悪気はなくても……

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 うっかり言ってしまう“失言”。ご本人に悪気はないのでしょうが、発したそのひと言が命取り! お見合いを台無しにしてしまうことがあります。 

 婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合いの現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は「お見合いの席で、地雷を踏んだ男たち」です。

【写真】辞めた人も辞めない人も…「失言3兄弟」

「そんなに言ってくれるんじゃ、会ってみるか」

 聡子さん(38歳、仮名)が、恒雄さん(42歳、仮名)とお見合いを終え、「お断りでお願いします」と連絡を入れてきました。お見合いを終えてすぐのお断りだったので何があったのかを聞くと、とても憤慨したような口調で言いました。

「お目にかかって開口一番におっしゃったのが、『僕は、あなたのお申し込みを一度お断りしているんですよ。でも、また申し込んでくれた。そんなに言ってくれるんじゃ、ま、会ってみるかと、お見合いを承諾したんです』と。私、お見合い申し込んだことすら忘れていましたけどね(苦笑)」

 結婚相談所において、お見合いの申し込みを一度に20人、30人にするのは、当たり前のことです。これだけお申し込みをしても、受諾されるのは、1人か2人。それが現状です。なぜかといえば、好条件の方には人気が集中するので、なかなか受けてもらえないのです。

 20人、30人といっぺんに申し込んでいれば、誰に申し込んだかはいちいち覚えていられません。また、一度お断りされた方にまた申し込んでしまうこともままあります。

 しかし、恒雄さんは、断ったのにまた申し込んできたのは、自分が相当気に入られていると思ったのでしょう。

 さらに聡子さんは、続けました。

「“オレに見合いを2回申し込んだ女”だと思っていたからなのか、とにかく会話が上から目線の物言いでした。それで、『あなたは、プロフィールが大卒となっていますが、大学はどちらだったんですか?』と聞いてきたんですね。それで、私が大学名を言ったら急にひるんで、言葉遣いが変わったんです」

 実は聡子さん、超難関の誰もが知る有名な国立大学を卒業していていたのです。男性のプロフィールにも卒業大学名が記されていたのですが、そこよりもはるかに偏差値の高い大学でした。

「私は結婚するなら、見た目よりもお人柄だと思って婚活をしています。ですが、今回の方はなんだか最初の10分で、お人柄が見えたような気がしました」

 この2人、もちろん交際にはなりませんでした。

「軽くウォーミングアップです」

 先日、洋子さん(45歳、仮名)が、達也さん(45歳、仮名)とお見合いをしました。2人とも私の会員で入会したばかり。同い年だし、きっといいご縁になるのではないかと、私は思っていました。

 ところが、お見合を終えて、洋子さんから、『今回のお見合いはお断りでお願いします』とLINEが入ってきました。お見合いがスタートしたのが14時、お断りが入ってきたのが15時。お見合い後すぐのお断りは、不愉快な思いをしたときです。いったい何があったのだろうと電話を入れました。

 すると、洋子さんが言いました。

「私が、『これまでお見合い以外の婚活をしたことはあるんですか?』とお聞きしたんですね。そうしたら、『仕事ばかりしてきて、お恥ずかしながらこの年になってしまいました。婚活は生まれて初めてするんですよ』とおっしゃったんです。そこまではよかったんですよ。その次に何を言うかと思ったら、『これが生まれて初めてのお見合いなので、まあ軽くウォーミングアップのつもりで今日は来ました』と。じゃあ、私は練習台ですか?」

 ああ、なんたる失言! 私は洋子さんの電話を切ったあとに、すぐに達也さんに電話をしました。

「即行のお断りが来たわよ」と私が言うと、「僕、何かやらかしましたか?」と、とても不安そうに聞いてきたので、「軽くウォーミングアップと言ったでしょう?」と言うと、「えっ!?」と一瞬沈黙したあと、力ない声で続けました。

「僕、そんなこと言ってしまったのか? あ、言ったかもしれません」

 無意識のうちに使った言葉なのでしょうが、それが地雷となりました。

「恋愛は、とっかえひっかえだったんですね」

「まあ、悪気はなかったと思うのですが」

 お見合いを終えた薫さん(36歳、仮名)が、苦笑いをしながら連絡をしてきました。お付き合いに入っていた自営業の宗太郎さん(41歳、仮名)と、3回目のデートを終えたときのことです。

「食事をしながら、“これまでどんな恋愛をしてきたか”という話になったんです。宗太郎さんは、30代前半のときに、5年くらいお付き合いしていた女性がいたそうです。『でも、僕の仕事が安定をしていなかったので、なかなか結婚が言い出せずにいたら、愛想をつかされてフラレました』と、ご自身の恋愛経験の話をされました」

 そして、宗太郎さんは、薫さんの過去の恋愛を聞いてきたのです。薫さんは、言いました。

「私は、これまで1人の方と長く続いたことがなくて。最長でも1年くらいのお付き合いでした。婚活を始めてからも、1度か2度、お目にかかると交際終了になってしまう方が多くて」

 この薫さんの言葉に、宗太郎さんが言ったのです。

「そうですか。恋愛は、とっかえひっかえだったのですね」

 薫さんは、私に言いました。

「とっかえひっかえって、何だか私が男性から男性へと渡り歩いてきたみたいじゃないですか! 私は、お付き合いをする男性とは真剣に向き合ってきましたし、婚活を始めてからは、なおさらその気持ちが強くなりました」

 真剣になりすぎるからこそ、相手をジャッジする目が厳しくなって交際が長く続かなかったのかもしれません。きまじめな薫さんにとって、“とっかえひっかえ”と言われたことは、憤慨の極み。まさに地雷でした。

言ってしまった言葉は取り消せないから

 昨今、政治家の失言もよくニュースになっています。身内が集まるパーティーなどで気が緩んでいて、ご本人はまったく悪気がなくポロリと言ってしまった。その失言のために議員辞職に追い込まれた方もいらっしゃいます。

 婚活シーンでも、ご本人にはまったく悪気なく話した言葉がアダとなり、命取りになることもあります。

 言ってしまった言葉は取り消せません。失言を避けるには、どうしたらよいのか。まずは、お見合いの席では、“お相手への共感”を心がける。そして、婚活シーンだけでなく、その言葉を使うことで相手がどう感じるかを、普段から気にかけながら生活する。それだけでも失言は減ると思います。ただ、完璧な会話ができる人なんていませんから、失言したことに気づいたら、その場ですぐに謝ることも大事ですね。

 一方で、お相手の失言にいちいち目くじらを立てていないで、笑い飛ばせる器の大きさを持つことも大事です。小さなことに腹を立てている人りも、おおらかでなんでも笑い飛ばせる人に、よいご縁は巡ってくるのですよ。

鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/