クルマ独特のニオイが苦手で、乗った途端に気持ち悪くなってしまう子が少なくないようです。車内でタバコを吸ったりニオイの強いものを食べたりしていないにも関わらず、妙に苦手意識を持たれる、あのニオイ。何なのでしょうか。

5歳の男の子が訴える「クルマが“にがい”」

 クルマ独特の何とも表現しがたい車内のニオイ、これがどうにも苦手な子が少なくないようです。ある5歳の男の子は、それを「(クルマが)にがい」と表現し、しきりに窓を開けたがります。


クルマ独特のニオイが苦手な子どもがいる。写真はイメージ(djedzura/123RF)。

 2015(平成27)年、「ファブリーズ」を製造販売するP&Gジャパンが約300人の親子を対象に行ったアンケートでは、子どもの91%が、クルマに乗った途端に気分が悪くなる経験があると回答したそうです。

 この「途端酔い」、揺れによって生じる本来の意味でのクルマ酔いではないものの、「車に乗って酔った、ニオイが苦手だったという記憶から、車に乗りたくないと感じ、車に乗った途端に気持ち悪くなることがあります」という専門家の見解をP&Gジャパンは紹介しています。つまり、メンタルの問題ではあるものの、この気持ち悪さがきっかけになって、クルマ酔いを引き起こす場合もあるとのこと。

 アンケートでは、次のような子どもたちの声も紹介されています。

・(車酔いの)原因は大体ニオイだから。わかってる(小3女子 川崎市)。

・おうちの車がすっごい、ニオイ付きなので(酔う)。だからずっとこういうふうに(鼻をつまんで)頑張って、マスクとかマフラーがあればこうやって(顔を覆って)。くっさいんですよ。揺れは全然大丈夫なんですよ。揺れはすっごい楽しいんですよ(少3女子 目黒区)。

・車は1つずつニオイが違う。家のが一番イヤ。でも酔わない車はない(小3女子 杉並区)。

 こうした独特のニオイ、乗用車に限らずバスなどで感じる子もいるようです。また、レンタカーなどに乗ると、乗り慣れたクルマと「ニオイが違う」となり、気持ち悪くなるという子も。なお聞き取りした限りでは、車内でタバコを吸う、ニオイの強いものを食べることがある、といった理由を挙げた人はいませんでした。

 独特のニオイの正体、何なのでしょうか。

ニオイの元は何なのか

 カー用品店「オートバックス」を展開するオートバックスセブンによると、ニオイの元は複合的。同社は次のように話します。

「エンジンやボンネット内のニオイが車内に入り、それを敏感に感じる子もいます。また、エアコンフィルターを長いあいだ替えていなければ、カビや汚れが溜まり、エアコンを通してじめっとしたニオイが拡がります。エアコンフィルターの交換は、ニオイを抑制する必須対策のひとつでしょう」

 P&Gのアンケートによると、具体的に気になるニオイとして挙げた人が最も多かったのは、「エアコンをつけたときのニオイ」でした。それに続くのが「もともとの車内のニオイと芳香剤などが混ざり合ったニオイ」「芳香剤や香水のニオイ」で、P&Gジャパンは「ニオイを香りでごまかすと、よりイヤなニオイになるようです」としています。

「消臭剤は、ニオイがあるがゆえに苦手という人もいますので、無香タイプで、車内に回り込みやすいようにエアコンの吹き出し口に取り付けるタイプが人気です」(オートバックスセブン)

 その一方、2020年以降でかなり売れているというのが、「ニオイが消えるくらい強めのアロマが、水蒸気で車内に循環するアロマディフューザー」だそう。もともと家庭で使われることが多かったものの、車内用がラインアップされているといいます。

「コロナをきっかけに車内の楽しみ方が変わっており、テレワークの拠点にしたり、音響に凝ったりする方が増えています。その流れのなかで、部屋と同じような空間を車内に求めるニーズがあります」(オートバックスセブン)