選手が目の前でプレーする?ARで変わる“みらい”の観戦スタイル
AR(拡張現実)やVR(仮想現実)という言葉を耳にする機会が増えてきた。もちろん、スポーツの世界においても、これらの取り組みを積極的に導入しようという動きがある。
2017年12月24日、東京・秩父宮ラグビー場で行われた“ジャパンラグビー トップリーグ 2017-2018 第13節「NEC グリーンロケッツvs NTTドコモ レッドハリケーンズ」戦”において試合をさらに盛り上げようと最新技術を使った取り組み「新体感!みらいスタジアム」が実施された。
当日行われた取り組みの中から3つを紹介したい。
試合がわかる!未来の観戦スタイルを体感
まずは、“スマートグラスをかけて、未来の観戦スタイルを体験しよう!”と行われた取り組みについて。これはARの技術を活用した観戦支援情報提供サービスだ。スマートグラスを観客は装着し、観戦しながら手の動きだけで直感的に映像の位置や表示サイズを操作することを可能とした。
本来なら、スマートグラスは装着する人に合わせた詳細な設定が必要とされている。今回使用されたスマートグラスは、装着する人それぞれが手で操作することで自分好みのレイアウトで観戦することを可能としたのだ。
手で操作しながら見える範囲を調整する
スクラムなど、密集戦が多いラグビー。肉眼では見ることの出来ない試合状況を別視点映像として見ることができる。試合の臨場感をさらに高め、観客の満足度をあげることができると感じた。また、試合中は映画の字幕のごとく、視野の下部に試合状況の解説やラグビーにまつわる小ネタが表示される。説明文はタイムラグなく、瞬時に更新され続けるのだが特徴だ。この仕組みを支えるのが、普段我々が携帯電話などで使用している4Gよりもさらに速く通信することのできる、5Gというネットワークである。
5Gというネットワークは、2020年に商用サービス開始を目指すものだ。“高速・大容量”、“低遅延”、“多数端末接続”という特徴があり、この日の秩父宮ラグビー場にも、2つのアンテナが設置され、会場の高密度Wi-Fiエリア(5Gのネットワーク)を支えていた。
さらに競技中フィールド内での決定的なポイントでは、プレーに合わせて、選手のプロフィールが即座に表示される機能もついていた。選手を詳しく知らなくとも、プロフィールが表示されることで選手を知りファンとなるきっかけになることは間違いない。
ラグビー先輩に話しかけてみよう!
“アプリで観戦をサポートします!”というキャッチフレーズのもと提供された『ラグビー先輩』という観戦支援アプリもお披露目された。このアプリをダウンロードすると、試合状況に合わせて注目選手の情報やルール解説動画が、プッシュ配信(※アプリがダウンロードされているスマートフォンなどの待ち受け画面等に通知が来る仕組み)される。さらに、チャットボット“ラグビー先輩”に話しかけながら試合を楽しむことも可能だ。普段使い慣れたチャットサービスを使うように、ラグビー先輩に話しかけると優しさと熱さを兼ね備えた返答をしてくれる。
この日はLMV(Live Multi Viewing)アプリをダウンロードすると、会場の高密度Wi-Fiエリアにおいて、試合実況動画が自身のスマートフォンやタブレット端末で試合を楽しむことが可能であった。さらに、プレゼントクイズなど、参加型コンテンツも提供されており、アプリを飽きさせない試みも随所に感じられた。
選手と一緒にプレーしている気分を味わう
“迫力満点!臨場感MAXの360°VRを体験しよう!”という体験型の特設ブースでは、VRの技術を活用した映像体験プログラムを体感することができた。専用のヘッドマウントディスプレイを着用することで、4K/8Kの高画質・高臨場感のアーカイブ映像で、まるでプロ選手と一緒にプレーをしているような気分を味わうことができた。
この他にも、この日の秩父宮ラグビー場では、選手やチームマスコットとも写真が撮れるフォトスポットなど様々な取り組みが行われていた。
最新の観戦スタイルがスポーツ産業を変える
ネットを通じた観戦のように従来になかった方法でスポーツに触れる機会がポピュラーになるなど、スポーツ観戦を取り巻く環境が変化し続けている。それと同時に、今回のような新たなスポーツ観戦スタイルで、“スポーツ観戦価値の向上”と“観客の満足度の最大化”をはかっていくことが必須だ。
観戦アプリやARなどの最新技術でビギナー層やライトファン層に向けた解説など観戦支援の取り組みを行うことで、初観戦のハードルと下げることが可能になってきた。さらに、コアファンや経験者向けに、別視点映像など従来の観戦方法では体感することの出来なかった付加価値を付けることが出来るようになってきている。
そういった新たな取り組みでスタジアム内外を問わず、リピーターを増やすこと、ファンを増やすことがこれからのスポーツを活性化することにつながるのではないだろうか。
今回行われた取り組みのようにARやVRの最新技術を用いて、スポーツ観戦に新たな価値を感じさせることに今後期待が掛かる。