「軽トラキャンプ」なぜ人気? 車中泊から荷台泊にニーズ移る? コロナ禍で需要増の訳

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なぜ軽トラベースのアウトドアスタイルに着目?

 日本車は品質の良さ、耐久性の高さ、そして部品供給の速さという特徴から、海外でも人気があるのは周知の通りです。

 日本車のなかでも、昨今北米で人気を博しているのが軽トラックです。そして、近年は軽トラックをベースにさまざまな手法でアウトドアを楽しむスタイルが流行っているといいますが、どのようなものなのでしょうか。

軽トラ荷台のテントで荷台泊? 新たなアウトドアスタイルとはどんなものなのか?(提供:Bug-truck)

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 何でもビッグサイズなアメリカにおいては、軽トラックのサイズは非常に機動力が高く、しかも小さいのに350kgもの積載能力を持っていることが魅力的に映るといいます。

 広大な農場が多いアメリカやカナダでも、軽トラックはアグリカルチャーカーとして使われることが多いようです。

 農場のなかだけを移動するための手段として、最適というわけです。また、独特のドライブフィールも北米の人たちを虜にしています。

 もちろん日本でも、軽トラックは農業の花形です。“農村のポルシェ”“農村のベンツ”などといわれるように、地方での生活になくてはならないのが軽トラックなのです。

 いかにも実用然としているこのクルマが、今レジャーシーンで注目の的となっているのが、キャンピングカー&カスタム市場です。

 カスタムの世界では、数年前にリフトアップした「アゲトラ」やローダウンした「サゲトラ」がブームとなりました。

 農業に従事する若年層が、日常を楽しくしたいということで火が付き、その後都市部にも市場が拡大していったといわれています。

 昨今ムーヴメントになっているのは、軽トラックベースのキャピングカーです。荷台にオリジナルの幌を装着したり、パネルバンの内部を改造したキャンピングカーが人気を博しているのです。

 このカテゴリーの火付け役といわれているのは、「バグトラック」というブランドですが、その製造・販売をおこなっているカーファクトリーターボーの山本剛史社長にその発端を聞いてみました。

「地方はやはり軽トラックが農業車として身近なんですが、僕がカヤックやサーフィンをするときにスタイリッシュに乗りたかったので自分用に造ったのです。

 そもそも売るつもりはなかったんですが、いろいろな方から“自分にも造って”といわれたものですからつくりました」

 バグトラック・多機能テントは至ってシンプルなもので、軽トラの荷台に枠を載せて、その上に幌をかぶせるだけだといいます。

 とはいえ純正の実用幌とは違い、形状はお洒落だし、サイドには開閉可能な三角の窓も付いています。

 窓はメッシュにすることもできて、幌というよりは荷台に載せるテントと考えた方がいいでしょう。

 現在では、こうした幌型テントを製造しているショップは全国に多くあります。芸能人が媒体で露出したこともあって、アウトドア派に広がっていきました。

「荷台なので、汚れたアウトドアドア用品を載せてもすぐに洗えますし、ペットを乗せても気になりません。タープやテントと違って、設営も撤収もいらないのが魅力みたいです」(山本氏)

 軽トラックの荷台は一見すると狭そうですが、実は荷台のフロア長は2m越えです。

 ダイハツ「ハイゼットジャンボ」のようなエクストラキャブタイプでも、1900mm後半のフロア長を確保しています。一人であれば、手脚を伸ばしてゆったり寝ることができるというわけです。

 実際に使っているユーザーを見てみると、なかに折り畳み式のコットやテーブルを置いて、簡易タイプのキャンパーにしている人が多いようです。

 さらに最近になって、“ニュータイプ”も続々と登場しています。

 それが、軽パネルバントラックをベースにしたキャンパーです。これを仕掛けたのも、バグトラック。

「いつも犬を連れていくのですが、幌だと落ち着かないなんです。周りの音に反応してしまうようです。

 それでまた、パネルバンを自分用に改造しました。今度は内装材やベッド、テーブルの高さなどに徹底的にこだわっています。

 出来上がったところ、また周りの反響が良くて、結局販売することになったのです」(山本氏)

まるで「軽トラ・トランスフォーマー!」 自由自在なキャンプ仕様が続々現る?

 パネルバンをベースにしたキャンパーは、ほかにも登場しています。

 三島ダイハツが販売する「クォッカ」です。三島ダイハツは、従来は他社が製造してキャンピングカーを販売していましたが、2020年からオリジナルのクォッカを販売。

 クォッカはハイゼット・パネルバンベースで、後部の箱に断熱アクリル窓を付けて、内部には地元産の富士ひのきをふんだんに奢っています。

 軽のキャブコンと比べると室内空間は狭くなりますが、元々ある車体の一部を改造するため、新しいシェルを載せるキャブコンより安価に済むという利点があります。

 またキャブコンよりも全長が短く、取り回しや操縦性という点で多少勝っています。

静岡県産の「富士ひのき」を使用した三島ダイハツオリジナル軽キャンパー「Quokka」(提供:三島ダイハツ)

 軽トラックの荷台に新たな箱を載せて、さらにその上にルーフテントを装着したモデルも登場しました。

 それが、コイズミの「かるキャン・ナゲット」です。ベース車両は軽トラックですが、広島のカスタムブランド・ドリブンが販売している「ベビトラK-150コンプリートカーキット」や「DプロイBOX」を装着。さらにジェームス・バロウドのルーフテントを載せた仕様になっています。

 Dプロイボックスには、さまざまなモノが収納できるほか、シンクが付いているので水仕事も可能です。

 海外で人気のオーバーランド仕様になっており、軍用トラックのようなラギッド感も魅力のひとつです。

 こうした軽トラックキャンパーのユーザーに共通しているのが、ソロユースということです。

「やはり50代くらいで、1人で使うからと見に来る人が多いですね」(三島ダイハツ・内村靖社長)

 折からのキャンプブームによって拡大傾向にあるキャンピングカー市場ですが、新型コロナ禍の余暇の過ごし方の変化によって、ソロキャンプをする人がさらに増えているという背景があります。

「その時流にのったというといい方が悪いですが、これまでになかった層のユーザーが多いですね。使い方も1人用という方がほとんどです」(前出・山本氏)

※ ※ ※

 軽トラックキャンパーは、幅広い年齢層に受けているのも特徴のひとつです。

 モデルによっては、フェイスをカスタムしているため、若年層に人気かと思いきや、意外にも中高年の注目度も低くありません。

 やはり値段がほかのキャンピングカーよりも手頃で、手持ちの軽トラ(中古車)でも架装できるという所も評価されているようです。

 ソーシャルディスタンスもさることながら、人とのコミュニケーションを敢えて絶つことを楽しむソロキャンプは、山の奥深くに入り込む込むことも多いレジャーです。

 悪路走破性という点ではスズキ「ジムニー」に勝るとも劣らぬ軽トラは、まさにソロキャンプにジャストなクルマ。

 設営も撤収もいらないとなれば、現地で時間をより楽しむことができます。新たな男の隠れ家のスタイルとして、これからこのジャンルはますます拡大していきそうです。