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 ドイツでは昨年の12月中旬から厳しいロックダウンを敷いているが、いまだに新型コロナウイルスが落ち着く気配はない。ドイツの人口約8302万人に対し、ここ数日の1日当たり新規感染者数は1万5000〜2万5000人で1日の死者数は1000人。感染者、死者数共に減少せず、ロックダウンを敷いても収束の出口は見えていない。そんな状況を見て、今年1月初旬からは、学校やレストランは閉鎖し、スーパーマーケットや薬局など生活に必要な場所のみの営業を許可する従来の規制に加え、友人などで集まっていい人数は世帯プラス1名まで、移動していい距離は15キロメートル以内というさらに厳しい規制を敷くことをドイツ政府は発表した。

 さらに一部の州では、現在義務付けられている公共交通機関やスーパーなどでのマスクの着用義務に対し、そのマスクは高性能の「FFP2マスク」のみが認められるという規制を13日に新たに追加。州としてはさらに感染を防ぐ目的があるが、子どもは呼吸が苦しくなる可能性もあることから着用義務があるのは15歳以上だ。規制は18日から有効だという。数週間は規制を破っても罰金は科さないそうだが、数週間後には公の場でFFP2マスクを着用していない場合、罰金が科される予定だ。

 ドイツ国民は、これまでは厳しいロックダウンであっても大多数の人が理解を示し従ってきた。だがこのマスクの規制に対しては現地でも多くの批判が寄せられているようだ。

 30代のドイツ人男性はFFP2マスクの着用義務について「流石にやりすぎ。冗談かと思った」と皮肉を込める。発表から数日後には規制が敷かれることに対しても「急すぎる」と怒りをあらわにした。また別の30代の男性は「FFP2マスクを導入するより、社会的距離の徹底を義務付けた方がいいのでは」と疑問をぶつける。スーパーでは大きさに応じて人数制限を設けなければならないにもかかわらず、それを無視して混み合っていることがあったり、公園で大人数が集まって話したりしている姿をよく見かけるそうだ。

 別の40代の女性は「FFP2マスクでどれだけ感染拡大を防ぐことができるのか」と指摘。FFP2マスクを着用することよりも、その弊害を心配し、「普通のマスクでも酸欠になって頭痛がする。コロナ以外の心配もある」と口にした。

 なお、FFP2マスクの着用義務が発表されるや否や、通販でFFP2マスクを購入する人が増え、購入できるサイトはあるものの次々と少なくなっていった。ドラッグストアでも売り切れているところが増え、手に入れるために苦労した人は多い。ドイツに住む30代の女性は「大手の通販では売り切れていたから、買いに出た方が早いと思い薬局まで足を運んだ。薬局にはまだ数が十分あったけど、子どもを連れてマスクのために出かけるのは大変だった」と嘆く。

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 しかしながら買い占めは行われてはいないようだ。州知事が「FFP2マスクは十分にある」と発言したことで数に関する不安は消えたことと、これまで幾度となくロックダウンを経験し、トイレットペーパーなどを買い占めたものの、結局数日後には店頭に並んでいた経験を多くのドイツ国民が経ているため、買い占めることに対する執着が薄れていることがその理由だろう。SNSでは「数は十分にあるらしい」という声も広がっていて、今のところ目立った転売は行われていない。

 少数ではあるが一部の国民からは「コロナを封じ込めるためにはやれることは全てやるべき。感染は抑えきれていないし、決断した州知事の勇気を称えたい」と賛成の声も挙がっている。

 現場では戸惑いや怒りの声が飛び交っている。FFP2マスク着用義務の効果は見られるのだろうか。その結果によっては世論が変わってくる可能性もあるだろう。