レスター・シティの岡崎慎司に出番は訪れなかった。

 4月15日に行なわれたクリスタル・パレスとのプレミアリーグ第32節、日本代表FWはベンチスタートを命じられた。試合はレスターが2点を先制するも、同点に追いつかれてドローの結果に終わった(2-2)。前半から断続的にアップを行なっていた岡崎に、最後まで声はかからなかった。


ベンチスタートで険しい表情を浮かべる岡崎慎司 4月12日にアトレティコ・マドリードとのチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝・第1レグを戦ったレスターは、中2日でこのクリスタル・パレス戦に臨んだ。そして、中2日でCL準々決勝・第2レグの大一番を迎える。普通に考えれば岡崎は温存されたことになるが、日本代表FWの見解は異なるという。試合後、岡崎は胸の内を明かした。

「今日は温存? いや、たぶん普通に(先発から)外れたと思うんですけど。(監督から)何も言われていないので。前回のアトレティコ戦もロングボール攻撃が多かったので、チームとしてもうひとつ策というか、『(何かを)試したかったのでは?』と個人的に思っているんですけど。だから、次の試合は正直どうなるかわからないですね。

 自分としては試合に出たかった。アトレティコ戦も45分で終わっているので、自分だけがちょっとストレスが溜まっている状態で。しかもこの試合でも出ないとなると、やっぱり危機感というか、『え? 使ってもらえないのかも……』という思いがちょっと出てきますけど」

 クリスタル・パレス戦でFWジェイミー・バーディーと2トップを組んだのは、1月2日のミドルスブラ戦以来の先発となるFWレオナルド・ウジョアだった。冬の市場で移籍を志願しながらクラウディオ・ラニエリ前監督に慰留され、出ていけなかったアルゼンチン人FWが約3ヵ月ぶりに先発した。

 試合では、そのウジョアの高さを活かす攻撃が目についた。バーディーのスピードを使った速攻が多かったが、前線の基準点として機能するウジョアにロングボールを入れる攻撃も織り交ぜていた。

 振り返れば、アトレティコとの第1レグでは、レスターの生命線である「プレッシングサッカー」が完全に封じられた。プレスをかけようとも、相手からボールを奪えない。敵の攻撃を警戒し、中盤以下の後方部も前に押し上げられない。結果として、レスターはよさを出せなかった。

 さらに、ひんぱんに中盤まで降下してくるアトレティコのFWアントワーヌ・グリーズマンに手を焼き、後半からシステムを4-4-2から中盤を厚くした4-1-4-1にチェンジ。戦術変更の犠牲となる形で、FWの岡崎はハーフタイムに交代を命じられた。

 よって、クレイグ・シェイクスピア監督がこのクリスタル・パレス戦で新たな試みをテストした、というのが岡崎の見立てであった。

「ウジョアがFWの位置に入ると、サッカーが変わりますよね。監督としては、前にレオ(ウジョア)を置いて、『ある程度ロングボールで競れるように』という感じにしていると思う。ロングボールを入れ、そこでキープできればチャンスになるという感じ。今日はそういうチャンスがなかったですけど、ウジョアのよさは出ていた。

(前回のアトレティコ戦で)チームが引き過ぎたということはもちろんあったけど、『じゃあなにか対策を組まなきゃ』って、ラニエリがそうしたような感じで、チームが考えたと思うんですよね。前にターゲットマンを入れるサッカーをこの試合で試したんだと思います」

 0-1で第1レグを終えたレスターとしては、第2レグでゴールを奪わなければ準々決勝敗退が決まる。だから、アトレティコとしては自陣深くに引き、ロングカウンターに狙いを定めていけば突破が見えてくる。失点のリスクを抑える形で試合をスタートさせればいいわけだ。

 一方、レスターとしては自陣深くに引きこもる相手を得意としない。敵陣にスペースがあってこそ、バーディーの速さやMFリヤド・マフレズの巧さが光ってくるからだ。それゆえ、ウジョアを入れて違うオプションをテストしたのだろう。

 しかし、結果的にウジョアを入れたロングボール攻撃は思うように機能しなかった。試合勘が欠如しているせいか、彼の動きが重かったのが理由のひとつ。同タイプの長身FWであるイスラム・スリマニも、「(クリスタル・パレス戦の)試合前日に鼠径(そけい)部に違和感を覚えた。アトレティコ戦に向けて状態はよくない」(シェイクスピア監督)という。クリスタル・パレス戦でメンバー外となっているスリマニは、アトレティコ戦での復帰が難しいかもしれない。

 そうなると、バーディーと岡崎の2トップでアトレティコ戦に臨むか、あるいはバーディーの1トップか。いずれにせよ、岡崎としてはこれまでとやることは変わらないという。

「第1レグを改めて振り返っても、自分のやるべきことはしっかりできていたと思う。ただ、まあしょうがない交代だったというか……。あとは(25分にクロスボールに反応して飛び込んだが、わずかに合わなかった)あのゴールを決めていれば。自分がアウェーゴールを取っていれば、ヒーローになっていたと思うし、評価も全然違った。(チームとしてのチャンスが)あれぐらいしかなかったと考えたら、特に反省することもない」

 0-1で第1レグを終えたレスターとしては、アウェーゴールを与えないような形で試合をスタートさせなければならない。ただ、慎重になりすぎると彼らのよさも出てこない。絶妙なさじ加減が必要だろう。

 そのなかで、岡崎はいかに存在感を示すか――。注目の一戦は、現地時間4月18日の19時45分にキックオフだ。

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