道路に敷かれた軌道の上を走る「路面電車」の路線は全国に存在するが、比較的西日本に多い印象だ。記者の地元広島は「広島電鉄」、お隣の岡山には「岡山電気軌道」が。さらに、向かいの四国には愛媛の「伊予鉄道」、高知の「とさでん交通」もある。

そんな中四国路面電車勢の一角をなすとさでんだが、2017年11月ごろからツイッター上などで、「家庭用エアコンを屋根に積んだ車両が存在する」という情報が見られるのだ。


路面電車に室外機は積まんでしょう普通(画像は通常の土佐電気鉄道200形電車, Yamaguchi Yoshiakiさん撮影, Wikimedia Commonsより

見間違いかと思いきや本当に積んでた

記者も子どものころからそれなりに路面電車を見てきた(乗ってもきた)。「ドイツ製の最新低床車両も悪くないけど、やっぱり木張りの車両がたまらないよなあ」くらいの感覚を持つ程度には、路面電車への思い入れもある。

そんな記者からすると、路面電車に家庭用室外機は積まないだろう、と常識的に考えてしまうのだが、ツイッターでは目撃談が挙がっていた。

とはいえ、いずれも目撃談のみ。単なる見間違いではないかと思っていたが、2018年3月16日、ついに画像を投稿したユーザーが現れた。

紛れもなく家庭用エアコンの室外機だ。誰かがうっかり置いてしまったという雰囲気ではないし、ビルの上から落ちてきたわけでもなさそうだ。本当にとさでんの冷房改造車なのか。Jタウンネットが3月16日、とさでんに取材を行ったところ、広報担当者は次のように答えてくれた。

「ご指摘の車両は昨年度から運用試験中の車両で、確かに家庭用エアコンの室外機を搭載しています。ただし、ある程度路面電車用に改良したものとなっているので、家庭用をそのまま置いているというわけではありません」

試験中の車両は「土佐電気鉄道200形電車」という、1950年代に生産されたタイプの車両だ。200型はもともと冷房を搭載しておらず、一部の車両は冷房改造をされているものの、他は非冷房のまま。

そのため、非冷房型の200形は夏場に車内が暑すぎるため走らせることができず、朝のラッシュ時のみの限定運行となっているという。

「我々は車両台数も少ないので、できれば冷房車にして運用したいのですが、車両用冷房改造は費用も高く、予算の乏しい状況ではなかなか進めることができません。そこで、費用を抑えた冷房改造の一環として家庭用エアコンを利用できないかと考え、昨年から業者と共同で試験に取り組んでいます」

車両台数が少ない都合上、試験のためだけに車両を用意するわけにはいかず、実地試験という形で使用に問題はないか、室外機が他の機器に干渉しないか、安全性や機能に支障はないかなどの検証を行っている。

ちなみに車内には送風口が取りつけられており、家庭用のエアコン本体が積みこまれているわけではないとのことだった。

今後も運用試験を重ね、問題がないことが確認されれば、現在運行している非冷房型の200形を冷房車へと改造していく予定だという。今度の夏は、家庭用エアコンの室外機を搭載して高知市内を走る路面電車の姿が見られる、かもしれない。