現代人の生活を支える海底ケーブル - KDDIの敷設船に潜入してきた
インターネットの発達によって、海外の情報が簡単に手に入り、海外のサービスも日常的に利用できるようになりました。その通信ネットワークについて、思いを巡らせたことはあるでしょうか。海外のサイトにアクセスするときには、ほぼ必ずと言っていいほど海底ケーブルを経由しているんです。現代人のより良い生活のため、海底ケーブルの重要性は増すばかり。ここでは、KDDIおよび沖縄セルラーによる、海底ケーブル敷設にまつわる話題をお伝えします。
○海外に伸びる海底ケーブル
かつて国内電話をNTTが、国際電話をKDD(国際電信電話、KDDIの前身)が担当していたことから、現在でも日本と海外を結ぶ海底ケーブルの敷設・保守技術に長けているKDDIグループ。日本とアメリカ、ロシア、アジア諸国を結ぶ国際海底ケーブルに対して、今なお出資を続けています。
スマホや携帯電話の「電波」というイメージもあって、「電波が海を越えて海外のサイトにアクセス」と思うかもしれません。しかしKDDIによれば、海外とのインターネット通信の99%以上は、海底ケーブルを経由しているそうです。私たちの生活で使われるトラフィックは急増しており、2020年春には次世代移動通信「5G」の商用化も本格スタートするため、海底ケーブルの冗長化・安定化は喫緊の課題となっています。
ところで、日米間をつなぐ海底ケーブルの総延長は、最短でも約9,000kmあります。どうやって敷設しているのか気になりますが、実は日本とアメリカの両方からケーブルを伸ばし始めて、太平洋のど真ん中で接続するそうです。その技術力に驚かされます。
日本において、初めて海底ケーブルが使用されたのは1964年のこと。このとき、池田勇人首相とジョンソン米大統領による初の日米間国際電話が実現しています。当時の電話回線は同時利用がわずか128回線に限られており、やりとりできた情報量は390kbpsほど。それでも当時は『世界初の太平洋横断海底電話ケーブル』として大きな話題になりました。
○国内をつなぐ海底ケーブル
国内だけで考えても、海底ケーブルは重要な役割を担っています。特に離島の通信インフラを支えるため、KDDIグループではこれまで国内に全11局(石狩、秋田、直江津、茨城、千葉、志摩、宮崎、沖縄など)の海底線中継所を運営してきました。そして2020年には、日置(鹿児島)と名護(沖縄)の2局を新設する予定です。
これまで沖縄の通信ネットワークは、沖縄県の具志頭から宮崎県および三重県を結ぶ「東ルート」で支えられてきました。KDDIグループでは、ここに新しく全長760kmの「西ルート」(名護〜日置)を新設する考えです。
この「東・西」の2ルート化によって通信の信頼性を高め、来(きた)るべき5G・IoT時代のトラフィック増大にも耐えられる、さらには南海トラフ巨大地震などの自然災害にも強いネットワークをつくる方針です。
沖縄セルラーの山森誠司氏は「沖縄県内では、沖縄セルラーが携帯電話利用者の半分のシェアを持っています。その責任から、沖縄セルラーが主体となって事業を進めます。万が一、地震などでケーブルが切れても沖縄が孤立しないように、しっかりケーブルを引いていきます」と力を込めました。総工事費は約50億円を見込んでいます。
新設の西ルートに海底ケーブルを敷くのは、2019年9月に運用を開始したばかりの海底ケーブル敷設船「KDDIケーブルインフィニティ」。名護市では12月20日に、同船の見学会が行われました。
○秘密の船内に潜入
KDDIケーブルインフィニティは、全長113.1m、横幅21.5m、総トン数9,778トン、航海速力12ノットのケーブルシップ。最大80名のスタッフが50日以上も航海を共にできる構造です。大規模災害時には、携帯電話の疎通復旧を支援する船舶型基地局としても機能するとのこと。海底ケーブルの敷設工事を指揮するのは、KDDIの子会社である国際ケーブル・シップで、工事は2020年3月に完了する予定です。
船内でまず驚いたのは、海底ケーブル約2,500kmを収納できるという高さ3.8m・直径16mの巨大なケーブル格納庫。これを船内に2基も備えています。回転式になっており、ここからケーブルがどんどん繰り出されていきます。
デッキには、最大1,500mまで海に潜れる埋設機が用意されていました。船で曳航することで、海底に掘削した深さ3mの溝に鋤(すき)の部分がケーブルを埋設していきます。船内には、このほかROVと呼ばれる水中作業ロボットも準備しています。
海底ケーブルには修理が欠かせません。地震で切断されるほか、浅い海底では船のいかり、漁船の網などが絡んで切れることもあります。また、台風で陸地に大雨が降ると、川が濁流になり、砂が海底に流れ込むことで海底ケーブルが引っ張られて切れるそう。そこで船内には、ケーブルをつなぐ作業スペースが確保されています。
でも大海原の真ん中で、切断されたケーブルをどうやって探すのでしょう。説明によれば、切断面から発生する磁力から場所を特定するとのことでした。障害点を確認したら前後でケーブルをカットし、1本を船まで引き上げて補修、ブイをつけて一旦は海に戻し、もう片方の切断面を船に引き上げて補修、最後に2本を船内で接続した後に海に戻すという作業フローで、これをトータル5日ほどで仕上げるんだとか。年間で20〜30回は障害が発生するため、作業員も気が抜けません。
○沖縄を通信の途絶えた孤島にしない
船の起工式には、沖縄セルラーの湯浅英雄氏、総務省の杉野勲氏らが登壇しました。
自然災害による被害が相次いだ、2019年の日本列島。沖縄でも2019年9月に発生した台風18号によって、石垣島や与那国島で通信障害が起こり、電話やインターネットが11時間も使えなくなりました。このことを踏まえ、湯浅氏は「強靭なネットワークの構築が最重要課題です。沖縄を通信の途絶えた孤島にしないためにも、約20年ぶりとなる沖縄〜九州間の海底ケーブル敷設工事に着手しました」と説明。海底ケーブルを冗長化して沖縄の経済をしっかり支えていきたい、と話しました。
杉野氏は「いまや通信インフラは、電気、道路、水道と同じくらい私たちの生活に欠かせないものとなりました。今回の取り組みは、いざというときに途切れない通信を目指している沖縄セルラー電話の意気込みが表れたもの。沖縄経済は75カ月連続で拡大中ですが、ICTの力で、さらに景気を伸ばしていけるものと考えています」と期待を寄せました。
○海外に伸びる海底ケーブル
かつて国内電話をNTTが、国際電話をKDD(国際電信電話、KDDIの前身)が担当していたことから、現在でも日本と海外を結ぶ海底ケーブルの敷設・保守技術に長けているKDDIグループ。日本とアメリカ、ロシア、アジア諸国を結ぶ国際海底ケーブルに対して、今なお出資を続けています。
スマホや携帯電話の「電波」というイメージもあって、「電波が海を越えて海外のサイトにアクセス」と思うかもしれません。しかしKDDIによれば、海外とのインターネット通信の99%以上は、海底ケーブルを経由しているそうです。私たちの生活で使われるトラフィックは急増しており、2020年春には次世代移動通信「5G」の商用化も本格スタートするため、海底ケーブルの冗長化・安定化は喫緊の課題となっています。
ところで、日米間をつなぐ海底ケーブルの総延長は、最短でも約9,000kmあります。どうやって敷設しているのか気になりますが、実は日本とアメリカの両方からケーブルを伸ばし始めて、太平洋のど真ん中で接続するそうです。その技術力に驚かされます。
日本において、初めて海底ケーブルが使用されたのは1964年のこと。このとき、池田勇人首相とジョンソン米大統領による初の日米間国際電話が実現しています。当時の電話回線は同時利用がわずか128回線に限られており、やりとりできた情報量は390kbpsほど。それでも当時は『世界初の太平洋横断海底電話ケーブル』として大きな話題になりました。
○国内をつなぐ海底ケーブル
国内だけで考えても、海底ケーブルは重要な役割を担っています。特に離島の通信インフラを支えるため、KDDIグループではこれまで国内に全11局(石狩、秋田、直江津、茨城、千葉、志摩、宮崎、沖縄など)の海底線中継所を運営してきました。そして2020年には、日置(鹿児島)と名護(沖縄)の2局を新設する予定です。
これまで沖縄の通信ネットワークは、沖縄県の具志頭から宮崎県および三重県を結ぶ「東ルート」で支えられてきました。KDDIグループでは、ここに新しく全長760kmの「西ルート」(名護〜日置)を新設する考えです。
この「東・西」の2ルート化によって通信の信頼性を高め、来(きた)るべき5G・IoT時代のトラフィック増大にも耐えられる、さらには南海トラフ巨大地震などの自然災害にも強いネットワークをつくる方針です。
沖縄セルラーの山森誠司氏は「沖縄県内では、沖縄セルラーが携帯電話利用者の半分のシェアを持っています。その責任から、沖縄セルラーが主体となって事業を進めます。万が一、地震などでケーブルが切れても沖縄が孤立しないように、しっかりケーブルを引いていきます」と力を込めました。総工事費は約50億円を見込んでいます。
新設の西ルートに海底ケーブルを敷くのは、2019年9月に運用を開始したばかりの海底ケーブル敷設船「KDDIケーブルインフィニティ」。名護市では12月20日に、同船の見学会が行われました。
○秘密の船内に潜入
KDDIケーブルインフィニティは、全長113.1m、横幅21.5m、総トン数9,778トン、航海速力12ノットのケーブルシップ。最大80名のスタッフが50日以上も航海を共にできる構造です。大規模災害時には、携帯電話の疎通復旧を支援する船舶型基地局としても機能するとのこと。海底ケーブルの敷設工事を指揮するのは、KDDIの子会社である国際ケーブル・シップで、工事は2020年3月に完了する予定です。
船内でまず驚いたのは、海底ケーブル約2,500kmを収納できるという高さ3.8m・直径16mの巨大なケーブル格納庫。これを船内に2基も備えています。回転式になっており、ここからケーブルがどんどん繰り出されていきます。
デッキには、最大1,500mまで海に潜れる埋設機が用意されていました。船で曳航することで、海底に掘削した深さ3mの溝に鋤(すき)の部分がケーブルを埋設していきます。船内には、このほかROVと呼ばれる水中作業ロボットも準備しています。
海底ケーブルには修理が欠かせません。地震で切断されるほか、浅い海底では船のいかり、漁船の網などが絡んで切れることもあります。また、台風で陸地に大雨が降ると、川が濁流になり、砂が海底に流れ込むことで海底ケーブルが引っ張られて切れるそう。そこで船内には、ケーブルをつなぐ作業スペースが確保されています。
でも大海原の真ん中で、切断されたケーブルをどうやって探すのでしょう。説明によれば、切断面から発生する磁力から場所を特定するとのことでした。障害点を確認したら前後でケーブルをカットし、1本を船まで引き上げて補修、ブイをつけて一旦は海に戻し、もう片方の切断面を船に引き上げて補修、最後に2本を船内で接続した後に海に戻すという作業フローで、これをトータル5日ほどで仕上げるんだとか。年間で20〜30回は障害が発生するため、作業員も気が抜けません。
○沖縄を通信の途絶えた孤島にしない
船の起工式には、沖縄セルラーの湯浅英雄氏、総務省の杉野勲氏らが登壇しました。
自然災害による被害が相次いだ、2019年の日本列島。沖縄でも2019年9月に発生した台風18号によって、石垣島や与那国島で通信障害が起こり、電話やインターネットが11時間も使えなくなりました。このことを踏まえ、湯浅氏は「強靭なネットワークの構築が最重要課題です。沖縄を通信の途絶えた孤島にしないためにも、約20年ぶりとなる沖縄〜九州間の海底ケーブル敷設工事に着手しました」と説明。海底ケーブルを冗長化して沖縄の経済をしっかり支えていきたい、と話しました。
杉野氏は「いまや通信インフラは、電気、道路、水道と同じくらい私たちの生活に欠かせないものとなりました。今回の取り組みは、いざというときに途切れない通信を目指している沖縄セルラー電話の意気込みが表れたもの。沖縄経済は75カ月連続で拡大中ですが、ICTの力で、さらに景気を伸ばしていけるものと考えています」と期待を寄せました。