XFN-ASIAによると、米信用格付け大手S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)の金融機関の格付け担当責任者、ライアン・ツァン氏は、不良債権問題や金利上昇、人民元に対する切り上げ圧力の増大といった厳しい状況に直面しているものの、中国の銀行の格付けを当面、大幅に引き下げることはないとの見通しを明らかにした。

  同氏は、「中国の銀行がさまざまなリスクにさらされたとしても、大きな格下げの圧力にはならないだろう。ただし、経済の状況が大幅に変化した場合、格付けを引き下げる圧力は高まる」と述べた。同国国営4大商業銀行の一つである中国銀行などの大手銀行は、S&Pによって、現在、「BBB+」で、見通しも「安定的」と格付けされている。

  S&Pの試算では、人民元相場が5%、借り入れ金利が0.54%ポイント、それぞれ上昇すると、企業収益は9.0%低下し、銀行の不良債権は約2.0%増えるという。銀行の債権全体に占める不良債権の比率が1.0−2.0%ポイント上昇すれば、3760億元(約5兆4660億円)のコスト増大につながり、貸倒引当金の引当率が約50%になると、1880億元(約2兆7330億円)のコスト負担になるとしている。

  ただ、ツァン氏は、金利や人民元レートが急激に変化する可能性は小さく、ゆっくりとしたペースになると見ている。【了】