「なぜ次々と乗り換えられるのか」13年で7人の女性に寄生した31歳ヒモ男の処世術
■「合わないなら次いきゃいいじゃん!」
男だけど奢らない。その代わりに家事などで相手に尽くす。という奇妙な恋愛をしているからか、僕は「通常の恋愛観にとらわれない」なんて周りからいたずらにもてはやされ、これまでいろんな恋愛相談をもちかけられ「かぎりなく遠くにいる第三者」からの意見を求められてきました。
関係性を構築するなかで相手を見ることに重きをおくことと、いろんな恋愛相談に対し「合わないなら次、次」とアドバイスすることは二枚舌のようにも思えます。
相手を見ながら関係性を構築するのが大前提とはいえ、我慢によって自分を消耗させてしまうくらいならいっそ新しい人を見つけた方がいい。どうせなら一生相性のいい人たちだけに囲まれて暮らしたい、というのが僕の持論です。
これまで不意に口をついた僕の出まかせのなかでも、相手に刺さることの多い雲をつかむような話をさせてください。
たとえば、男女問わず人生で1回でもご飯を食べに行くような関係になる人って何人くらいいるでしょうか。
僕は小学校から大学、社会人になってから出会った人に至るまでいろんな友達がいることが自慢です。趣味を聞かれておしゃべりと答えるほど、沖縄から地元に帰るときは友達と会えることが一番の楽しみであったりもします。
また、僕はこれまでヒモになるため飼い主になってくれるかどうかを確認すべく、年齢問わずいろんな人をいろんなところに誘う必要もありました。
コメダ珈琲店で相手からの「カワイイ」を引きだしたこともあれば、ガード下の居酒屋、終電ギリギリのタイミングで「カワイイ」を頂戴したこともあります。
その数に比例して連絡が取れなくなった方も多いことはさておき、だれかとご飯を食べに行く(奢ってもらう)機会は同世代と比べると比較的多い方だと思います。
そんな僕でも、一生で食卓を囲む人って1000人もいかないんじゃないでしょうか。これこそが「合わないなら次いきゃいいじゃん!」と考える根拠です。
■無理してまでつづけていくべき関係性なんてない
現在、日本には約1億2000万人が生活しています。
つまり、仮に1000人に会ったとしても、1億1999万9000人に会うことはないまま僕の一生は終わっていくわけです(こうしている間にも日本中で人が死んで生まれているわけなので、会えない人はもっと多いはずです)。
日本にかぎった話でも約1億1999万9000人倍「自分が一生会わない人」がいて、そのなかに相性がよかったりタイプの人がいたりすることになります。
これはすごい確率ではないでしょうか。
この数を見るに、僕はこれまで自分が会った人のなかだけで考え、疲弊したり無理をしたりしてまでつづけていく関係性など存在しないのではないか? と思ってしまうのです。
ヒモだって人の子です。「ヒモなんてしてて恥ずかしくないの?」といわれたり、「あいつみんなに声かけてるよ」なんて陰口叩かれたりしたらそりゃ悲しいです。
それでも、日本だけでもこんなに人がいて、その分だけコミュニティが存在するなら、「別にどう思ってもらってもかまわない」と開きなおることもできるのです。
というよりも、嫌われた大多数の人間に対して嫌な気持ちになったり怒ったりすることよりも、友達や彼女ふくめこんな屁理屈をこねている甲斐性なしにまだ付き合ってくれている人を大事にすることの方がよっぽど有意義であると思っています。
もとより人生でかかわる全員に好かれることなんて土台無理な話です。ヒモの僕にとっては、一人の女性が「カワイイ」と思ってくれるなら、そのことの方が何倍も重要なのです。
■渋谷スクランブル交差点ライブカメラ映像を見ると…
あふれんばかりに大勢の人がいることをいますぐ確認するのにうってつけなのは、YouTubeの渋谷スクランブル交差点ライブカメラ映像です。
サッカーの祭典ワールドカップやハロウィンなどのイベントごとがあると、渋谷にたくさんの人がごったがえす慣習がいつからかできあがりました。
人は好きだが人混みが嫌いな僕はお祭りさわぎ状態の渋谷に行ったことはないものの、興味はあるので画面から渋谷を上空から観る卑屈な楽しみを持っています。
このライブカメラ映像が教えてくれることは非常に多いです。まず、信号が変わるたびたえ間なく流れゆく人混み群が毎回ちがう人で構成されていることに驚かされます。
さらに詳細に観測をつづけると、
「すべての人がぶつからないように歩いている」「知らない人に声はかけない」なんて人間社会のあたりまえのルールを再発見することもできます。
そのうえで、画面に映っては消えていく人たちがそれぞれにちがう不安や喜びを持っている、今日がどんな日だったかもだれひとりとして同じ人はいない……などと妄想をふくらませていくと、とまりません。
映る人全員が別々のコミュニティに属していたり、いろんな関係を築いていたりすることを考えるに、やっぱり目のまえの人との関係性だけでどうしようもないほどに悩んで疲弊するなんてもったいないことのように思えてくるのです。
■合わない人からはいつでも逃げていい
きわめつけはパソコンを閉じ、外に出ると……、
「自分も、自分を苦しめるあの人も、あの大群のなかのひとつにすぎない」
と自分のかかえる悩みや諸問題の些末さが浮き彫りになることもあります。
自分の想像の何倍も人の数やコミュニティが多いと知ることで、合わないと思えばいつだって逃げていいことや、意地悪な人に付き合う時間や心がもったいないということを身をもって理解することができますし、いろんな出会いを求めて恥をかいたっていいや。と勇気づけてくれるきっかけにもなるでしょう。
もちろん物理的にも時間的にもすべての人に会って吟味することは不可能ですし、どんなに探したところで、まるでデコとボコが合わさるような「相性100パーセントの人」なんていくら探したっていません。
逆にいえば、「袖振り合うも多生の縁」といわれているとおり、1億人以上のなかから出会ったことを運命ととらえるのであれば、それが「運命の人」です。
小学生のころ僕は友達とあるテレビゲームについて、「どちらのキャラクターが好きか」で大げんかをしたことがあります。
けんかの内容自体は小学生らしい他愛もないことなのですが……。
問題なのは、クラスでそのゲームタイトルを遊んでいるのが僕とその友達の二人だけであったことです。
■相性100パーセントでわかりあえる人などいない
クラスの大半に受け入れられないマイナーなゲーム、ハマっているのは僕と彼の二人だけ……ここだけ切りとればものすごく相性がいいように思えますが、最後の最後で三つ編みリボンが似合う女の子の幼なじみがいいのか、一見ツンとしているものの、最後にやさしさを見せる魔法使いの卵がいいのかで大もめしたわけです。
同じ学校の同じ学年、同じクラスで同じゲームを趣味とするまで気の合う二人だからこそ、ちょっとのずれがかえって大きな亀裂をうんでしまうことだってあるのではないでしょうか。
相性がいいことはあっても、お互いの持つ理想像が寸分たりともずれないなんてことはありません。
「じゃあ、やっぱり解決にならないんじゃないのか?」「いまの人間関係で妥協しろということか」ときかれれば、そういうことでもありません。
「めっちゃ人はいるけど、相性100パーセントでわかりあえる人などいない」と理解することが大事だと思うのです。
■ヒモの思う「相性」の正体
世間では、相性のよさを測るひとつの基準として、
「相手の嫌なところもふくめてまるっと受け入れることができるかどうか」
が、しばしば持ち出されます。
しかし、「妥協」だって「受け入れる」だって、「折り合い」だって言葉の選び方ひとつですし、我慢の程度も人それぞれです。
目のまえの人に固執するあまり「受け入れられる!」と虚勢を張る人も少なくないでしょう。そう考えると「相手の嫌なところもすべてまるっと受け入れることができるかどうか」の基準は、少し危うさをはらんでいるともいえそうです。
そこで、僕が考える相性のよさを測るひとつの基準を紹介したいと思います。
それは「関係性を『ゼロベース』で考えてくれる人かどうか」です。
これはヒモだからこそ強調できることでもあります。
たとえばいまの彼女でいえば、辛いものが苦手なので僕の好みに反し麻婆豆腐もカレーも甘口に作らなくてはなりません。また、会社に所属した経験のない僕に対し、ビジネス用語を駆使するスタンスがハナにつくことがあります。
「バッファってなんだ! 僕にもわかる言葉を使ってくれ!」なんていったりもしますが、いっこうにやめる気配はありません。
もちろんむこうにだって僕に不満はたくさんあるでしょうし、ないとはいわせません。
しかし、ここで強調したいことは、相手に合わせるヒモだって100パーセント相手に合わせることは不可能であること。
そのうえでなぜいっしょに生活できているかというと、一般的なお付き合い像を取っぱらったうえで、彼女が僕とのお付き合いを「私とあなた」を出発点としゼロから考えてくれたからです。
普通に生きてきて「ヒモを飼いたいなぁ」なんて思わないでしょう……。
のろけるつもりは毛ほどもありませんが、二人にとっての居心地のよい関係をおたがいに考えることができたからこそ、共同生活がうまくいっているんだと思います(いまのところ)。
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ふみくん(ふみくん)
プロヒモ
1989年生まれ。本業プロヒモ、副業ライター。早稲田大学人間科学部卒。在学中からこれまで一度も会社勤めをせず、10年以上10人の女性に家事を施しヒモとして生活を送ってきた。現在は沖縄の家で南国暮らしを満喫中。日刊SPA! にてヒモ生活が取りあげられ、注目をあびる。
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(プロヒモ ふみくん)