新たな設計思想や先進的な装備など現代に続く技術も

 若い人にはピンと来ないかもしれないが、かつて日産といえば、「技術の日産」がキャッチフレーズだった。

 ルノーの傘下になるまでは「プリンス自動車工業」が手掛けていた固体燃料ロケット生産を引き継いだ、「航空宇宙事業部」まであったこともあり(2000年に事業譲渡しIHIエアロスペースへ)、技術に関しては高いプライドを持っていた会社だった。

 そんな日産が生み出した、技術的に注目された名車をいくつかピックアップしてみよう。

1)シルビア(CSP311型 1965年)

 ベテランの職人の手作業で仕上げられた流麗なボディが、「宝石のカット」とまで言われた初代シルビア。ラジエターグリルはアルミの削り出しだった。シャシーはフェアレディのものを流用し、そのうえに2シータークーペのボディをのせたセミカスタムメイドの二人乗りのスペシャルティカー。

 国産車で初めて、ポルシェタイプのクロスレシオの4速フルシンクロトランスミッションを搭載し、新型式のダイヤフラムスプリングクラッチも採用。広い視界など、シートベルトの標準化などが先進的だった。

2)ブルーバード(P510型 1967年)

 510ブルーバードは、ポルシェとの激闘を制し、1970年の第18回東アフリカサファリラリーで総合優勝したマシン。

 先代(410)まで、フロント・ダブルウイッシュボーン、リヤ・リーフリジッドだったサスペンションを、510ではBMWと同じように、フロント・マクファーソン式ストラット、リヤ・セミトレーリングアームの四輪独立懸架にアップデート。エンジンも日産の代表的なエンジンとなる、新開発のOHCの「L16型」を搭載。

 ほかにも、三角窓のない新鮮なスタイリング、カーブド・ドアガラス、新換気装置、安全設計など、新しい設計思想がてんこ盛りだった。

 高速ジェット機のフォルムを受け継いだ「スーパーソニックライン」のスタイルと、ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションも斬新だった。

3)フェアレディZ(S30型 1969年)

 初代のフェアレディZ=S30は、世界でもっとも多く生産された量産スポーツカー。スポーツカーなのに荷室が広く、乗用車並みの乗り心地で実用性が高い。しかも比類ないスタイリッシュなボディを持つ。

 1971年のサファリラリーでは1-2フィニッシュ。1970年のモンテカルロラリーでは、シューマッハとともに、フェラーリF1の黄金期を築きあげたジャン・トッドがS30Zで3位になっている(トッドは、コ・ドライバー)。

レースでの輝かしい記録をもつ伝説のクルマも存在!

4)スカイラインGT-R(GC10 1969年)

 “羊の皮をかぶった狼”、レースでの49連勝の記録を持ち、最強のGTといわれた第一世代のGT-R。その心臓部に収まったのは、レーシングマシン=R380のGR8エンジンのデ・チューン版、S20エンジン。

 このS20は国内初の4バルブ、V型弁配置、クロスフローポートを持つ、多球形式燃焼室のアルミシリンダーヘッドを採用。

 また国産車で初めて、フル・トランジスタ式点火装置を採用し、低速時から高速時まで安定した火花が得られるようになっていた。

 もともとソレックスキャブで160馬力という仕様だったが、レースでは最終的にルーカス製のフューエルインジェクションを使って、250馬力にまでチューニングされた。

5)セドリック(430型 1979年)

 5代目セドリック=430型は、日本初のターボエンジン (L20ET) 搭載車。(国内では乗用車初の直列6気筒ディーゼルエンジン=LD28の搭載車もこのセドリック)。

 この国産最初のターボエンジン、L20ETは、海外のスポーツカーのようにハイパワー化を目指したものではなく、排出ガス清浄化、燃費向上、低騒音を達成しながら出力アップするのが目的で、今日のダウンサイジングターボエンジンの先駆けのようなユニット!

 ターボの力を借りて、ファイナルギヤ比を下げて、ハイギヤードとし、2リッターながら、3リッター級の大排気量エンジンと同等の走りを目指したエンジンだった。

6)セドリック(Y30 1983年/Y31 1987年/Y34 1999年)

 日本初のV型6気筒エンジン(VG型)を搭載したのがY30セドリック。そして、世界初の前進5段ギアを採用したフルレンジ電子制御オートマチックトランスミッション(ジヤトコ製)を採用したのが、Y31セドリックだった。

 さらにY34セドリックでは、世界初のエクストロイドCVTを搭載。一般的なベルト式CVTではなく、ディスクとパワーローラーにより、動力を伝達するCVTで、FRの大排気量(3リッターターボエンジン)の大トルクに対応できるCVTを完成させた。

 滑らかな加速感と素早いレスポンスが特徴で、従来のオートマチックトランスミッションに対し、約10%も燃費が向上。

7)スカイラインGT-R(BNR32 1989年)

 グループAレースに勝つために、徹底的にレギュレーションに合致する最速のクルマを目指して開発されたのが、16年ぶりに復活したGT-R=R32だった。

 2.6リッターのツインターボエンジン、RB56DETTは、レース用のチューニングで600馬力以上のパワーを誇り、トルクスプリット4WDのアテーサE-TSが、そのパワーを無駄なく路面に伝え、なおかつ4WDながらハンドリングへの悪影響を最小に抑えたという意味で、画期的なシャシーとなった。

 グループAでは、デビュー以来4年間、29勝無敗。海外でも91年のスパ24時間レースで、2位を20周引き離して総合優勝に輝いている。