信州最大の湖「諏訪湖」が全面結氷した際、表面の氷が山のように盛り上がる、いわゆる「御神渡り(おみわたり)」が出現することがある。気温の変化で氷が膨張と収縮を繰り返して発生する自然現象だが、諏訪大社上社の男神が下社の女神のもとへと渡る道とされ、御神渡りの有無を確認することが「御渡神事(みわたりしんじ)」という特別な神事となっているのだ。

2013年以降、御神渡りが確認されない状態が続いていたが、2017年末から湖面の凍結が進み、2018年1月13〜14日ごろにはほぼ全面結氷。5季ぶりの御神渡り出現が期待できるのではとの報道が相次いだ。

画像は2013年に確認された御神渡りの様子(アルム バンドさん撮影, Flickrより)

気温も水温も年々上昇している

諏訪市博物館の公式サイトによると、年により微妙な差はあるものの、一般的に「御神渡り」が出現するのはマイナス10℃程度の冷え込みが続く1月〜2月の間、数日〜数週間とされている。

最古の公式記録は1397年に諏訪神社の神官が幕府へ報告した文書の控え「御渡注進状扣」とされており、600年以上前から確認されてきた自然現象ということになる。しかし、1990年代以降は出現回数が減少。1991・1997・2003・2004・2006・2008・2012・2013年のみとなり、その後は出現が途絶えている状態だ。

最近は冬になっても湖が全面結氷しないこともあるなか、今年は御神渡り出現の可能性が高いとあって、ツイッター上でも期待する声が次々と挙がった。

ところが、1月16日にJタウンネットが御神渡りの出現を確認する諏訪市・八剱(やつるぎ)神社の宮坂清宮司に確認したところ、「今週は何とも言えない状態」と話してくれた。実は15〜16日にかけて諏訪市は少し暖かくなっており、ツイッターでも同様の報告が投稿されている。

さらに17〜18日には天候が崩れ、雨が降るとの予報も出ており全面結氷が溶けてしまうかもしれないのだ。

「温暖化の影響なのか、年々気温も水温も上がり全面結氷しにくい状態になっています。今年はかなり冷え込み、マイナス10度以下の日も3日以上続くことが多く、御神渡り出現の可能性は高いと考えていますが、来週以降に期待するしかありません」

仮にこのまま今年も御神渡りが確認されなかった場合、「明けの海」として記録される。

「出現の有無に関わらず八釼神社から諏訪大社に『御渡注進状』を送り、大社から宮内庁と気象庁に報告され、正式に記録として残ります。できれば御神渡りを確認したことをお伝えしたいのですが......」