大谷翔平フィーバーに密着した米記者の結論は「我慢強く見守るべき」
3月第4週に発売された、アメリカのスポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』にエンゼルスの大谷翔平の特集記事が掲載された。同誌の西海岸バージョンの表紙にもマイク・トラウトとともに登場。伝統ある雑誌の開幕プレビューでフィーチャーされたことは、大谷が今季MLBの目玉選手のひとりであると認められた証拠である。
開幕4戦目に先発登板する予定の大谷
記事自体は、大谷だけでなく、多額を投資をしながらも低迷の続くエンゼルスというチーム全体にもスポットを当てた内容だ。勝てない場合にはファイヤーセール(大安売り=選手の大量放出のこと)でチームを作り直すのが昨今の流行になっている中、マイク・トラウトを擁するエンゼルスは果敢な補強を継続している。
今季は巨額投資の必要ない大谷が最新の目玉になり、ドジャースの陰に隠れてきた”LAのもうひとつのチーム”にとって勝負の年だ。記事の終盤では、同僚たちに温かく見守られながら、チーム内でアジャストメントを進める大谷の姿も描かれている。
そこで、この大谷ストーリーを記した『スポーツ・イラストレイテッド』誌のステファニー・エプスタイン記者に話を聞いてみた。間近で”大谷狂騒曲”を目撃した彼女の言葉からは、大谷の現状とエンゼルスの思惑のかすかなズレが伝わってきた。
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――『スポーツ・イラストレイテッド』の特集用にエンゼルスのキャンプを取材する中で、大谷翔平の印象はどうでしたか?
「私が滞在していた2月中は単独インタビューが許可されていなかったので、大谷との直接的なやりとりは限られたものになりました。そんな中でも、彼は極めて礼儀正しかった。こちらの言っていることがうまく伝わらなかったときも、(取材中は)常に目を合わせてくれるんです。サーカスのようなメディアへの対応には飽き飽きしている印象も受けましたが、私たちにも仕事があることを理解しており、毎日しっかりと話をしてくれました」
――大谷はうまくチームに溶け込めていましたか?
「チームメイトたちとの関係は良好ですね。エンゼルスの他の選手たちは『コミュニケーションが難しいのではないか』と心配していたようですが、水原一平通訳が夕食やウェイトルームにも同行していますし、会話は問題ないようです」
――プレシーズンのゲームでは、なかなかいい結果が出ませんでしたが。
「投手、打者の両面で苦しんでいましたね。多くのプレシーズンゲームは私がキャンプ地を去った後に行なわれたものなので直接見たわけではないですが、ここまでの結果が厳しいことは否定できません。
それでも、エンゼルスの関係者は『心配していない』と言い続け、防御率のような、私たちが調子を判断する基準で大谷を評価しているわけではないことを強調しています。彼がプレシーズンにもっと優れた成績を残していれば、誰もが安堵(あんど)できることは間違いありませんが」
――現実的に考えて、大谷は今季中にメジャーで活躍できると思いますか?
「アジャストメントが進むまでの、特に最初の数週間の結果は厳しくなるでしょうね。また、現状では打者より投手としてのほうが上のレベルであることもつけ加えておきたいです。打者としての準備の時間が不足している中で、コンディションを向上させていくのは簡単ではないと思います」
――適応の難しさに対して、大谷はどう対応していましたか? また、将来的な展望はどうでしょうか?
「大谷本人は、結果が出なくても動揺しているようには見えませんでした。打者としてはミスを減らし、同時に投手としては失投を減らせるようになるかがポイントになります。彼の能力自体は素晴らしい。打撃練習ではとてつもないパワーを披露していますし、投手として投げるスライダーは”不公平”と言ってもいいくらいの武器です。いずれ、圧倒的なプレーヤーになる可能性は十分にあります」
――アジャストには時間が必要ですから、マイナーで経験を積ませるのも悪いオプションではなかったように思えます。ビジネス面で考えても、※4月半ばまで待てば保有権が1年延ばせること、大谷昇格のゲームを”第2の開幕戦”として大々的に売り出せることなど、開幕マイナースタートはさまざまな意味で理にかなっていたように思えます。
※MLBでは、メジャー契約を結ぶ40人枠に登録された日数が172日で1年と換算し、6年でFA権を取得できる。2018年はシーズン開幕から終了まで187日間あるため、16日以上マイナーで過ごせば172日に届かず、チームは大谷の保有権を1年延ばすことができる
「まさにその通りですが、周囲の喧騒を考えると、チームが大谷をマイナーでじっくり育てるのは難しかったのでしょう。防御率2.50、打率.300くらいの数字を残さなければ大谷は”失敗”の烙印を押されるでしょうが、大谷が大変なことをやろうとしていることを忘れるべきではありません。
彼はまだ23歳なのです。同じ年齢の他の選手たちは、投げるか、打つか、そのどちらかしかやらないにも関わらず、まだほとんどがメジャーで活躍する準備ができていない。年齢と経験を重ねてスターになる選手はたくさんいますから、ファンは大谷のことも我慢強く見守る必要があるのですが……。その時間が与えられないのではないかという点は危惧(きぐ)しています」
――今季、まずまずの前評判で開幕を迎えるエンゼルスの、プレーオフ進出の可能性はどれくらいあると見ていますか?
「エンゼルスには間違いなくチャンスがあると思います。今年のチームには駒が揃っている。去年は先発投手7人のうち、6人が故障して長い期間を離脱しました。そのうちの半分でも健康を保つことができれば、エンゼルスはワイルドカードの2番手でプレーオフに出られると予想しています。そして、大谷が笑顔でいられることを願っています」
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