東京23区内の鉄道路線網が複雑なのはご存じの通り。電車でスマートに移動するなら「乗り換え」をマスターしましょう。「定番」を除く、意外と便利な乗り換え駅を紹介します。

東京の「乗り換え」をマスター!

 東京都区内は鉄道路線が入り乱れています。目的地へたどり着くには乗り換えが必要なルートも多く、慣れるまでは戸惑うばかり。逆に、乗り換えを熟知すれば東京暮らしの上級者と胸を張れそうです。そこで「東京乗り換えマスター」を志すために知っておきたい「乗り換えやすい駅」を紹介します。


銀座線と丸ノ内線が同一ホームで乗り換えられる東京メトロの赤坂見附駅(2016年9月、乗りものニュース編集部撮影)。

 ただし、誰もが知っている定番パターンは除きます。JR山手線と京浜東北線の田町〜田端間のように、方向別複々線(同じ方向に進む線路が隣同士に並ぶ)で同一ホーム乗り換えが続く区間、小田急線と東京メトロ千代田線の代々木上原駅や、東急東横線とかつて直通していた東京メトロ日比谷線の中目黒駅など、相互直通運転の境界駅は便利で当たり前です。そこで今回、以下のような条件で駅を選びました。

・東京23区内
・別路線で同一ホームの乗り換えが可能
・ただし方向別複々線は除く
・相互直通運転の境界を除く
・ホームが近く、階段・エスカレーターの少ない移動で済む
・ただし改札外乗り換えは除く

 これらの条件に当てはまる駅のうち、特にオススメの駅は次の10駅です。

乗り換えやすいJRの駅

御茶ノ水駅(JR中央線快速/中央線・総武線各駅停車)

 中央線快速と中央線・総武線各駅停車は御茶ノ水〜三鷹間で並行しています。しかし、路線別複々線(通常の複線がふたつ並ぶ)であるため、快速と各駅停車の乗り換えは連絡通路を上り下りしなくてはなりません。ただし唯一、御茶ノ水駅だけは上りホームと下りホームの方向がそろっています。

 中央線快速の東京方面と、中央線・総武線各駅停車の千葉方面が同一ホームで乗り換えられます。逆方向で、東京から水道橋〜市ケ谷間、信濃町〜代々木間の各駅に行く場合も便利。中央線・総武線の沿線に住む人が最初に覚えるべき乗り換え駅のひとつです。

新宿駅(JR山手線/中央線・総武線各駅停車)

 山手線外回り(池袋・上野方面)と中央線・総武線各駅停車の中野・三鷹方面、山手線内回り(渋谷・品川方面)と中央線・総武線各駅停車の御茶ノ水・秋葉原方面が、それぞれ同一ホームで乗り換えられます。

 このおかげで、中野〜渋谷間、池袋〜四ツ谷間などの移動が苦になりません。山手線沿線に通勤する人にとっては、都内で住まいを選ぶ範囲が広がりそうです。なお、御茶ノ水や三鷹など、階段経由で中央線快速に乗り換える方が早く着く場合もあります。

代々木駅(JR山手線内回り/中央線・総武線各駅停車)

 山手線と中央線・総武線各駅停車の乗り換えは新宿駅が便利です。しかし、新宿で同一ホーム乗り換えとならない組み合わせのうち、山手線内回り(渋谷・品川方面)と中央線・総武線各駅停車の中野・三鷹方面行きは、隣の代々木駅で同一ホーム乗り換えが可能です。中央線・総武線各駅停車の御茶ノ水〜千駄ケ谷間などから山手線の南側の駅へ向かう場合は代々木乗り換えが便利。ただし、帰り道は階段通路経由となります。惜しい。

乗り換えやすい東京メトロの駅

赤坂見附駅(東京メトロ銀座線/丸ノ内線)

 東京メトロ銀座線と丸ノ内線は、乗り換え可能な駅が3つあります。赤坂見附、溜池山王(丸ノ内線は国会議事堂前)、銀座です。このうち、最も乗り換えが便利な駅は赤坂見附です。地下の2階建て構造で、ふたつあるホームの両側に銀座線と丸ノ内線が発着します。地下1階は銀座線の渋谷方面と丸ノ内線の新宿方面、地下2階は銀座線の銀座・上野方面と丸ノ内線の大手町・池袋方面です。

 現在では同一ホーム乗り換えは珍しくありません。しかし、戦前に銀座線が開業した時点で同一ホーム乗り換え構造となっていた赤坂見附駅は、先見の明があったといえそうです。これ以降、新線が開業するたびに、すべてこの乗り換え方式にしてくれたら、東京の地下鉄はもっと便利になっていたでしょうね。

表参道駅(東京メトロ銀座線/半蔵門線)

 東京メトロの銀座線と半蔵門線は、渋谷駅から青山一丁目駅まで並行しています。銀座線の赤坂見附駅と半蔵門線の永田町駅も少し離れていますが乗り換え駅の扱いです。並行しているのは、元々半蔵門線の建設理由のひとつに、銀座線の混雑解消があったためです。表参道駅は双方の乗り換えに便宜を図るため、渋谷方面、都心方面をそれぞれ同一ホームにしました。渋谷からだと、地上3階の銀座線、または地下3階の半蔵門線の好きなほうから電車に乗り、表参道の同じホームで必要に応じて乗り換えて都心方面へ向かいます。

 山手線で渋谷駅に着いて地下鉄に乗り換える場合は、目的地が銀座線の駅でも、階段を上って銀座線に乗るより、階段を下りて半蔵門線に乗る方が楽ですね。また、都心方面から渋谷に行く場合も、山手線や京王井の頭線に乗り換える場合は、銀座線で着けば階段を下りるだけです。

 なお、コンコース階の下には東京メトロ千代田線のホームがあります。銀座線・半蔵門線から近くて便利です。

 ところで表参道駅は、銀座線・半蔵門線から地上に出るときも、いったん階段を下りる必要があります。上に行くために下りる。銀座線・半蔵門線のホームが浅く、真上に広い青山通りがあり、半蔵門線の線路の下を通り抜けないと出入り口に行けないからです。利用者としては納得しがたい構造です。

壁がなくなり対面乗り換えが可能に

九段下駅(都営新宿線新宿方面/東京メトロ半蔵門線水天宮前方面)

 JR代々木駅と似た構造で、隣り合わせた路線の片側同士が同じホームになっています。都営新宿線の本八幡〜小川町間から乗車し、半蔵門線の大手町〜押上方面に乗り換える場合に便利です。あるいは半蔵門線の渋谷〜半蔵門間から乗った人が、新宿線の市ヶ谷〜新宿方面に乗り換える場合も便利です。もっとも、方向的には逆戻りのようで、さらに事業者が異なるため運賃が割高です。半蔵門線は他の東京メトロ線との接続が便利ですし、都営新宿線とは住吉でも乗り換え可能。活用できる人は少ないかもしれません。

 この乗り換え可能なホームは、かつて壁で隔てられており、改札内で乗り換えできない構造でした。しかし、半蔵門線のホームは新宿線の真横に造られ、ホームは共用可能な形で設計されていました。事業者が異なるという理由で壁が造られていたわけですが、地下鉄の利用促進、バリアフリーなどの観点から撤去されました。「ベルリンの壁」みたいですね。

 乗り換えのメリットは少ないかもしれませんが、壁を撤去して双方の改札口が共用化されたため、駅の出入りが便利になりました。このメリットの方が大きかったといえます。

大岡山駅(東急大井町線/目黒線)

 東急大井町線の大井町方面と目黒線の目黒方面、大井町線の二子玉川方面と目黒線の日吉方面が同一ホームで乗り換え可能です。最初の線路配置は大井町線と、目黒線の前身の目蒲線が路線別に並ぶ構造でした。しかし、東横線の混雑を緩和させるため、目蒲線の目黒〜多摩川間を目黒線とし、田園調布から東横線に沿うルートに変更されました。多摩川〜蒲田間は東急多摩川線として分離しました。

 目黒線開業の準備として大岡山駅が地下化され、現在のように同一ホーム乗り換え型に変わりました。つまり、東横線の横浜方面から、渋谷・目黒・大井町へと乗客を分散させる意図がありました。その後、東急田園都市線の混雑緩和のため、大井町線の溝の口延伸、急行運転などで旅客を分散させる施策が取られました。その結果、新しい大岡山駅は、田園都市線から目黒方面への旅客分散にも貢献しています。

日比谷駅(東京メトロ日比谷線/千代田線)

 東京メトロ日比谷線と千代田線は霞ケ関駅でも乗り換え可能ですが、隣の日比谷駅のほうが楽です。日比谷線は中目黒寄りの車両に乗ってください。階段を上がって左に曲がり、少し通路を歩いて、階段を上がったところが千代田線ホームです。

 千代田線は綾瀬寄りの車両に乗ってください。階段を下り、通路を歩いて右に曲がって階段を下りると日比谷線ホームです。日比谷線は方向によりホームが異なる(相対式ホーム)ため案内表示に注意しましょう。霞ケ関駅は、どの路線に乗っても、乗り換えのために階段でコンコース階へ上って下りるルートになります。

 なお、日比谷駅は都営三田線も乗り換え可能です。長い階段を歩きます。有楽町線の有楽町駅は都営三田線と近いですが、日比谷線、千代田線とは離れています。東京メトロ同士の方が遠くなっており、駅名が違う理由も推して知るべし、です。

大手町駅も乗り換えやすいルートが

日本橋駅(東京メトロ銀座線渋谷方面/東西線)

 銀座線と東西線は丁字に交差する位置関係です。地下1階がコンコース、地下2階が銀座線、地下3階が東西線です。銀座線は相対式ホームで、渋谷行きホームから東西線に向かう場合は階段を下りるだけです。逆向きの浅草行きホームからも下りるだけだと良いのですが、こちらはなぜか1階コンコースに上がり、銀座線の線路をまたいでから下りるルートです。ただし、銀座線はトンネルが小さいため階段は短く、エスカレーターも完備されているため、あまり苦にはならないと思います。

 日本橋駅は都営浅草線も通っています。東西線は近いですが、銀座線とは少し離れています。新橋駅でもの乗り換えが可能ですが、曲がり角が多いため、日本橋駅の方が分かりやすいでしょう。

大手町駅(東京メトロ丸ノ内線/半蔵門線)

 大手町駅は東京メトロ丸ノ内線、半蔵門線、千代田線、東西線、都営三田線が集まります。乗り換える路線の組み合わせによって、歩く距離が極端に異なり、便利か不便かで議論が起きやすい駅です。一般的には広すぎて不便な駅と評されていそうですが、実は便利な組み合わせもあります。半蔵門線と丸ノ内線、半蔵門線と千代田線です。

 丸ノ内線の池袋行きホームから半蔵門線ホームへはエスカレーター1本です。新宿方面行きホームからはエスカレーター2本を乗り継ぎます。千代田線へは、半蔵門線ホームの渋谷寄りからエスカレーター2本の乗り継ぎです。丸ノ内線と千代田線は半蔵門線のホームと同じ長さでコンコースを歩くことになります。

 東西線と都営三田線は上記3路線とは離れているため、乗り換え距離は長いです。また、東西線の大手町駅はJR東京駅の方が近くにあります。しかしこれで「大手町は東京駅に近い」と思い込むと、他の路線からは遠いので悲しくなります。なにしろ、丸ノ内線には大手町駅と東京駅の両方があります。半蔵門線の大手町駅からJR東京駅に行くために歩こうと思ってはいけません。丸ノ内線に乗り換えるべきです。丸ノ内線の東京駅はJR東京駅の中央地下改札口のそばにあります。

構内図と電子地図で調べよう

 以上が筆者(杉山淳一:鉄道ライター)がオススメする乗り換え駅です。

 多くの鉄道会社は駅構内図をウェブサイトで公開しています。しかし、自社線同士の位置関係は詳しくても、他社線へは通路のみの表示であったり、分かりやすくするために実際の位置関係と異なっていたり、方角も一定していません。事前に調べる場合はインターネットの地図も参照しましょう。「Google Maps」は地下鉄駅の位置関係が見やすく、「Yahoo!地図」は地下街を表示する機能があります。

【写真】千代田線と日比谷線が乗り換えやすい日比谷駅


東京メトロの日比谷駅は、千代田線と日比谷線のホームが近い(2018年12月、乗りものニュース編集部撮影)。