第一生命とDeNA 提携の舞台裏 生保×デジタル 何が生まれる?|テレ東プラス
野球の試合を観戦するDeNAの岡村社長と第一生命HDの稲垣社長
今年6月、第一生命ホールディングスはデジタル領域に強みを持つDeNAと業務提携しました。これまで接点のなかった若い女性層を取り込むのが狙いですが、異業種の2社が組むことで一体何が生み出されるのでしょうか。舞台裏を取材しました。
10月8日、横浜スタジアム。試合中の観客席に、DeNAの岡村信悟社長と第一生命ホールディングスの稲垣精二社長の姿がありました。観戦の途中、岡村社長が自らのスマホで稲垣社長に見せたのは、DeNAがKDDIと共同で提供する野球観戦アプリ。様々なアングルからプレーを見ることができ、観客席からのリアルな観戦とは違った形で楽しめます。DeNAはコロナ禍による観客制限の動向が読めない中、デジタルによる収益確保の道を模索しています。
「われわれはどうしてもリアルな『人』のつながりで、デジタルが弱い。DeNAとタイアップすることで、魅力的で素晴らしい体験をお客様に提供できると考えている」(第一生命HDの稲垣社長)
1902年創業の第一生命がいま、デジタルの活用に本腰を入れる背景には、強い危機感があります。
「一つ一つの契約の中身を見ると、第一生命の既存のお客様からの保険契約が半分を超えている。新たな"出会い"は半分以下。将来に向けて、どうやって新たな出会いを作っていくのかが課題」(稲垣社長)
これまで顧客との主な接点は、万一のときに保険金を支払うような"非日常"の時のみ。中でも20代〜30代の女性の顧客を取り込むことに苦戦していました。若い世代との接点をどう作るかが課題となっています。
「対面では人間関係の中で信頼され、『あなたに相談する』という関係ができたが、それをデジタル空間で作るというのは、第一生命だけではなかなか経験がない。いろいろな分野で成功しているDeNAのノウハウや世界観と、一緒にやる」(稲垣社長)
一方のDeNAも、対面営業でリアルの客を熟知した第一生命との提携には大きな可能性を感じています。
「やはり学ぶこと、得るものが大きい。お客様を深く理解できてこそ、ヘルスケアの事業はもっと充実していく。もしかしたらそこで得るデータをもとに、新しい保険商品の開発ができるかもしれない」(DeNAの南場智子会長)。
9月下旬。DeNA本社に、第一生命とDeNAのプロジェクトチームが集まっていました。両社の提携後初となる、ダイエット支援アプリ「カラダモ」の発表に向けた打ち合わせです。
このアプリは1日の食事のカロリーを青いブロックで表示。運動をしてカロリーが消費されれば、青いブロックが消えていく仕組みです。DeNA側の、ゲーム部門出身の担当者は「"消していく楽しさ"はダイエットに近い」と、アピールポイントを強調します。
一方、第一生命側の担当者も「20〜30代の女性と関係構築しても、一時的なもので終わっては意味がない」「カラダモで第一生命のファンになった客を、デジタルで手続きが完結する保険に案内するとか...」と、議論に力が入ります。
11年前、国内の大手生保で初めて上場した第一生命。顧客だけでなく株主に対しても結果を残すことが求められる中、デジタルで未来の顧客層を開拓できるのか。生き残りをかけた取り組みは始まったばかりです。
「"手のひら"でいろいろなものが完結できる時代なので、生命保険も"手のひら"で完結する商品なのかもしれない。顧客の『困りごと』を我々がどうやって解決できるか。その選択肢の一つに保険がありうるよねと。そういう世界観でお客様とは接していきたい」(稲垣社長)
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