貴乃花親方引退騒動、あの「洗脳騒動」を取材した記者が見た「そっくりな部分」
貴乃花親方の退職騒動がいまだ決着を見せていない。一連の貴乃花親方の退職騒動を巡っては、解明されていないことも多く、全容を明かさない協会の対応に批判が集まっている。その一方で、貴乃花親方の関係者に対する配慮のなさや、周囲の声を聞き入れない頑なな態度もまた、世間の批判の対象となっている。
1995年から6年間、スポーツ紙の相撲担当として現役時代の貴乃花親方を取材してきたが、今回の騒動がどうしても洗脳騒動に重なって見える。
「引退したらいずれ理事長になれる存在だから」
のちに「貴乃花洗脳騒動」呼ばれる騒動は、1998年9月に勃発した。当時、実兄の若乃花とともに横綱を張っていた貴乃花が突如、「若乃花の相撲には基本がない。もう若乃花と話す必要はない」と痛烈に批判した。この発言がきっかけとなり、新聞、雑誌、ワイドショーを巻き込んでの一大騒動となった。
この騒動の影のフィクサーと言われていたのが、都内で整骨院を営む整体師だった。父であり師匠の故二子山親方の紹介で、兄とともに通院していた。この整体師は「脳内思考」という独自の精神論を持っており、治療中に若貴兄弟に持論を展開し、話題が精神論から宇宙論に及ぶこともあったという。
貴乃花の常軌を逸脱した発言に二子山親方はワイドショーの取材に「貴乃花は洗脳されている」と告白。父であり師匠でありながら貴乃花との関係が断絶状態であることも明かし、貴乃花が若乃花のことを「花田勝氏」と呼んでいたことものちに判明した。
二子山親方によると、整体師による洗脳が発覚する4年前からすでに兆候はあったという。4年間、二子山親方は洗脳の事実を隠してきたが、息子の将来を心配してついに事実を明らかにした。
「貴乃花は引退したらいずれ理事長になれる存在だから、親方になってから報道されると理事長になれないため膿は今出しておくべきだ」
いずれ日本相撲協会の理事長となり、角界を発展させてほしいとの親心。それを裏切る形で整体師との関係を続けてきた貴乃花。貴乃花の将来を思い、親身になって言葉を投げかけた二子山親方と、今回、協会に残るよう必死に説得にあたったというかつての同志・阿武松親方の姿が重なり合う。将来の理事長を信じていた「身内」の助言に貴乃花は聞く耳を持たず、我が道を歩んでいる。
メディアを通して一方的に発信
また、若乃花に対する批判の仕方も今回の協会批判と重なる。兄弟でありながら直接、面と向かって若乃花と話し合うことはせず、メッセージは常に一方的にメディアを通して発信。今回もまた、八角理事長(元横綱北勝海)などの協会幹部と直接話し合うことなく、何の前触れもなく一方的に退職会見を開いて、メディアを通じて協会を批判した。
洗脳騒動がきっかけとなり、花田家の家族関係は悪化し、貴乃花と若乃花に関してはいまだ断交状態だ。そして今回も貴乃花一門が消滅し、一門に所属していた親方衆はバラバラとなって新たな一門への加入が決まった。洗脳騒動当時、貴乃花は「孤高の横綱」と呼ばれていたが、一門からも協会からも孤立してしまった今、「孤高の親方」となってしまった。
洗脳騒動は、整体師と貴乃花の関係が悪化したことで一応の決着を見せたが、今回の退職騒動は、どこに着地点を見出すのだろうか。今のところまだ終わりは見えない。
(J-CASTニュース編集部 木村直樹)