楽天・石井一久監督【写真:荒川祐史】

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沖縄での1か月に手応え「用意はある程度はできた」

 楽天は2月28日の中日との練習試合(沖縄・北谷)が5回途中降雨ノーゲームとなり、キャンプと練習試合で1か月間に及んだ沖縄滞在を終えた。3月1日に本拠地・仙台へ戻る。同26日の公式戦開幕へ向け、就任1年目の石井一久監督(GM兼任)の“一久野球”がベールを脱ぐ瞬間が近づいている。【宮脇広久】

 新監督としてこの1か月間の手応えを聞かれた石井監督は、「僕なんて牛丼で言えば、お味噌汁が付いていないか付いているかくらいの違いしかない。だから問題ないと思います」と謙遜した。

 実際、2月13日のロッテとの練習試合で初采配を振るった時点では「選手たちはまだチームの作戦以前に、1軍のふるいにかけられている状態。まず自分をアピールしてくれれば」と語っていたが、試合を重ねるごとに作戦めいたものが顔をのぞかせてきた。

 25日のDeNAとの練習試合(宜野湾)では、3回無死一、三塁で打者・鈴木大のカウント2-1からの4球目に、一塁走者・小深田がスタート。鈴木大は高めのボール球をあえて空振りし、小深田の二盗成功をアシストした。4回無死二塁では、9番打者の下妻がきっちり送りバントを決めた。

 そして5回途中までプレーしたこの日は、2回1死から太田が死球で出塁。続く田中和の1-1からの3球目にエンドランを敢行するも、ファウルに。直後の4球目にも太田がスタートを切ったが、今度は田中和が内角のボール球を見送り、昨季セ・リーグトップの盗塁阻止率.455を誇った中日・木下拓の強肩に刺された。さらに四球を選んだ田中和も、続く辰己の0-1からの3球目に二盗を試みたが、続けて失敗に終わった。

機動力不足は積年の課題「プロセスを大事にしながら…」

「結果は置いといて、チームの作戦面の考え方や、質の高い走塁とは何かを理解してくれれば」と石井監督。「今の時期はアウト、セーフは関係ない。プロセスを大事にしながら取り組んでくれればいい」とうなずいた。

 楽天打線は昨季、いずれもリーグトップのチーム打率.258、557得点を誇ったが、実はチーム盗塁数は2018年以降3年連続リーグワースト(2019年は日本ハムと同数)で、機動力不足が積年の課題である。昨季はチーム67盗塁のうち、新人だった小深田がチームトップの17盗塁で約4分の1を占めたが、一方で9度刺された。

 まず試合で走ってみて、アウトになってみないことには、課題も見つからない。石井監督は機動力アップへ、気の長い取り組みを始めたところなのかもしれない。

「細かい部分はいろいろあるが、(これからオープン戦を重ねていくに当たって)用意ができたかと言えば、ある程度はできたと思う。今のチーム状態と、チームの和をこのまま継続して、強いものにしてシーズンに臨みたい」と自信もうかがわせた新指揮官。今後どんなユニークな作戦を見せてくれるのか。「味噌汁」程度の存在感にとどまるはずはない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)