非常食で100人超が食中毒 「何を信じていいのやら」
東京都立小岩高校の1年生男女112人が食中毒の症状を訴え、都は、防災訓練で出された非常食を食べたことが原因と断定した。非常食のわかめからウエルシュ菌が検出されたが、これが食中毒を引き起こしたかはまだ分からないという。
防災訓練は、2017年5月19、20日に1泊2日かけて小岩高校で行われ、1年生358人が参加した。
わかめからウエルシュ菌が検出
19日の夕食は、炊かずに食べられるアルファ化米を使った非常食のわかめごはんが出された。20日の朝食用としては、乾パン、クラッカーが配られている。
ところが、19日夜から22日にかけて、食べた生徒らのうち112人が腹痛、下痢などの症状を訴えた。そして、26日になって、高校側から江戸川区立江戸川保健所に連絡があり、保健所が調査を始めた。保健所では、共通して食べたのが非常食しかなかったことなどから、9日に食中毒と断定、都が12日に概要を発表した。
都の食品監視課は13日、J-CASTニュースの取材に対し、乾パンなどは持ち帰りながら発症した生徒もいたことなどから、わかめごはんが原因の疑いが強いことを明らかにした。
非常食は給食ではないため、サンプルが残されておらず、都では、同じ18年12月が賞味期限になっている未開封のわかめごはんセットを検査した。その結果、1セットのわかめからウエルシュ菌が検出された。また、生徒1人の便からもウエルシュ菌が検出されている。
ウエルシュ菌は、どこにでも存在しているとされ、100度に達しても芽胞の状態で生き残るほど熱に強いのが特徴だ。カレーを一晩作り置きにするケースなどでも、菌が増殖して食中毒を引き起こすことで知られている。
では、小岩高校の防災訓練では、どのように調理して食べたのか。
セットそのものの汚染か、開封後に原因物質が入り込んだのか...
江戸川保健所の生活衛生課が取材に答えたところによると、わかめごはんセットは、1つに50人分が入っており、小岩高校では、9つあるクラスごとにセットを開封した。
クラスの代表を2、3人選び、ごはんとわかめをセットの袋の中で混ぜて、沸騰させたお湯を袋に注ぎ込んだ。その後、しゃもじを使って、わかめごはんを透明なパックに生徒分だけ小分けして入れた。開封してから生徒らが食べるまでは、30分ほどだった。
都の食品監視課では、取材に対してこう話す。
「ウエルシュ菌は、ちょうどいい温度が何時間も続かないと大量に繁殖したりしません。今回は、作り方キットの手順通りに作ったと聞いており、この調理方法のため菌が増えたと判断するのは難しいと思います」
都によると、ウエルシュ菌が食中毒を起こすには、多くの菌量が必要とされており、検査結果だけではこれが原因かも分からない。また、わかめごはんセットそのものが汚染されていたのか、あるいは、何らかの原因で開封後に食中毒の原因物質が入り込んだのか、なども不明のままだ。
食べて食中毒を起こした非常食について、ニュースのコメント欄などでは、「災害でこれ配ってたら最悪」「これでは非常食の意味がない」「何を信じていいのやら」などと不安の声が次々に書き込まれている。