「奇抜すぎて」普及しなかったレトロ家電7選
昭和30〜40年代には、斬新で面白い家電がたくさんありました(写真:Fast&Slow / PIXTA)
昭和30〜40年代、便利なようでちょっと残念な、奇抜な発想の家電がたくさんありました。レトロ家電コレクター・増田健一さんの新著『決定版 増田さんちの昭和レトロ家電』では、そんなユニーク家電が多く紹介されています。
本稿では同書から一部抜粋しお届けします。
卓上噴水がゴージャスな夏の夜を演出
中央無線(現 テクニカル電子)
卓上噴水
昭和35年 2,950円
『決定版 増田さんちの昭和レトロ家電』より
この卓上噴水を製造・販売していたのは当時、モニタテレビなど放送用スタジオ機器を作っていた中央無線。卓上噴水と放送用機器……。関連ないようですが、創業者の曽田三郎氏が海外視察へ行った際にヒントを得たのがキッカケでした。
バイブレータを応用したピストンで水を送る仕組みなので音が静か。インテリア商品として好評だったようです。「レストラン、理髪店などで、ときどき見かける卓上用噴水は、最近ではポツポツ家庭にはいって『夏を涼しく』ムードにひと役買っています」(『毎日新聞』昭和39年7月5日)。
昭和30年〜 40年代、噴水というのは今以上に、モダンというかゴージャスなイメージがあったのかもしれません。
初任給の8倍!日本初の「食洗機」
松下(現パナソニック)
電機自動皿洗機
MR-500 昭和35年 59,000円
『決定版 増田さんちの昭和レトロ家電』より
外見は洗濯機のようですが、これは電気自動皿洗機、今でいうところの食洗機です。
日本初となるこの食洗機、発売は意外と早く昭和35年でした。
しかし、高卒の国家公務員初任給が7,400円の時代に59,000円と高価なこと。
5〜7人の 家庭用にしては場所をとること。また一回洗うと100Lと、水を大量に使うこと。
そして「食器を機械に洗ってもらうなんて」という当時の常識もあって、残念ながら普及はしませんでした。
台所のオバQは働き者だった
松下(現 パナソニック)
食器洗い機
NP-100 昭和43年 29,500円
『決定版 増田さんちの昭和レトロ家電』より
電気自動皿洗機の誕生から8年、卓上式として発売されました。形が似ているところから、当時の人気アニメにならって通称“オバQ”。
卓上式なので「調理台に置けるコンパクト設計…4人家族の食器が一度に洗えます」(新聞広告)。たしかに調理台にも置けるのですが、 これでは場所をとってしまい調理台で料理はできないかも……。こちらも普及には至りませんでした。
しかし工夫を重ねて50年。小型化や節水を実現し、また共働き世帯の増加もあって、ようやく食洗機の時代が訪れました。
お裁縫の「電化」狙った電動ハサミも登場
早川(現 シャープ)
自動ハサミ「クイッキー」
EV-990 昭和36年 1,750円
『決定版 増田さんちの昭和レトロ家電』より
「シャープ自動ハサミは、日本で初めてシャープがおおくりする画期的な新製品です」。
シャープがお台所の電化の次に考えたのが「お裁縫の電化」でした。ハサミのように刃をザクッと大きく上下に動かして布を切るのではなく、バイブレーターで刃をブ〜ンと微振動させて切るイメージです。
牛乳1本が12円の時代に1,750円……。牛乳約150本分と高価ですが、複雑な曲線が自由に、またホツレなくきれいに切ることができると、縫製業者やデザイナーさんなどに発売当初、結構売れたようです。
消しゴムが回転!!
東芝
乾電池消しゴム
BE-1 昭和36年 780円
『決定版 増田さんちの昭和レトロ家電』より
先端の消しゴムを回転させて文字を消す仕組みの「乾電池消しゴム」です。消すというよりも、砂消しゴムで文字を削るというイメージでしょうか。
取扱説明書には「瞬時に、きれいに、なんでも消せる」とありますが、瞬時には消えへんやろ!なんでもといってもマジックはどうなんや!ちょっとツッコミが入りそうですね。
細かい作業の設計やデザイン関係で需要がありました。
東芝ではこのBE-1に始まりモデルチェンジを重ねながら、平成に至るまで長く製造されました。
「ジェット機」が初めて日本の空を飛んだ頃に誕生
三菱
20cm ジェットファン
D-8E 昭和34年 6,100円
『決定版 増田さんちの昭和レトロ家電』より
昭和35年、日本航空では初めてのジェット機が東京−サンフランシスコ間に、翌36年には国内線の羽田−千歳間に就航しました。
千歳まで2時間15分かかっていたものが1時間半と大幅に短縮、本格的なジェット旅客機の時代がやってきました。
その頃“ジェット”という言葉の響きには、時代の先端やカッコよさが感じられたのでしょう。
三菱電機では昭和34年から、扇風機を「宇宙時代にふさわしいジェットスタイル」として、(一部機種の)モーターの意匠を、ジェット機のエンジンを模したジェット型モートルにして颯爽としたイメージにしました。
テレビがまだ高嶺の花だったころに誕生
早川(現 シャープ)
テレビ型ラジオ「シネマスーパー」
5S-85 昭和31年 10,900円
『決定版 増田さんちの昭和レトロ家電』より
テレビがまだ高嶺の花だった昭和31年。気分だけでもテレビを味わおうと、外観がテレビの形をしたラジオが早川電機から発売されました。
「テレビを形どったラジオのニューモード(」『シャープニュース』昭和31年8月)ということで、価格は10,900円。 当時、高卒の国家公務員初任給が5,900円ですから約2か月分と、けっして安い買い物ではありません。 またその頃の一般的なラジオが7,000円前後ですから、いささか割高でもあります。
買ってきたお父さんは……きっと叱られたに違いありません。