かつて「神戸らんぷ亭」なる牛丼チェーン店があった。1993年に大手スーパー「ダイエー」の傘下で創業し、最盛期は関東エリアに約50店舗を出店。2010年発売の「塩牛丼」など、吉野家や松屋とは一線を画したメニューで、客の心をつかんだ。



しかし15年春、マックグループ(現:ガーデングループ)の傘下に入ってからは、家系ラーメンチェーンの「壱角家」へ続々と業態転換。最後まで営業を続けていた、銀座店(東京都中央区)と谷塚店(埼玉県草加市)の休業に伴い、15年7月末で「神戸らんぷ亭」全店が姿を消した――はずだったのだが、なんと直後に1店舗だけ「らんぷ亭」が復活していた。

「すためし」なら、あったけど...


泰明小学校(以下、2016年10月Jタウンネット撮影)

復活した「らんぷ亭」があるのは、かつての銀座店跡地だ。実は銀座店は閉店から約1か月後の15年9月、神戸らんぷ亭ならぬ「銀座らんぷ亭」として生まれ変わっていた。数寄屋橋交差点からほど近く、北村透谷、島崎藤村といった文豪や、首相・近衛文麿らを輩出した名門校、中央区立泰明小学校の真ん前にある。


入口には「横浜家系ラーメン」の提灯が

タッチパネル式の券売機で、食券を買う。メニューを見回したところ、「牛丼」の文字は見当たらないので、「ラーメン」と「ミニすためし」のセット(980円)を注文した。看板こそ「らんぷ亭」だが、どうやら商品展開は「壱角家」に準じているようだ。


どうみても、家系ラーメン

待つこと数分。先にラーメンが来た。みじん切りの玉ねぎと、生ニンニク、辛味調味料とともに供される。ほどなく、すためしも登場し、生卵をかけて準備万端となった。いざ、ガッツリ昼食だ。


こちらは「すためし」

家系ラーメンは神奈川・横浜、スタミナ丼(このチェーンでは「すためし」)は東京・多摩のB級グルメ。それを銀座にある、かつての「神戸らんぷ亭」で食べる。少し不思議な気分だったが、腹も心も満たされた。


メニューは「壱角家」と同じ

「お店を残してほしい」との要望があった

15年夏の「神戸らんぷ亭」全店閉店は、各メディアを巻き込んだ大きな話題となった。Jタウンネットの姉妹サイト「J-CASTニュース」も当時、このニュースを紹介。らんぷ亭復活の可能性を担当者に取材したところ、「それは私にはわかりません」と答えていた。

では、なぜ銀座店だけ、そして屋号だけが復活したのか。Jタウンネットは16年12月19日、銀座らんぷ亭の運営企業である「神戸らんぷ亭」に取材すると、その経緯を教えてくれた。

「大家さんから『お店を残してほしい』とのお願いがあり、店構えは変えずに、家系ラーメンを提供させていただいております」

なんと、屋号が残った理由は、大家さんの希望だそうだ。となると、この銀座店で「牛丼」が復活する可能性もあるの?

「ちょっと残念なお話なのですが......」

10秒ほど言いよどむ担当者。記者も息をのむ。

「年明けに『銀座らんぷ亭』も閉店することが決まってしまいまして......」

なんと! 具体的な閉店日は未定だが、まもなく姿を消すという。

「ダイエー時代から通い続けてくださっているファンの方も多く、1993年から23年間続きましたが、完全閉店することが決まっております」

念のため、ほかの「壱角家」を「○○らんぷ亭」の名称に変える予定があるかも聞いたが、「考えていない」とのこと。なお、銀座らんぷ亭閉店後も、「株式会社神戸らんぷ亭」の会社名は存続し、牛丼以外の業態を展開していく予定だという。

ほぼ四半世紀にわたって、人々のお腹を満たしてきた「らんぷ亭」だったが、ついに今度こそ、その灯火を消す。思い入れのある方は、お早めに銀座へ。