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先日行われた米中首脳会談。米軍によるシリアへの巡航ミサイル攻撃についての報道にかき消されたというわけではないのでしょうが、その注目度とは裏腹に会談内容はほとんど明かされておらず、公表された内容といえばわざわざ顔を突き合わせて話すまでもないレベルのものばかりにとどまっています。両国の首脳がこの会談で本当に話したかったこととは一体何だったのでしょうか。メルマガ『グローバル時代、こんな見方も…』の著者、スティーブ・オーさんは、「両首脳の共通する意外な目標」を看破するとともに、そこに本来の目的があるとの見方を示しています。

何か続きがありそうな、まとまり感に欠けるサミット

米中サミットが終了し、現在までに公表されているサミットの内容は非常に限定的である。週末だったこともあってか、米紙などを読む範囲では「経済面での協力や、北朝鮮や南シナ海問題について話しあった」などで、あまり多くのことは報じられていない。

ロイターなどは、「両プレジデントは、二国間対話のアップグレードに合意(ティラーソン国務長官談)」と報じ、CNBCは「全米のネットワークがサミットを大きく報じる一方、中国では首脳会談に対する報道量がいつになく少ない」と、米によるシリア攻撃の影響などを論じるに留まっている。

その他には、トランプ氏が「習氏とは長時間話したが、とにかく何も決まらなかったとジョークを飛ばす一方、この先、長期に渡って非常に素晴らしい関係となることが私には見て取れる、それがとても楽しみだ」と、両氏の関係発展を伝える記事や、「率直で、ありのままを話す会談になったと(ティラーソン氏談)」など、どれも具体的な会談内容に乏しい。唯一、表に出た合意と言えば、年内のトランプ氏の訪中ぐらいである。

概ね好意的な印象の報道が多いものの、事前に何らかの象徴的な合意がなかったのであれば、電話会談で済みそうな内容のサミットであったと言える。米中間で、表敬訪問やお友達外交は考え難く、重要なのは具体的に何が合意に至るのかである。二大国の首脳が顔を突き合わせて、一体何を話したのだろうか。

両氏に必要なのは「伝説」

トランプ氏が必要としているものは、エスタブリッシュメントへと至る道。すなわち、自らの政治基盤を固めるに必要な企業群・経済界をバックに備え、中銀の信認を取り付け、外国政府および国外勢力との特別な関係を独自に構築することである。

一方の習氏は、東アジア地域の「アジア回帰」を望んでいるだろうか。識者の間では、中国は米中間の緩衝材である北朝鮮の消滅を望まないとする意見が多勢であるが、それは北朝鮮より南(日韓台)が反中親米であり続けることを前提にしているのであって、そもそも、そのような環境を中国が未来永劫望むはずもない。地域のアジア回帰、すなわち、親米を否定しないまでも、地域親中化は同国の発展に欠かせない。

ただ、両氏が目指すこれらのものは、その達成へは、どちらも非常に長い道のりである。そこで、期間短縮にはレジェンドとなることが一番手っ取り早い。つまり、後世に残る功績をもって「伝説の人」となり、市民から絶大な信認を得ることができれば自ずと全てがついてくる。

仮に、朝鮮半島の平和的な統一が実現すれば、それは同時に、米国に対する北朝鮮の脅威が消滅するに等しい。そして、それが米中の功績であったなら、まさに両首脳は偉業を遂げた人物として、国際社会から歴史的な評価を受ける。そして、この伝説の人物は大きな未来を切り開くことになる。

これまで、THAAD配備に反対表明していた中国であるが、仮に米中現政権の戦略的な思惑が働いていたとすれば、別のシナリオも見えてくる。

THAADの配備を強硬に進めれば、中国は不機嫌さ募らせ、韓国への締め付けを強化してくるとの憶測を生む。しかし、もはや中国なしでは成立しないとする韓国経済の切迫した状態を打破するには、親米親日大統領の下では困難であり、親中親北政治を容認する方へと世論が向かう(ここまでは、既に起こっている)。

それが、韓国の親中化を促し、その上で半島の平和的統一を目指す。統一が実現すれば、トランプ氏は朝鮮半島の無害化を達成し、習氏は、半島と大陸の結び付きが高め、日台を親中誘導することで、本格的な地域のアジア回帰を目指すことができる。

こう考えると、その主張を一転させたトランプ氏の「一つの中国」支持表明や、米国は拒み続けてきた6ヵ国協議の再開で中国の誘いに応じるなど、朝鮮半島を巡っては、ある時点で連携が始まっていたと見ることができる。これは当然、電話会談では困難であったし、また会談後に何も出さなかった「顔合せサミット」も不思議でなくなる。

朝鮮半島統一の実現性を疑う声は絶えないが、あり得ないと考えているうちの統一も、決して夢物語ではない。それは、過去の東西ヨーロッパやドイツの分断、その後のベルリンの壁やソビエト連邦の崩壊を思い起こせば、ある時点を境に、誰も予測できないスピードでそれに至った史実から確認できる。

両国の「歴史的責任」?

一見、あまり接点がなさそうに見えるトランプ氏と習氏であるが、両氏の思惑は意外と相互補完な関係にあるのかもしれない。

両氏の関係強化が進めば、これまでトランプ氏が掲げてきた「外国への関与を縮小し、政府コストを削減」へと進む可能性がある。それは、習氏が訴えてきた「広い太平洋には二つの大国を受け入れる空間がある」に通じる。場合によっては地域からの米軍撤退なんてことも囁かれるかもしれない。

米中の良好な関係は、日本全体にとって利するところが大きく、本来、失うものなど何もないはずである。にもかかわらず、米中関係の強化を遠ざけたい思惑が席巻する日本社会の空気は何か不自然である。

もし本気で、米軍駐留がなければ中国に侵略されると考えている日本の市民がいれば、それは地域分断で利する人々の言葉を耳にしたからかもしれない。そのような行為を国際社会が許すはずもなければ、それで中国は失うものはあっても、利するものなど何もない。

過去にそれを実行した日本が、その後どうなったかを考えれば明白である。中国・北朝鮮脅威の前は、ソビエト脅威が日本社会に蔓延していた。それ以前はアメリカ脅威だった。日本の市民は、これらを客観的に捉え、冷静に考えるべきである。

東アジア地域の和平を、自らの歴史的責任と捉える中国にあって、現状は恥ずべき事態であると言える。しかし、根気よく米国の説得にあたり、何かと武力に訴えがちなG7を抑え、北朝鮮との6ヵ国協議再開にこぎつけた同国の姿勢は、もっと評価されてもよさそうである。まさに、後に歴史が評価するというところだろうか。

最後に、今回の米中サミット後の多くのメディア報道で、一つ気になるフレーズがあったので紹介したい。それは習氏が発し、トランプ氏が追認したとされている。以下、報じられている両氏のダイアログ。

我々は相互理解をさらに深め、信頼を構築するに至った。我々は、安定的な友好関係構築に向けた発展を続けゆくことであると私は信じている。また我々は、世界平和と安定に資するため、我々の歴史的責任を全うする。

確かに、100%同意見だ。

image by: Evan El-Amin / Shutterstock.com

 

『グローバル時代、こんな見方も…』

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グローバル時代、必要なのは広く正しい世界観。そんな視点に立って私なりに見た今の日本の問題点を、日本らしさの復活を願い、滞在先の豪州より発していきたいと思います。

出典元:まぐまぐニュース!