●ボイトレで成長実感! 自粛期間がターニングポイントに

NHK連続テレビ小説『エール』で主人公の娘・華を、TBS系火曜ドラマ『この恋あたためますか』(毎週火曜22:00〜)で主人公の親友である中国人の“スー”こと李思涵役を演じ、一気に注目度が高まっている女優の古川琴音(24)。この2つの役を演じているのが同一人物であることに驚いたという声や、本当に中国人だと思ったという声などが上がっており、その演技力が称賛されている。古川にインタビューし、出演の反響や撮影の裏話、また、自身にとって大きなターニングポイントになったというコロナ禍の自粛期間について話を聞いた。



古川は2018年、沖縄市のPR動画の主演オーディションに合格してデビュー。その後、TBS系ドラマ『凪のお暇』や映画『十二人の死にたい子どもたち』などに出演し、JTのCM「想うた」シリーズも話題に。女優として着実に活躍の幅を広げ、今年、『エール』と『恋あた』でその存在が知れ渡った。

エゴサーチはしないようにしているという古川は、友人から送られてきた『エール』や『恋あた』の視聴者のコメントを見て、反響を感じたという。そして、そのコメントから、「自分が表現したいことがちゃんと伝わっている」と感じることができたそうで、「自分の演技はまだまだですが、自分が想像していたものと自分が表現しているものの差がどんどん縮まってきている気がするので、このまま地道に成長していけたら」と語る。

また、「今までは、はっきりした感情表現が苦手で、感情が見えづらいと言われたり、自分でも全然見えてないと思うことがあったのですが、『恋あた』でスーちゃんのはっきりした感情や表情が出ていたときに、こういう表情もできるようになったなと。だんだん自分が見せたいものを表現できるようになってきたのかなと感じています」と明かした。

手ごたえを感じられるようになった裏には、自粛期間中の努力があった。「以前は100%納得して終われた作品がほとんどなくて、どうやったらやり切ったと言えるのだろうと悩んでいたのですが、自粛期間にいろいろな作品を見たり、ボイストレーニングに励んだり、有意義な時間を過ごせたのは、よかったなと思っています」

ボイトレを毎日続けたことで変化を実感。「単純にまず、セリフが言いやすくなりました。演技の悩みとして声が平坦だなというコンプレックスがあったのですが、声域が広がって声に幅が出るようになり、自分がイメージした通りにセリフが言えるようになってきたと思います」と演技にもプラスになっているという。

「結果として、『エール』と『恋あた』の反響につながったところもあると思います。今までは自分にできるのかなという気持ちが強すぎて遠慮している部分がありましたが、飛び込むしかないと腹をくくって臨むことができ、自由になれた感じがありました。こういう風に一つ一つ努力して、一つ一つ思い切ってやることが大事なんだとわかった年でした」と充実した表情を見せた。

●スー役で中国語を猛勉強!「中国人だと思った」の声も



自粛期間に女優としての技術を磨き、覚悟を決めて飛び込んだ『エール』と『恋あた』で見事に成果を残した古川。SNS上では「スーちゃんと華ちゃん、同一人物が演じてると思うと凄い」「演技上手すぎて同一人物って全然気づかなかった!」「エールでは娘役、恋あたでは中国人役、演技の振り幅が凄い」などと称賛の声が上がった。

24歳にもかかわらず『エール』では中学生役も違和感なし。そして、『恋あた』では、美しい発音の中国語をマスターして中国人になりきり、「中国人だと思ったら日本人!!」「本場の人みたい」と驚きの声も。

最初に中国人役と聞いたときは、「エッジの効いた役になりそう。いい役どころをいただけた」という気持ちとともに、「セリフではどう表現したら良いだろう」と言葉に対する不安が少しあったという。

古川は大学時代に英語劇のサークルに入っており、「口の形や音やイントネーションを覚えて、そのあとに感情を乗せるというプロセスを学んでいました」とその経験が生かされたものの、中国語の発音に苦労。本作にプロデューサーとして参加している中国人の黎景怡氏に教えてもらったそうで、「中国語のセリフをボイスメモで録ってもらって、ピンイン(中国語の発音表記)を台本に書いてもらって、見ながら聞いて練習し、黎さんに自分の発音を聞いてもらってOKが出るまで練習しました」と振り返る。

「まさか中国語をそこまでちゃんとやると思っていなかった」という古川だが、「中国人とわかってもらえる大事なポイントだったのでそこは徹底的にやろうと思って」と、中国語の練習に力を入れた。

もともと少し個性的な話し方と言われることが多いようで、「スー役にはうまくフィットしているのかなと思います。ただ、作品によると思うので、作品にあわせられるようにしっかりお芝居でカバーしていきたいと考えています」と話した。

言葉以外は特に意識せず、すんなりと役に入り込めたという。「ヘアメイクと衣装とセリフとコンビニの仲間の関係性に助けられ、それに頼りながらスーのキャラクターが自然にできた印象があります。クランクインの日に初めてスーの完成形を見て、コンビニメンバーがそろったときの空気感を見て、カチッとハマったというか、こういう子なんだなとわかった瞬間がありました」

そして、現場ではカメラが回っていても回っていなくても自然とスーの感覚に。突拍子もないことを言う感じやイケイケな感じが出ることがあるそうで、「ずっとその空気感の中にいて、そのまま本番に入れています」と説明。ちなみに、スーのキャラは「自分の明るい部分を凝縮させた感じ」とのことだ。

●森七菜の“自由な芝居”に刺激「私も自由に演じられるように」



『恋あた』では、主人公・井上樹木役の森七菜の演技に刺激を受けているという。「七菜ちゃんは樹木と似ている部分がたくさんあり、本当に自由で、七菜ちゃん自身も天井がなくて、アドリブを続けるとなったらいつまでもいろんな種類のアドリブが役のテンションのままできる。最初はびっくりしましたが、その自由さに刺激をもらって、私も自然と七菜ちゃんのアクションに応えられるようになってきました」

森とのシーンで特に印象に残っているのは、「樹木が浅羽社長の写真を消すシーン」とのこと。「あのときの七菜ちゃんのお芝居が素晴らしくて、本当に親友としてどうにかしてあげたい、何とか苦しい気持ちを救ってあげたいという気持ちになったので、すごく印象に残っています。役に入り込めたし、七菜ちゃんのお芝居が好きだなと改めて思いました」

樹木の話を聞くだけでなく、背中を押す言葉をかけたり、「こんな親友がいてくれたら」と思う理想の親友像であるスー。古川は「まさに自分がほしい友達を演じているので、そう思っていただけたらすごくうれしいです」とにっこり。

浅羽社長役の中村倫也との共演では、本番とそれ以外のスイッチの切り替えに驚いたそう。「演じているときはかっこいい浅羽社長ですが、演じていないときは不思議な空気感。芝居をしているときの浅羽のクールな感じとのギャップが素敵だなと思いますし、『本番』という声がかかるまで素の自分でいらっしゃるので、スイッチの切り替えがはっきりしている方なんだなと思いました」と語った。

自粛期間中に磨いた技術をすべて注ぎ込んで挑んだ『エール』と『恋あた』でまた、それぞれに女優として学ぶべきものがあったという。

『エール』では窪田と二階堂の姿がお手本に。「窪田さんとふみさんのお芝居や、スタッフさんと関係を間近で見られたことはとても勉強になりました。お二人とも役への愛情や責任感が強く、スタッフの方との連携がしっかりとれていて、自分の役に対する思いをみなさんと共有できているなと感じました。私も、役に対してもっと責任を持たなければいけないと気が引き締まりました」

そして、『恋あた』ではやはり、主演の森からの刺激が大きいようで、「七菜ちゃんの自由なお芝居に刺激を受けて、私も自由に演じることができるようになりました」と話し、「七菜ちゃんは本当にのびのびと演技をされるので一緒に撮影していてずっと楽しいです」と演じる楽しさも改めて実感しているようだ。

古川の女優人生において大きな節目になるであろう2020年。自身としても「すごくいい年になった。注目していただけるようになったこともそうですが、やっと地に足がついたというか、いろんな準備ができた年だと思っています」と捉えている。

将来的には「海外作品にも出られたら」との思いも。学生時代に英語劇のサークルに入っていたように海外への意識が強いようで、「30歳までにきっかけがあればいいなと思いまっています」とチャンスを狙っている。「語学はまだまだ勉強しないといけない」とのことだが、英語劇の経験や、『恋あた』での中国語の猛特訓も生かされそうだ。







■古川琴音

1996年10月25日生まれ、神奈川県出身。2018年、沖縄市のPR動画の主演オーディションに合格してデビュー。その後、ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS)、『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(日本テレビ)、『凪のお暇』(TBS)、『いとしのニーナ』(フジテレビ)、映画『春』、『チワワちゃん』、『十二人の死にたい子どもたち』などに出演。JTのCM「想うた」シリーズも話題に。NHK連続テレビ小説『エール』で主人公の娘・華役、TBS系ドラマ『この恋あたためますか』で主人公の親友である中国人の“スー”こと李思涵役を演じ、話題を呼んでいる。

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