「水泳で本当に頭が良くなるのか?」東大生の6割が「小学生時代にスイミング教室」
■東大生の6割!小学生時代の習い事は、なぜ水泳なのか?
春、子供が習い事を始めるには最適な季節だろう。
でも、何をすればいいのか。何が我が子には向いているのか。思案中の親御さん向けの情報が満載なのが、『プレジデントムック 塾 習い事選び大百科2017完全保存版』だ。
発売中の『プレジデントムック 塾 習い事選び大百科2017完全保存版』。誌面には、「頭がよくなる習い事」「我が子に合った進学塾選び方」「プログラミング教室情報」「最新通信教育事情」などが掲載されている。
記事の中で多くの読者の関心を呼びそうなのが、「東大生の習い事ランキング」のページ。賢さの象徴である東大生は小学生時代にどんな習い事をしていたのか、現役の学生174人(文系・理系半々)を調査している。
果たして上位にくるのは、スポーツ系(サッカー、野球、武道、体操など)か、文化系(楽器、バレエ、絵画、ダンスなど)か、勉強系(英語、そろばん、塾など)か……ランキングの順位は、ぜひ同誌を手にとって見ていただくとして、ここではダントツの1位だった項目について掘り下げよう。
1位は「水泳」だった。
実に、全体の60%の東大生がスイミングと答えた。174人中100人以上である(ちなみに2位の習い事をしていたのは47%)。この数字がどれだけ突出しているかを見るため、同誌では現在の小学生全般の習い事ランキング(2014年調査)と比較している。それを見ると、1位はやはり水泳だったが、占める割合は31%だった。
つまり、東大生は小学生時代にスイミングを習っていた人が、通常の2倍もいることになる。まさか水泳をすることが東大への近道ではなかろうが、「頭がよくなるスポーツ」と言えるのかどうか。
■東大生「水泳で負けた相手を負かす負けん気を身につけた」
まずは、調査時の東大生のコメントを見てみよう。
「幼稚園の頃に始めました。決して速くはなかったのですが、週4ペースで練習していました。プールの塩素のせいで茶髪になってしまいました」(文?・男性Aさん・富山県立富山中部高校出身)
「小学生時代、水泳を頑張っていて、市の水泳記録回では5位入賞を果たしました。通っていたスイミングスクールの大会で大会記録を出せたときもうれしかった」(文?・男性Bさん・鹿児島県立鶴丸高校出身)
「水泳は苦手だったけれど好きでした。練習した結果、県大会で7番に入れた」(理?・男性Cさん・群馬県立中央中等教育学校出身)
「小学校の同じクラスの子に教えるために、水泳を頑張っていました」(教養学部・女性Dさん・東京/桐朋女子高校出身)
彼らのコメントからは、必ずしも上手ではなかったけれど、泳ぐのが好きで懸命に打ち込んでいた様子がうかがえる。さらに、水泳を習い事にしたことで身に付いたことは何か聞くと、こんな答えが返ってきた。
「いい意味で周りに対する競争心を持てるようになった。できて当然だという思考に持っていくことで常に(勉強・受験などにも)高い意識で向き合うことができた」(理?・女性Eさん・東京/豊島岡女子中学高校出身)
「集中力」(経済学部・男性Fさん・東京/筑波大学附属高校出身)
「忍耐強さ」(前出・Aさん)
「自分に足りないことを徹底的に練習すること」(前出・Bさん)
「忍耐力と自己分析力。(小学生時代に打ち込んだ)水泳とピアノはたいした成績を収めていませんが、練習は頑張りました。お風呂や食事のときに寝そうになるくらい頑張った。金メダリストの北島康介選手の泳ぎをビデオでよく分析していました」(理?・男性Gさん・鹿児島県立鶴丸高校出身)
「悔しくなったときに自分から解決方法を考え、人の想像を上回るくらい努力をして、負けた相手を負かす負けん気」(前出・Cさん)
負けた相手を負かす負けん気……。水泳にはそんなメンタル強化の要素もあったのだ。自分の弱点を発見し、それを克服するための目標設定をする。そんな習慣がすでに定着した感がある。
■「水泳は脳の空間認知脳を鍛え、図形に強くなる」
約10数年後に晴れて東大生となる小学生たちは、水泳という習い事を通じて負けず嫌いの性格となり、きっと勉強も頑張ったに違いない。となると、親としてはどうしても気になるのが水泳と知能アップとの相関関係だが、一般的にはこのように考えられているようだ。
<子どもの神経系の発達は3歳がピークとなります。この時期に水の浮力を使って自由に体を動かして遊ぶことは、脳の空間認知能を鍛えることにつながります。したがってスイミングには空間認知能を鍛え、スポーツ万能の子どもが育つだけではなく、算数の図形問題が得意になるなど、頭の発達にも非常に良い効果があると言われています>(イトマンスイミングスクールHPより)
水中の3次元的な動きが、算数の図形問題に対処する能力を鍛えている、ということなのか。
また、オーストラリアのグリフィス大学の教授が5歳以下の子供約7000人を対象に3年間かけて取ったデータによれば、スイミングに通う子は同年代の子に比べ、親の収入などに関係なく成績がよかったという。さらに、数学関連の問題でも高いスコアをマークするだけなく、自己表現力に優れ、読み書きや計算力でも高い能力を示したという。
高校・大学(東大)で水泳部に所属していたある脳外科医は、スイミング時の水の感触や浮力などが、脳内に神経伝達物質のドーパミン、βエンドルフィン、セロトニンなどの分泌を促すことで癒し効果をもたらす、と水泳の専門誌に発表している。
実を言うと、東大生に聞いた小学生時代の習い事ランキングの2位は、楽器系だった。
1位水泳と2位楽器に共通するのは、正しい姿勢。一般に姿勢のよさは頭脳への血流をよくすると言われている。こうなると、我が子の習い事を水泳や音楽系にすれば、ぴしっと姿勢もよくなり、おまけに東大合格への道も開けるかも、と期待したくもなるが、東大生は小学生時代に学習塾の「公文」に通っている率も高いとの報告もある。また、複数の習い事(勉強系含む)をしたほうが頭のいい子が育つという専門家もいる。
結局のところ、言えるのは東大への切り札的習い事はわからないということ。よって、あれもこれもやらせようと親が欲張ってもしかたがないということ。子供本人が楽しめて達成感や自己肯定感を味わえるような習い事をするのが一番ということなのだろう。
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(大塚常好=文)