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ディーゼルエンジンでも0-100km/h加速は7.7秒

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

フォード・フォーカスの高性能グレードがSTシリーズ。2.0Lのエコブルー・ディーゼルエンジンを、ハッチバックとエステートでも選択できる。

今回取り上げるのはステーションワゴンのエステートで、フォーカスの中では最もパワフルなディーゼルエンジンを搭載したモデル。だが、2.3LガソリンのSTエコブーストが発生させる280psと比較すると、だいぶ大人しいスペックではある。

フォード・フォーカスSTエステート2.0 エコブルー

また、エコブーストを搭載したクルマでは選択できる7速ATは、エコブルーでは選択できず、組み合わされるのは6速MTのみ。車重も42kgもかさむから、パフォーマンスの面でもかなわない。フォードによれば、0-100km/h加速に要する時間は7.7秒だとしており、決して遅いとはいえないものの、エコブーストが5.8秒でこなすことを考えると、その差は明らかだ。

サスペンションは、フォーカスSTエステートに採用されるのは通常のパッシブダンパー。だがオプションでアクティブ・ダンパーの選択も可能。ちなみにハッチバックではアダプティブ・ダンパーが標準装備となっている。ディーゼルエンジンを選ぶと、知的な電子制御リミテッド・スリップデフも付いてこない。

そのかわり経済性ではエコブーストより優れている。フォードによる燃費は20.7km/Lとされており、価格も3万595ポンド(397万円)。エコブーストより2500ポンド(32万円)ほど安価だ。

急斜面でも余裕の低回転域でのトルク

ディーゼルエンジンのエコブルーを搭載したクルマが、ガソリンエンジン版と比較して動的に鈍く感じられることは、スペックを見比べても明らかではある。しかし、一般的なディーゼルエンジンを搭載したエステートと比較すれば、充分に優れた評価を得る内容となっている。

エグゾーストノートの重厚な響きが、エコブルーエンジンの魅力を引き立ててくれる。ガソリンエンジンよりも大きく重たいユニットがボンネットの中に収まっていることを、いっとき忘れさせてくれるだろう。エコブーストと比較すると最大トルクもやや細く、42.7kg-mに対して40.7kg-mなのだが、発生回転数は低く2000rpmから。回さずとも悠々とクルマを前進させてくれる。

フォード・フォーカスSTエステート2.0 エコブルー

レブリミットは5000rpmに設定されているが、そこまで積極的には回りたがらない雰囲気で、ノイズもかなり大きくなる。中回転域の太いトルクを生かして走らせるのが、最も幸せを感じられそうだ。今回のテストコースは南フランスのニース付近で、急斜面の続くエリアながら、エコブルーは4速や5速に入れたまま2000rpm以下の回転数でも難なく登っていくたくましさだった。

反面、スロットルレスポンスはエコブーストと比較すると明らかにダル。スポーツモードを選択しても、大きな変化はない。42kgの増えた重量のすべては基本的に前輪に乗っかっているため、電子制御デフなしでは潤沢なパワーを前輪にかけられない様子。一気に加速させてテールを軽快に追従させる、ということも難しい。

グリップレベルやハンドリングは良好

だがグリップレベルは充分に高く、ハンドリングのバランスも良好。スロットルを少し戻して、コーナリングラインを内側に絞っていく振る舞いは気持ちいい。エンジンも回転数を上げていくとうるさいものの、洗練性という面では優れている。

意外にもパッシブダンパーの方が、アダプティブダンパーよりも荒れた路面での乗り心地の悪化は少ない。反面、高速域でのボディ制御はやや及ばないようだ。それでも、大きなエステートボディだということを考えれば、充分評価できる落ち着きを得ている。

フォード・フォーカスSTエステート2.0 エコブルー

ペダルレイアウトは、アクセルとブレーキの距離が非常に離れており、せっかくのマニュアル・トランスミッションながら、ヒール&トウでの変速向きではない。オプションでパフォーマンス・パッケージを選択すれば、自動で回転数を合わせてくれるレブマッチング機能も付けられるが、たまには自身の手足で決めるのも悪くない。電子アシスト付きのブレーキの踏力も、踏み込んだ中間域での感覚に違和感がある。踏みごたえは充分あるものの、フィードバックが薄いようだ。

パフォーマンスの面ではガソリンエンジン版には及ばないながら、アピアランスは充分に「ST」をしている。ボディキットのセンスもいいし、控えめなリアスポイラーや19インチ・アルミホイールのデザインも良い。

エステートボディの大容量に燃費をプラス

インテリアでも、レブカウンターのレッドゾーンが「5」から始まることを除けば、基本的にディーゼルエンジンだからといって違いはない。インフォテイメント・システムは8インチのタッチモニター式で、バング&オルフセン製のプレミアム・オーディオも標準装備。

走りにこだわるドライバーには嬉しい、素晴らしくサポート製に優れた、レザー張りのレカロシートも付いてくる。またフォーカス・エステートらしい、充分なリアシートの空間と大きなラゲッジスペースは、ハッチバックにはない特権でもある。

フォード・フォーカスSTエステート2.0 エコブルー

ディーゼルエンジンを搭載したフォーカスSTエステート・エコブルーのライバルといえば、フォルクスワーゲン・ゴルフGTDエステートくらい。かなり個性的なパッケージングだ。ゴルフの方は7.5代目といえるフェイスリフトを受け、選択できるトランスミッションはデュアルクラッチATのみとなっている。ブランドも含めて選択動機となる違いだが、パフォーマンス・スペックや価格で比べると、両車は非常に近似している点も面白い。

新しいエコブルー・ディーゼルは、先代のディーゼル版ほどの人気は出ないだろうとフォードも予測している。しかし、長距離を高速道路で移動するような使い方の場合、エコブーストよりも燃費と低回転域でのトルクで優れるエコブルーの方が、懸命な選択ではあるともいえるだろう。

フォード・フォーカスSTエステート2.0 エコブルーのスペック

価格:3万595ポンド(397万円)
全長:4668mm
全幅:1848mm
全高:1492mm
最高速度:217km/h
0-100km/h加速:7.7秒
燃費:20.7km/L
CO2排出量:125g/km
乾燥重量:1585kg
パワートレイン:直列4気筒1996ccターボ
使用燃料:軽油
最高出力:189ps/3500rpm
最大トルク:40.7kg-m/2000rpm
ギアボックス:6速マニュアル