磯村勇斗 撮影/吉岡竜紀

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 ここ1〜2年の快進撃が止まらない。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』のヒロイン・みね子と結婚する秀俊役、『今日から俺は!!』の最凶ヤンキー・相良役、『きのう何食べた?』の“ジルベール”こと航役と、作品ごとに印象を残して大ブレイク中の磯村勇斗さん。

【写真】全身黒のスタイルに甘いフェイスの磯村さん

 彼が、小劇場界の異才・根本宗子さんの指名により、ミュージカルに初挑戦する。アイドルグループGANG PARADE(通称ギャンパレ)の楽曲を使い、ギャンパレの10人が歌舞伎町の風俗嬢を、磯村さんがナンバーワン・ホストの聖夜を演じる『プレイハウス』だ。

実はホストを体験してみたい

「ユニークな作品になると思います。ギャンパレさんたちが風俗嬢を演じて、風俗店“プレイハウス”のステージでパフォーマンスをするんですが、その裏側のバックステージで交わされる会話がすごく面白くて。“風俗嬢ってこんなふうに話してるのかな?”みたいなリアリティーがあるんです(笑)。

 そこに、僕の演じるホストの聖夜が、パフォーマンスを見に来る。聖夜は歌舞伎町のナンバーワン・ホストなんですけど、風俗嬢にはあまり興味がない。

 それには彼のバックボーンが影響していて、ホストとしてのイケイケな感じの姿からは想像できないような秘密を、裏側では抱えている人間なんです」

 イケイケの聖夜を演じる磯村さんも、いまや俳優として勢いに乗り、イケイケなブレイク状態に。

「どうですかねぇ(笑)。自分ではそんなふうに感じてはいないんです。でもホストという職業は、僕自身すごく興味があって“体験してみたいな”なんて考えていた時期もありましたので、突き詰めていきたい。リアルにやるわけにはいきませんけど(笑)。

 でも“ノリノリでナンバーワンの称号を背負っている”感というものは出していかなければ。まあ聖夜は“イエーイ、俺がナンバーワンだぜぇ!”ってキャラでもないんですけどね。自分からあまりグイグイ行くタイプではない、ホストのイメージとは違う顔を持っているんです」

 磯村さん自身が聖夜に共感できるところは?

「女性に甘える仕草などには“僕も似たところがあるな”と思いますね。僕は、女性にはすごく甘えたい人なんです。

 だから根本さんが僕の裏側を見たかのように描いているな、って(笑)。あと、人間の表側と裏側が描かれていて、その人間っぽさにも共感できます。僕が心に闇を抱えているってわけじゃないんですが(笑)、誰しもそういうところは持っていると思うんですね。

 恋愛にしても、風俗嬢とホストという関係性があるので、探り探りだったり、疑っていたり。一方通行なのか、両思いなのか。複雑なところがあって楽しみです」

俳優のスタートは小劇場

 18歳で俳優を目指して沼津から上京した磯村さんにとって、俳優としてのスタートは舞台だった。

「知り合いのつてをたどって、小劇場の舞台を転々としたのが最初です。小劇場とはいえお客さんからお金をいただいて芝居をする。

 どんなにお客さんが少なかったとしても、見てくださる方がいるならいいパフォーマンスを届けなきゃ、という意識は大事にしていました。

 いまも自分の仕事への取り組み方というのは、やはり小劇場で培ったものが自分の中に染みこんでいるからこそ、かな。貪欲に向かい合う姿勢はそのころから変わらないですね」

 演じることが楽しい、充実していると思うのはどういうとき?

「“楽しいな”と思うのは、芝居が終わった後かもしれない。やっているときは悩むし、苦しいんです。でも一生懸命、向き合った後に光が感じられたとき、いちばん楽しいと思いますね。

 悩んだ末に“できた”と思えたら、開放感に満たされるというか。例えば『きのう何食べた?』でお三方(内野聖陽さん、西島秀俊さん、山本耕史さん)とお芝居をしたとき、みなさんと意見交換して、本番では集中しつつ“自分のキャラも出さなきゃ”と思いながら演じて、最後の最後にふっと力が抜ける瞬間がありました。

 そのとき“ああ楽しかったな、この現場。作品作りに参加できてよかったな”って初めて実感できたんです。舞台もやっぱり、終わった後に感じるタイプですね。公演期間中は必死で、一切、楽しいとは思いません。

 それに役としてそこにいるわけですから、演技に手ごたえを感じるなんていうのは磯村勇斗が出てきちゃってるということで、ダメなんですよ」

 これだけ上り調子でも、奢らず、謙虚で、ストイック。自分で思う“磯村勇斗の魅力”とは? と聞くと、またまた役者魂あふれる言葉が返ってきた。

「いや、僕は、魅力がないと思いますねえ(笑)。逆に、魅力がないからいろんな役ができると思っていて。

 自分はゼロで、真っ白でいたいと思っているんです。役に染まりたいから。でも染まる前の真っ白い状態って、特に魅力がないんですよね。真っ白い壁を見ていてもつまらないでしょ? 

 そこに色が加わるから魅力ができあがる。例えば、無の自分に役の“ジルベール”が入ってくると、魅力が引き立つというか。そういうことでいいんじゃないかな。役で魅力を見せることができたら、それが僕の生きがいなんだと思います」

(取材・文/若林ゆり 撮影/吉岡竜紀 ヘアメイク/佐藤友勝 スタイリング/齋藤良介)

PARCOプロデュース2019『プレイハウス』

 劇団・月刊「根本宗子」の主宰にして劇作家・演出家・女優の根本宗子が、10人組の異色アイドルグループGANG PARADE(通称ギャンパレ)と磯村勇斗のW主演で送る新感覚ミュージカル。ギャンパレの曲をミュージカル・ナンバーとして使い、歌舞伎町に生きる風俗嬢たち、ホストの姿をポップに綴っていく。8月25日〜9月1日、東京芸術劇場 プレイハウス、9月28日、大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。詳しい情報は公式サイト(http://www.parco-play.com/s/program/playhouse/)へ。

いそむら・はやと ●1992年9月11日、静岡県生まれ。2015年、『仮面ライダーゴースト』の仮面ライダーネクロム/アラン役で注目され、2017年にNHK連続テレビ小説『ひよっこ』でヒロインの結婚相手、前田秀俊役に抜擢される。さらにドラマ『今日から俺は!!』の相良役、『きのう何食べた?』の“ジルベール”航役などでブレイク。映画の出演作には『ういらぶ。』『春待つ僕ら』など。現在、TXドラマ『サ道』、KTV『TWO WEEKS』に出演中。