インスタント食品の代表格であるカップ麺には、乾燥したネギや肉などの具材を小さな袋に入れた「かやく」が付いています。「かやく」というと、真っ先に「火薬」が思い浮かぶかもしれませんが、実際は何を意味しているのでしょうか。オトナンサー編集部では、日清食品ホールディングス(HD)広報部の大口真永さんに聞きました。

「薬味を加える」ことに由来

 まず大口さんによると「かやく」は「火薬」を平仮名にしたものでもなければ、ネット上を中心に流布する「乾燥野菜くずの略称(か・や・く)」説も正しくありません。

「『かやく』は漢字で『加薬』。これは『薬味を加える』ことから来ているとされ、主にはラーメンやうどんなどに入れる具材を指しています」(大口さん)

 薬味とは本来、漢方医学における生薬のこと。医薬品に関する中国最古の書物と言われる「神農本草経」にも薬味についての記述があり、1世紀ごろには既に薬味という言葉が使われていたという説もあります。「加薬」は文字通り、主薬の効果を高めるために補助的に加えられる薬を指した言葉。主役を引き立たせる存在であることから、「加役」と表記されることもあるようです。

 一説によると、日本では室町時代ごろ、漢方の材料となるショウガを加薬と呼んでいたとされています。江戸時代の書物には、ネギや山椒などの香辛料一般が加薬と呼ばれていたことが記され、滋養ある食材(薬)をご飯に加えて炊いた「加薬ご飯」も登場。やがて、具材全般を指す言葉として「かやく」が使われるようになったとされています。

「目で食べる楽しみ」につながる

 日本で「かやく」そのものが注目を集めるようになったのは、世界初のカップ麺である「カップヌードル」(日清食品)が登場した1971年。「肉、海老、卵などの『かやく』は、カップ麺の風味と栄養バランスを高めるだけでなく、彩りをプラスすることで、『目で食べる楽しみ』も担う重要な存在といえます」。

 ちなみに現在、カップ麺に付いている「かやく」にはさまざまな具材が使われていますが、これらの具材が「かやく」と認められるための条件が存在します。即席めんの日本農林規格第2条で、「かやく」は「ねぎ、メンマ等の野菜加工品、もち等の穀類加工品、油揚げ等の豆類の調整品、チャーシュー等の畜産加工食品、わかめ、つみれ等の水産加工食品、天ぷら等、めん及び添付調味料以外のものをいう」と定義されているのです。

(オトナンサー編集部)