お金持ちほど実は「孤独を愛する」2つの理由
■富裕層のメンタルが強いワケ
たとえば「孤独死」がメディアを騒がせるように、孤独はいけないものだ、寂しく悲惨なものだというイメージがあると思います。
しかし実は富裕層ほど、ひとりだけの孤独な時間を好むものです。なぜ彼らは孤独を大切にするのでしょうか。
一つは、経験した出来事や直面した場面を振り返り、次につなげるためです。
これは単純に反省や分析といったことにとどまらず、自分に起こったことの意味や理由を解釈して論理的に理解し、自分なりに納得する内的作業、つまり内省です。
たとえば忙しく働いていて、体調を壊して入院したとき、「これは休息しろということなんだろうな」と意味づけすることで、仕事に後れを取ってしまう焦りや、会社に迷惑をかけるという罪悪感を和らげようとするのはよく聞く話だと思います。
あるいはリストラに遭ったり、大好きな人との別れに直面したりしても、「自分はこの会社に合わなかっただけで、ほかの場所で価値を出せということだ」「ほかにもっと良い人で巡り合うための別れなんだろう」などと意味づけすると、苦しみも和らぎ、人生へのモチベーション復活に貢献してくれます。
そんなふうに前向きな意味づけができる思考体系を獲得していれば、望ましくない状況に遭遇しても、心が折れず乗り越えることができます。
このように内省の時間を持ち、前向きな意味づけができているからこそ、富裕層の多くはメンタルが強いのです。
■「経営者は孤独」の本当の意味
「経営者は孤独」という言葉も、それはネガティブな意味ではなく、すべての主導権を自分が握っている状態を指しています。
自分の社会的責任をすべてその身に負って経営しているわけだから、周囲の意見は参考にしつつも、最後は自分自身が決める。周りが「やめとけよ」「ムリだよ」「無謀だよ」と言っても関係ない。自分が「やりたい」「行ける」と判断したら、誰にも止めることはできない。
特に一代でのしあがった中小企業経営者の多くは、誰にも相談しないし他人の話を聞かない傾向があります。
経営トップは、その事業において最も優れた発想力や判断力を持っているからこそ、その組織のトップたりうるわけです。つまりその組織内には、自分の考えを上回る意見を持つ人がほとんどいないからです。
また、自分だけの意志で決めるからこそ、そこに「覚悟」が伴い、責任感やモチベーションを強く持つことができます。
誰にも相談する必要がなければ、意思決定も行動も速くなる。特にベンチャー企業が機動性に富んでいるのは、組織や階層の問題だけでなく、そういうところにも理由があります。
つまり「経営者は孤独」というのは、最終責任を負うのは経営者ただ一人であり、その覚悟があることなのです。
たとえばマイクロソフト王国を築いたビル・ゲイツ氏でさえ、年に2週間のぼっち時間を持つという話は有名です。彼もやはり、ひとり考える時間を大切にし、そこでじっくりと経営戦略を考えるのでしょう。
■孤独は創造力の源泉である
富裕層が孤独を好むもう一つの理由は、クリエイティブなアウトプットを生み出すためです。
インターネットの普及やメディアの多様化によって、こんなに情報量が増えたにも関わらず、なぜクリエイティブなアウトプットができる人と、そうでない人がいるのか。
結局、情報や知識を得ること単体では価値を持たせることはできず、それをどう編集・加工していくかが重要だということがわかります。
そしてそれには、ひとりになる時間が必要です。他人が入り込むとそこで思考が中断されますが、ひとりでいれば、誰にも邪魔されず、得た情報をもとに黙々と分析したり自分のイメージを膨らませたりすることができるからです。クリエイティブ人材は、そうやって孤独の中からアウトプットを生み出すのです。
たとえばスパイダーマン、超人ハルク、Xメンなどのアメリカン・ヒーローを生み出してきた天才スタン・リー氏はこう言います。
「私にとって、他人とは知的好奇心を刺激し、たのしませてくれるものなんだ。だから多くの人とかかわることは、私にとってとても必要なこと。でもその刺激は、そのままでは形にならずに流れていくだけ。その刺激が何かを生み出すためには、ひとりにならなければならないんだ」
■外からの刺激だけではアイデアに発展はない
アイデアの原石を取り入れるには、確かに外部からの刺激が必要ですが、アイデアを発展させるためには、他人と共有されないひとりの時間が必要ということです。
彼が言うように、外界からの刺激で何かをひらめいたとしても、それをいったん自分に引き寄せ、自分の中で加工していく必要がある。他人とのディスカッションで良いアイデアが出たとしても、自分の感性で練りこんでいく必要があるのです。
そういえば、『孤独の発明』を書いたポール・オースターは、「孤独が人間の全能力を引き出す」と述べていますし、『ローマ帝国衰亡史』を書いたイギリスの歴史学者ギボンも「孤独は天才の学校である」とも述べています。
そう考えると、孤独を恐れる必要などまったくなく、むしろ積極的にひとりの時間を楽しみたいものです。
----------
午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。大学卒業後、東京都内の会計事務所にて企業の税務・会計支援業務に従事。大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。『捨てるべき40の「悪い」習慣』『「いい人」をやめれば、人生はうまくいく』(ともに日本実業出版社)など著書多数。
----------
(米国公認会計士 午堂 登紀雄 写真=iStock.com)