FFベースに搭載するとなるとモデル末期ばかりで旨味なし

 日産独創のハイブリッドシステムであるe-POWERは、電気自動車(EV)リーフの電動技術を応用している。駆動はモーターのみで行うが、リーフと違うのは必要な電気をエンジンで発電する点だ。そこでエンジンは搭載するが、走行にモーターとエンジンを併用するトヨタのハイブリッドとは方式が異なる。

 まず小型車のノートで採用され、次にミニバンのセレナに搭載された。そして、まもなく発売される小型SUVのキックスにも採用される。どれも前輪駆動で、この点もリーフと同じだ。ただし、後輪にもモーターを取り付けた4輪駆動も選べる。

 日産の登録車で前輪駆動を前提とする車種は、ほかにコンパクトカーのマーチとSUVのジュークになる。いずれも2010年に現行車が生まれ、すでに10年目の車種になる。ことにジュークは昨年末で国内での生産を終了した。マーチについても、17年に欧州向けのマイクラ(海外ではこう呼ばれている)は発表になったものの、国内はまだ従来型のままだ。その販売動向は、一般社団法人日本自動車販売協会連合会の乗用車ブランド通称名別順位でベスト50に車名が出ない低調ぶりだ。

 4ドアセダンでは、前輪駆動のティアナとシルフィがある。ところが、ティアナも19年で生産が終了している。シルフィは現行が2012年に発売され、すでに8年を経てモデル末期だ。また世界120カ国で販売されるグローバルカーであり、小型セダンとして価格が重視されるうえ、昨今のセダン離れの市場傾向のなかであえて車両価格が上がるe-POWERを投じるかどうか、経営判断のわかれるところだろう。

 昨年、中国で4代目シルフィが発表されたが、国内への導入はどうなるのだろう。中国では電動化が不可欠だ。しかしハイブリッドでは、NEV(電動車両を指すニュー・エナジー・ヴィークル)規制への適合は難しい。こうした状況から、ノートとセレナ、そしてキックス以降にe-POWER採用車種が現れないのはやむを得ないことだろう。

FRなどにはすでに確立したHVがあり転用は難しい

 日産のSUVにエクストレイルがあるが、こちらはe-POWERと別方式のハイブリッド車がある。エンジン+CVT+モーターのシステムで、モーターのみのEV走行のほか、エンジン走行と、モーター+エンジンでの急加速など状況に応じ使い分ける方式だ。したがって、こちらにあえてe-POWERを差し替えることも考えにくい。

 これら以外の日産車となると、後輪駆動のスカイラインとフーガであり、こちらも後輪駆動用の1モーター2クラッチ式ハイブリッドがある。加えて、米国や中国など巨大市場ではプラグインハイブリッド以上の電動化でないと、米国のZEV(排出ガスゼロ車=ゼロ・エミッション・ヴィークル)や中国のNEVの対象外となり、導入を達成できないことによる反則金(クレジット)を回避する役を果たさない。

 以上のような状況から、前輪駆動を基にした現在のe-POWERは、運転支援機能への適応なども含め、走行性に優れたハイブリッドシステムではあるが、その広がりは限界がありそうだ。

 EVに関しては、昨年の第64回東京モーターショーで、SUV(アリアコンセプト)と軽自動車(ニッサンIMk)のコンセプトカーを日産は発表している。そのうえで、プラグインハイブリッドも視野に入れながら、今後はEV+レンジエクステンダー(エンジン発電機付)的な電動化であれば、e-POWERで得た知見を広げながら、より多くの車種へ展開していくことができるかもしれない。