フィンランドのサウナ文化 後編
こんにちは、サウナイキタイ開発チームの@yukari37zです。前回に引き続き、フィンランドのサウナ文化を紹介します。この記事はフィンランドのサウナに関する記事を掲載しているウェブサイト「Saunologia.fi」から許可をいただいて翻訳しています。
フィンランドのサウナ文化 前編
いろいろな場面でサウナを使う
フィンランド人は、様々な目的でサウナを使います。治療や、食べ物や飲み物の用意のため以外にも、いろいろな目的でサウナを使います。例えば、ジムやスポーツ施設のある会社にあるサウナは、5分から10分の短い時間でちょっとだけサウナに立ち寄ることを意図しています。短い時間でも、フィンランド人にとってはサウナに入ったと言うのに十分です。
サウナはどんなところか
設備のととのったサウナ施設には更衣室があります。また、多くの公共サウナには、男女別の更衣室、シャワー室、サウナ室があります。男女でサウナ室の利用が日替わりの施設も少しだけあります。(ヘルシンキの歴史ある公共サウナ、ウルヨンカツなど)
インターネット上でよく見るサウナの写真のイメージがどんなものであれ、フィンランド人は裸でサウナに入ります。これはずっと昔からです。もしほかの人と裸でいるのに居心地が悪ければ、最近だと公共サウナやプライベートサウナでも水着を着用できるところもあります。しかし、男女別になっている公共サウナのほとんどは裸で入ります。サウナに併設されているプールも、サウナ室の空気中への塩素の蒸発を防ぐため、裸で入ることになっています。
服を脱いで、身体を洗ったら、サウナへ入りましょう。そこはフィンランドサウナの魅力が広がる場所です。
18世紀のフィンランドにおけるサウナの様子を描いた古典的なイラスト
フィンランドサウナの温度は様々です。サウナ室に入り、ベンチに登ると、だいたい55度から110度くらいになっているでしょう。ある程度湿度もあると思います。湿度と温度のあんばいで、体感温度が変わります。より熱いところほど、湿気は少ないでしょう。だいたい75度から90度なので、乾燥しているように感じることが多いと思います。
フィンランドサウナに正しい温度というのはありません。ドイツ人は、フィンランドサウナは90度くらいの高温であるべきと考えているようです。一方でフィンランド人自身は、何十年もの間、サウナの温度についてあれこれ考え続けています。1990年代半ばには、サウナ室の温度は90度から110度で、できるだけ乾燥させた状態で楽しむというのが一般的でした。この考え方は、フィンランド人からではなくドイツ人から生まれたようです。フィンランドのオーソドックスなスモークサウナは、だいたい50度から100度くらいです。スモークサウナの暖め方から考えると、これはもっともなことです。20世紀初頭に発明されたストーブ、1950年代に普及し始めた電気ストーブ、薪ストーブにより、サウナを一定の高い温度で保つことができるようになりました。これにより、サウナがより熱くて乾燥した場所になるという、わたしにとってはあまりうれしくない展開になりました。
下の図は、理想的なフィンランドサウナの温度と湿度の関係を示しています。
1971年のフィンランドサウナの初期のおすすめとされていた数値。Y軸が摂氏温度、X軸が絶対湿度を示す。斜めの線は相対湿度を示す。
C、Dが1980年から1990年代の集合住宅にあるサウナでの計測値。E、Fは1940年代のスモークサウナの研究での計測値。
ロウリュが作るサウナ
サウナは温度が全てではありません。フィンランドサウナにおいてとても大事なことは、蒸気を発生させることです。ストーブで熱した石に水をかけ、蒸気を発生させることをロウリュといいます。ロウリュは、フィンランドサウナを体験したことのある人が口を揃えて話す、サウナの魅力の一つです。サウナではみんなロウリュを心待ちにしています。
ロウリュは、フィンランドサウナがスチームサウナであるという意味ではありません。ロウリュの蒸気は、短い間だけ発生し、感じることができます。蒸気はずっと残っているわけではなく、必要になったらまたロウリュをして蒸気を発生させます。このように、フィンランドサウナにおけるスチームという単語には特別な意味があります。フィンランド人は、トルコのスチームサウナ(ハマム)とサウナを決して間違えません。
フィンランドではロウリュは必要不可欠なため、ロウリュを手助けするようなアクセサリーが人気。画像は通常のひしゃくとストーブの上に置く最近のアクセサリー。
フィンランドサウナの伝統において大切なのは、サウナに用意されているひしゃくとバケツに入った水で、だれでもロウリュができるということです。このシステムは、フィンランド人がだいたい2、3人でロウリュをするために、不思議なほどうまく機能します。このサウナデモクラシーで少し面白いのは、用意されているひしゃくは一つだけということです。何人かでロウリュをする時には、ロウリュをする前に、ロウリュをしてもいいかほかの人に尋ねるのがマナーです。これは、そこにいる人たちの体感温度が熱くなりすぎず、心地よくサウナを楽しむためです。
しかし、どれくらいロウリュをするか、どれくらい体感温度を上げるかについては人により好みがあります。物理的な観点からいうと、体感温度の上昇は、湿度が高くなることで露点温度が体温より高い温度まで上昇し、空気中の水分が高温のまま皮膚の表面に結露し、結露した高温水によりぴりぴりと熱く感じるために起こります。(そう、それは汗ではないのです。)この感覚は少しの間だけで、露点温度が元に戻ると、再び汗をかくようになります。
Saunologiaのサウナ浴の英語の紹介記事では、わたしが提案するサウナの入り方についてさらに詳しく紹介しています。
English sauna bathing instructions
フィンランドサウナはどこがちがうのか?
フィンランド語由来のサウナという単語は、世界中で広く認識されています。サウナという名のもとにいろいろな施設がありますが、フィンランド以外の場所にあるサウナが、いつでもフィンランドサウナであるとは限りません。
フィンランドサウナの詳しい構成要素については触れませんが、フィンランドサウナが他の文化にある熱気浴や、ヨーロッパでよく見られる似たような施設とどのようにちがっているかを説明します。
ローマとトルコの風呂(ハマム)は、温度が低いことと、相対的に湿度が高いという点でフィンランドサウナとの違いがあります。部屋は暖められていますが、熱源は見えない場所にあります。また、ロシアにある無数のサウナは、フィンランドサウナと一致する部分もありますが、バーニャの文化は明らかに異なります。バーニャとは、ロシア語でサウナを意味します。現代のバーニャは、フィンランドサウナよりも湿度が高く、またずっと温度が高い場合もあります。さらに、ウィスキングするためのスペースが備え付けられています。ロウリュも頻繁に行われます。
ロシアのサウナの様子−モスクワの伝説的なSundunyのバーニャの写真から
ヨーロッパ大陸のサウナ文化は、フィンランドサウナとの共通点も多く、ベンチがあったり、見える位置にストーブがあったりします。ドイツのサウナの主な違いは、ロウリュです。サウナへ行く人は自分でロウリュすることはなく、代わりにサウナマイスターと呼ばれるマスターがロウリュを行います。これは、アウフグースと呼ばれる行いの一部です。他のヨーロッパの国では、もしバケツとひしゃくが用意されていれば、フィンランドと同じようにロウリュができるでしょう。
全体的に見ると、フィンランドサウナは、サウナのゲスト自らがするロウリュにより発生した蒸気で作られる高湿度、高温の場所であるという点が特徴的です。サウナベンチは、サウナで天井に近い高い位置に座れるようにするために設置されています。一方で、儀式のようなものやウィスキングをするための場所というのは、設置されていないことが多いのです。
原文記事:https://saunologia.fi/in-english/finnish-sauna-essentials-part-1/
※saunologia.fiの運営者の方より、原文の日本語翻訳での掲載許可、画像の使用許可をいただいております。また、誤訳や不自然な表現は訳者の力不足であることを特記いたします。
saunologia.fiの管理者様より掲載許可をいただき、前編と後編に分けてフィンランドのサウナの文化について紹介しました。なぜフィンランドのサウナが人を惹きつけるのか、その理由やサウナの魅力を少しでも伝えることができたらうれしいです。また、世界には様々な熱気浴の文化がその土地や気候、暮らしに沿う形で存在していますが、それらの文化に目を向けることで見えてくる日本のサウナ施設の良さもあるのではないかと思います。
前編・後編と長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。