イニエスタ不在の浦和戦は4失点で完敗を喫した【写真:Getty Images】

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監督交代によるショック療法を試みた神戸、イニエスタ不在の浦和戦で0-4と完敗して4連敗

 ヴィッセル神戸は23日のJ1 第27節、浦和レッズとのアウェー戦で0-4と大敗。

 前節終了後の監督交代による“ショック療法”も、即効性はなく4連敗を喫した。この日に元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタが欠場し、悪循環をピッチに生み出してしまった。

 神戸は新監督にフアン・マヌエル・リージョ氏を任命しているが、「就労環境が整うまでは、暫定体制で指揮」というクラブからの発表があったとおり、林健太郎暫定監督が指揮を執った。イニエスタは前節のガンバ大阪戦で負傷し、「今日まで様子を見て、無理する必要はないと。いないなかでの準備はしてきた」と、林監督が話した状況での欠場となった。

 3バックの浦和に対して、神戸も3バックをぶつけた。その狙いを林監督は「三田はサイドが不慣れだが、高橋と二人が重要という位置づけで送り出した。目指すものはボールを持つサッカーで、どうすれば浦和を相手にそうできるか。中盤で優位を取りたかった。右の高橋が縦に行くタイプなので、左の三田で落ち着かせたかった」と話した。

 しかし、そうしたサイドの狙い以上にイニエスタの不在が中央で響いた。その穴を埋めるかのように元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキをインサイドハーフで起用したが、最終ラインからのビルドアップに効果性がなく、仕方がないとばかりにポドルスキが最終ラインの手前まで下がって組み立てに力を割くばかりだった。時に「こうやってボールを動かすんだ」とレクチャーするかのように後方でのパス交換に入り、前線の迫力を著しく低下させた。


浦和目線でのポイントは? 「彼をどんどんゴールから遠ざけようという狙い」

 浦和の目線で見ても、MF長澤和輝が「彼が深い位置でボールを触るようになれば、僕らから見ればゴールから遠くなる。そうやって、彼をどんどんゴールから遠ざけようという狙いでプレーしていました」と話したように、まさに思う壺という状況だった。30メートルの距離だろうとゴールが見えれば弾丸シュートを撃ち抜くような選手が、セットプレーを併せてシュート1本のみだったことが、どれだけ攻撃の局面に絡めていないかを示している。

 それに加え、林監督の「目指すものはボールを持つサッカー」というコンセプトはグラウンダーに偏るパス回しに表れ、188センチのFWウェリントンと192センチのFW長沢駿を並べた2トップの長所と打ち消し合ってしまった。

 それでもイニエスタが中盤にいてポドルスキが前線に近いところでプレーできたならば、よりサイドも生かしやすくなり、攻め込んでのクロスから高さでゴールに迫れたのかもしれない。イニエスタという穴を埋めるための選手起用は、そのままチーム全体の不具合にまで発展した印象が強い。

 リーグ4連敗となった神戸は、勝ち点36のままで浦和に逆転されて9位に転落した。ポドルスキは「今まで(AFC)チャンピオンズリーグ(出場権)とばかり言ってきたけど、下の方も気をつけなければいけない。すごく難しい順位になっている。自分たちのいる位置を見直さないといけない」と話した。気が付けば、降格圏と勝ち点6差の状況となっている。

 この日、“イニエスタ効果”は、チケット完売での5万5689人が集まる大観衆のスタジアムに表れた。しかしピッチ上では、イニエスタ不在の“逆効果”ばかりが目に付く厳しい試合になっていた。


(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)