道路の案内標識には「東京 〇km」と書かれることはありますが、「神奈川 〇km」「埼玉 〇km」という表示はなぜか見かけません。実は案内標識の地名は、あらかじめ決められており、その序列も関係しています。

案内標識の地名に「ランク」あり?

 一般道の案内標識で「東京 〇km」と書かれているケースは、そこから200km以上離れた場所でも見られます。しかし、その場所よりも近いはずの「神奈川 〇km」あるいは「埼玉 〇km」といった表示は、なぜか見かけません。

 実は、案内標識の地名はあらかじめ決められており、そこに「神奈川」「埼玉」の文字はないのです。その一方で「千葉」は存在します。どういうことなのでしょうか。


案内標識の例(画像:写真AC)。

 国土交通省道路局によると、案内標識で表示される地名は、都道府県ごとに広域に通用する順で「基準地」「重要地」「主要地」「一般地」という4段階でランク分けされて、あらかじめ決められています。この4つの分類は、それぞれ次のように定義されます。

・基準地:重要地のなかでも特に主要な都市。おおむね1県1都市
・重要地:県庁所在地、政令指定市、地方生活圏の中心都市など
・主要地:二次生活圏の中心都市
・一般地:重要地、主要地以外の市町村、沿道の著名な地点など

 たとえば東京都であれば、基準地は「東京」(具体的には中央区の日本橋)1つです。23区内の重要地は「日本橋」「池袋」「渋谷」など9か所、主要地はよりローカルな表示になり、「大森」「板橋」「青戸」「砂町」など60か所以上あります。

 そして、それぞれの案内標識でどのような地名を表示するかという基準も、「主要幹線道路」「幹線道路」「補助幹線道路」という一般道路の機能による3分類と、前出した地名のランクとで決められています。

実際の案内標識の地名はどう選ばれているの?

 広域に移動する人が多く利用する主要幹線道路では、表示地名も広域的なものが重視され、最もローカルな一般地は表示されません。たとえば主要幹線道路である国道6号の「方向及び距離」標識で、上から「東京 67km」「柏 37km」「取手 28km」と並んでいるものは、基準地、重要地、主要地の順で、それぞれ現位置から最も近い場所が書かれています。

 一方、より短距離を移動する人が多くなる幹線道路や補助幹線道路では、場所に応じて主要地や一般地を重視する標識もあるとのことです。

 では冒頭の「神奈川 〇km」「埼玉 〇km」を見かけないのはなぜでしょうか。ひとつには、神奈川県と埼玉県に、基準地が設定されていないことが挙げられます。


案内標識の地名表示例(画像:国土交通省)。

 基準地は「青森」や「仙台」など、おおむね都道府県でひとつ(北海道などは複数)設定されていますが、「神奈川 〇km」「埼玉 〇km」と表示するよりも、より多くの人が目指すであろう「東京」を示した方がわかりやすいという理由から、2県に加え千葉県も、基準地の設定がありません。

 また、神奈川県と埼玉県には「神奈川」「埼玉」という自治体名もないためか、この2つは重要地にも主要地にもなっていません。一方で「横浜」やひらがなの「さいたま」は重要地に設定されているほか、「千葉」は地名(市名)として重要地となっているので、「千葉 〇km」との表示は多く見られます。