さ2mからの落下試験や、60分海水に浸ける試験など独自基準の検証も行っています。
まるでキャンプグッズのようなカラフルなカラーリングなど、デザイン面でもアウトドア好きの心をくすぐる仕様ですが、ただかっこいいデザインなだけではありません。今時のスマホとしては珍しく、電池パックを脱着できる仕様となっていて、予備を持ち歩いて素早く交換することが可能です。水中で使えるフローティングストラップや、カラビナ装着型のハードホルダーなど周辺機器も揃っていて、アウトドアで存分に活用できるスマホとなっています。
【その8】根強いファンの声に応えて復活した「G’zOne TYPE-XX」
スマホではありませんが、4G LTEケータイ「G’zOne TYPE-XX」も年末に発売されました。すでに携帯メーカーとしては撤退したカシオがデザインを手がけた、京セラ製のタフネスケータイです。auの3G停波を目前に、根強いファンの声に応える形で伝説のブランドが復活しました。
デザインは往年のG’zOne TYPE-Xを踏襲し、モータースポーツをモチーフとして取り入れています。円形になったサブディスプレイや、押しやすくなったテンキーなどは、10年の技術の進化が反映されている部分です。
かつてのau ケータイと異なり「EZweb」には非対応ですが、スマホ向けのWebサイトを閲覧可能。また、アウトドア系のアプリ「OUTDOOR GEAR」を搭載しています。
さらに、友情出演(?)として、往年のカシオケータイの人気キャラ「カシペン(アデリーペンギン)」もちらっと登場します。
【その9】ゲームに特化したROG Phone 5
ASUSはSIMフリーゲーミングスマホ「ROG Phone 5」を発売。ゲームのグラフィック処理に特化したスマホで、高い性能を持つだけでなく冷却ファンを装着したほか、充電しながら横持ちで遊べるといった特徴を備えています。さらにチップセットメーカーであるクアルコムのファン向けモデル「Smartphone for Snapdragon Insiders」も登場しました。
ROG Phone 5の性能の高さは、「ゲームを楽しむ」というただ一点のために研ぎ澄まされています。高画質な3D処理をともなうアクションゲームやシューティングゲーム、反応速度の速さが求められる音楽ゲームには最適で、隙がありません。ちなみに、端末背面のROGロゴはイルミネーションが仕込まれていて、七色に光ります。
【その10】低価格モデルも進む5G対応、注目はAQUOS wish
2021年は低価格なAndroidスマホも5G化が進みました。5Gスマホの価格競争の火ぶたを切ったのはソフトバンクで、シャオミ製の「Redmi Note 9T」を税込2万1600円という価格で独占販売しました。
その後、低価格な5Gスマホは2021年後半にはSIMフリー市場でも次々発表。薄さが魅力のシャオミ「Mi 11 Lite 5G」、1億800万画素カメラ搭載の「motorola edge20 fusion」、なめらかディスプレイの「OPPO A55s 5G」、軽くて電池長持ちな「AQUOS sense6」などが登場しています。
最近では高性能なスマホに特化していたソニーも、4G LTE対応の入門モデル「Xperia Ace II」を投入。NTTドコモ独占で、2万2000円という低価格で販売されました。
そんな数ある低価格スマホの中で、トレンドを占う意味で注目は「AQUOS wish」です。このスマホは2万円台前半と低価格ながら、基本的なスペックを抑えたオーソドックスな製品。一方で、筐体には再生プラスチックを35%使用しており、「環境への配慮」というアピールポイントも有しています。
【2021年発売の主な低価格モデル】
シャープ AQUOS sense6/AQUOS sense5G/AQUOS wish
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シャオミ Mi 11 Lite 5G/Redmi Note 10 JE/Redmi Note 9T
OPPO OPPO Reno5 A/OPPO A54 5G/OPPO A55s 5G
グーグル Pixel 5a(5G)
ソニー Xperia 10 III/Xperia 10 III Lite/Xperia Ace II
サムスン電子 Galaxy A54 5G/Galaxy A32 5G/Galaxy A22 5G
モトローラ moto g50 5G/moto g100
以上、前編はここまでです。後編では、2021年に注目が集まったカメラ機能に特化したモデルを振り返るほか、今後増えそうな折りたたみスマホを見ていきます。
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