堀江貴文氏が現在の学校教育の問題点を指摘します(写真:小学館集英社プロダクション提供)

常識はいつだって、僕たちを縛ろうとする――。「自分の人生を取り戻す」ための41の行動スキルを伝授する堀江貴文氏の新著『非常識に生きる』から一部を抜粋・再構成し、堀江氏のメッセージをお届けします。

勉強とはつらいものという「間違った刷りこみ」

現在の義務教育では、本質的な学びを得ることはできないと思っている。教える側の先生に、学びとは何か? を理解している人が、あまりにも少ないからだ。

本来、学びとは楽しいものだ。人は、知らないことを知っていくプロセスを気持ちよく感じ、知的欲求を持ち続け、成長を重ねていくようにできている。

けれど教える側の学校の先生は、総じて教え方が下手だ。楽しいはずの勉強を、しゃべりの下手くそな授業で、わざわざ覚えづらいように教える。「よい将来のために勉強しなくてはいけないのだ」と、勉強とはつらいものという、間違った刷りこみにも、なぜだか熱心だ。

学校の勉強がつまらないのは、当然でもある。先生たちに課せられた課題は、反抗心や組織から外れようとする「出る杭」を打ち、平均的に優秀な「オールB」人材を養成することだ。子どもたちの伸びやかで、個性に応じた才能を伸ばしていこうなどとは、考えていない。凡庸なジェネラリストの量産が、義務教育の目的なのだ。

学校は教育の名目で、子どもたちの没頭を奪い、突き抜けた天才の芽を摘み、「オールB」が理想であるという常識を、植えつけている。

その環境でストレスがないという生徒はいいだろうけど、あなたは学校に通ってみて、どうだっただろうか? やりたいことを奪われたり、誰にも傷つけられなかっただろうか?

洗脳型の学校教育によって、偏差値至上主義の、歪んだシステムが生まれた。現行のシステムのせいで、情報化社会のスピードに対応できない偏差値秀才・和製エリートが、量産されてしまったのだ。彼らはペーパーテストには強い。それはそれで、大事な面もある。しかし人としての豊かな知性も、養えているだろうか? 

いま多発している、エリート官僚や政治家たちの汚職事件を挙げるまでもなく、和製エリートの知的劣化は目を覆いたくなるほどだ。僕などは、彼らの格好の攻撃対象だ。突出した行動を取る人間を、感情的に叩きまくる風潮の根幹には、義務教育があるだろう。

しかしグローバリズムが進み、スマホが普及したことで、教育の手段と選択は一気に多様化した。校則違反の髪型をしただけで、子どもに罰を与えるような大人に、勉強を教わる必要はどこにもない。

学校教育とは、何十年も惰性で海上を航行している、旧式の巨大タンカーのようなものだ。もはや自力走行できていないのだが、船体が大きすぎて、なかなか止まらないし方向も変えられない。力ずくで止めるとしたらコロナウイルスみたいな大波の現象しかないのだが、それはそれで多くの問題が起きてしまう。

はっきりしているのは、惰性で走るタンカーはいずれ座礁する。何も考えずにタンカーに乗っていた人たちは、振り落とされるのだ。

振り落とされた人は見捨てればいい、とは言わない。用意されていたタンカーはもうすぐ止まるのだから、みんなで生き方改革・働き方改革をしていこう! その一環として、僕はHIU(堀江貴文イノベーション大学校)やゼロ高(ゼロ高等学院)を、頑張って運営している。

いまの学校には、まともに教えられる先生がいないし、不登校の子も増えている。学ぶ場所は、子どもたちの好きなように選ぶべきだ。

スマホブロードバンド時代になって、価値ある情報は好きなだけつかめるし、行動できるチャンスは山ほどある。何にも、不安になることなんかない。「学校がつらければ、行かなくても大丈夫だ。君たちは、すごくいい時代を生きているんだよ」と、僕は子どもたちに伝えたい。

読んでいるのは圧倒的にマンガが多い

僕は子どもの頃から、読むことが好きだった。家にあった百科事典は、幼い頃に読了してしまった。知的好奇心が強いのもあったけれど、世間と自分との情報の壁を越えるには、昔は本を読むしかなかったのだ。

読書をしていれば、思考の筋肉は衰えない。思考の筋肉は、物事を深掘りして、本質を見きわめるには必要だ。スピード感が掛け合わされば、ビジネスでも実力を発揮できる。

読書は、何も活字だけの本には限らない。僕が読んでいるのは、圧倒的にマンガが多い。

「マンガばかり読んでいたらバカになる」なんて考えは、大昔のものだ。現在、第一線で活躍する知識人は、若い頃にマンガが大好きで、マンガの影響でその後の道を志したという人がとても多い。とくにサイエンスの分野では顕著だ。

米国で最も権威ある医学賞のラスカー賞を受賞した、京都大学教授の森和俊さんは『鉄腕アトム』のマンガ体験がきっかけで、研究者を志したという。この先は『鋼の錬金術師』を読みふけり、後にノーベル化学賞の受賞者となる人材も現れるだろう。

想像力を振り絞って、フィクションで描き上げられたマンガには、現実とリンクする知識が詰めこまれている。

宇宙航空研究開発機構JAXAへの綿密な取材によって、つくりあげられたように思われる『宇宙兄弟』も、実は作者の小山宙哉さんの完全な想像から生まれたという。マンガを熱心に読むことは、専門書の研究にも匹敵する学びに通じるのだ。

歴史大作や人物評伝のコミカライズなど、綿密な取材に基づいて描かれたマンガなら、小説と同じかそれ以上の情報が詰めこまれている。現役の中国史の研究者のほとんどは、横山光輝の名作『三国志』を読んでいるだろう。

マンガは最強の「知育道具」


マンガは、時間対情報摂取量がとても高い。だから僕は『マンガで身につく 多動力』『バカは最強の法則』『雇用大崩壊』など、多くの著書をマンガで発表している。早く強く、読者に情報を伝えるのに、マンガ以上の表現手段はないと思う。

マンガを読んでいるとき、脳内では実は、高度な情報処理の作業が行われている。脳科学の分野では、言語認識野と画像認識野は、まったく違う機能とされる。しかし、CPUとGPUの関係のように、並列で動かせることがわかっている。

マンガを読んでいるとき、脳では無意識に、絵の情報をセリフで補完したり、またその逆も行っている。脳内の複雑な機能を同時に立ち上げ、相関的な活動により、脳細胞の活性化を促しているのだ。

マンガは、絵やセリフ、コマ運び、ストーリーなど、多くの通信情報で構成されている。読むだけで脳が鍛えられる、最強の「知育道具」なのだ。

脳の情報処理能力を伸ばすには、字幕と芝居を同時に見ている、映画もお薦めだ。だがマンガは好みのスピードで読め、自在性の面で優れている。自分のテンポに合わせながら、脳内で複数の情報を整理して、物語を理解する力を養えるのだ。

面白いだけでなく、作家の卓越した想像力も吸収できる。一石二鳥どころか、三も四も得られる、最適な学びの手段だ。