「ミニバン」と呼ばれるクルマには、5ナンバーの小さなものも、3ナンバーの大きなものも含まれます。一部では軽自動車を指して「軽ミニバン」なる言葉も。そもそも、この言葉にはどのような由来があるのでしょうか。

業界団体では「セミキャブワゴン」という

「ミニバン」と呼ばれるクルマは、どのようなものなのでしょうか。


トヨタ「シエンタ」(上)と「アルファード」。大きさは違えど、いずれも「ミニバン」と呼ばれる(画像:トヨタ)。

 自動車情報サイトなどでは、たとえばトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」といった5ナンバーの小型車、もっと大きなトヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」、日産「エルグランド」といった3ナンバー車なども「ミニバン」としてくくられることがあります。一部では、スズキ「ワゴンR」やホンダ「N-BOX」などの軽自動車を「軽ミニバン」と呼ぶこともあるほど、多種多様な大きさのクルマが「ミニバン」と呼ばれているようです。

 本来はどのようなクルマを指す言葉なのでしょうか。月ごと、年ごとの自動車販売台数などを取りまとめて発表している自動車販売の業界団体、自販連(日本自動車販売協会連合会、東京都港区)に話を聞きました。

――「ミニバン」はどのようなクルマを指すのでしょうか?

「ミニバン」に具体的な定義はなく、メーカーにより意味合いが異なるため、当協会では使っていません。いわゆる「ミニバン」に該当するものは「セミキャブワゴン」と定義し、「RV(レクリエーショナル・ヴィークル)」のひとつとして分類しています。

――具体的にはどのようなクルマなのでしょうか?

 ワンボックスワゴンとちがい、ボンネットが少しあって、車高が高く、3列シートのあるクルマです。ただ各社が「ミニバン」として売っているものに合わせ、一部2列シートの車種も含みます。


2018年1月現在、自販連が「セミキャブワゴン」に分類しているおもな車種(自販連の資料をもとに乗りものニュース編集部作成)

――「ミニバン」という言葉はいつから使われるようになったのでしょうか?

 三菱「パジェロ」に代表される「RV」という言葉が出てきたころには、「ミニバン」という言葉は使われていなかったでしょう(編集部注:「パジェロ」は1982〈昭和57〉年に発売され、その後1990年代前半に起こったいわゆる「RVブーム」をけん引した)。ホンダ「オデッセイ」(1994〈平成6〉年発売)が出てきたころから目につき始めた印象です。

なにをもって「ミニ」なのか その由来は

 日本では1990年代から「ミニバン」という言葉が使われはじめたようですが、その起源はいつで、本来はどのような意味だったのでしょうか。自動車ライターの大音安弘さんは次のように話します。

「アメリカのクライスラーが、1983(昭和58)年に発売した『ダッジ・キャラバン』(編集部注・ダッジはクライスラーのいちブランド。同様にクライスラーの別ブランドであるプリムスでは『ボイジャー』としてラインアップされていた)を、『フルサイズバン』に対する『ミニバン』として提唱したのが始まりとされています。このクルマは現在のミニバンと比べれば大きいですが、フルサイズバンよりは小さく、以後、ミニバンは家族向け乗用車のいちジャンルとして確立していきました」(大音さん)


「ダッジ・キャラバン」。初代は1984年モデルとして、前年の1983年に発売された(画像:Fiat Chrysler Automobiles)。

 一方このころ、日本では日産が現在の「ラフェスタ」の前身である「プレーリー」を1982(昭和57)年に発売しています。ボンネットのあるタイプで、3列シート、後部両側スライドドアを備えていたこのクルマを、日産は現在、自社ウェブサイトで「ミニバンの草分け」として紹介しています。


日産「プレーリー」。当時のカタログなどでは、新しいタイプの「セダン」とされていた(画像:日産)。

 大音さんは、「『プレーリー』は、発売当時から『ミニバン』として売っていたわけではありませんが、ステーションワゴンとワンボックスワゴンの中間のような位置づけのクルマですから、当時、日産とクライスラーとで同じようなことを考えていたのでしょう」と話します。

【写真】デカい! アメリカンな「フルサイズバン」


アメリカにおけるフルサイズバンの元祖といわれるフォードのEシリーズ。写真は2014年モデル(画像:Ford)。