大学生をITエンジニア・ITクリエイティブ人材に育てる「techGarage」の目指す姿とは

写真拡大 (全4枚)

※本記事は、2013/4/25に投稿されたTechAcademyマガジンからの転載記事である。


IT人材の育成に取り組んでいる組織がある。「techGarage」は、東京/福岡を中心にして数多くのイベントを開催しながら、実際に大学生をITエンジニアやITクリエイティブ人材として育てる、そして一緒に働くという段階までをサポートするという。


アメリカでは学生をプログラマーに養成する学校がすでに広まっているようですが、日本でもIT人材の育成に取り組んでいるところがあります。

その1つである「techGarage」は、東京/福岡を中心にして数多くのイベントを開催しながら、実際に大学生をITエンジニアやITクリエイティブ人材として育てる、そして一緒に働くという段階まで取り組んでいます。

そんなtechGarageの主宰であり、株式会社インタレストマーケティングCTOでもある野村亮之氏にお話を伺いました。

インタビュアー

techGarage主宰 野村亮之氏

大学在学中に名古屋で、株式会社sus4を設立・取締役に就任し様々なウェブサービス構築に従事されていました。

2011年4月にマクロミルの子会社であるエムワープのチーフアーキテクトに就任。 同年4月にレコメンデーションサービスとSNSを組み合わせたウェブサービスPOPCORNをiPhoneで開始。その後、2011年1月にエムワープのCTOに就任。

現在は株式会社インタレストマーケティング取締役兼CTOとして、Facebook上の影響力・インタレスト情報を利用したプロモーション情報配信サービスKolorなどを開発されています。

 

IT業界で“生き抜く力”を伝えるために

ここからはインタビューをお届けします。

- techGarageはどんな経緯ではじめたのでしょうか?

野村:純粋にエンジニア教育をやってみたいというのが半分、採用にも生かしたいというのが半分でスタートしました。

前職のエムワープや今の会社でもそうでしたが、ベンチャー企業だとどうしてもエンジニアを普通に採用することが難しくなってきています。さらに採用に関しては、ベンチャーならではの改題ですが、入社してから会社の文化に合わないなどのリスクもありますので、自分たちが信頼できる仲間を見つけてくるのが前提だと思っています。techGarageのようなものがあれば実際に育成していくなかでそんな仲間を見つけることができると思いました。

また、私自身がずっとビジネスをゼロから作りあげることをエンジニアの立場として経験してきたので、その思想を伝えていき、その子たちがIT業界で育ってくれれば長期的にみて良いことだなと考えていました。

ですので、技術教育をずっとやるというよりは、私の経験してきたビジネス面でのアドバイスも含めて、仕事の中で自然に生かしてくれるようなサイクルができあがればいいなと思っています。

最初はエンジニアの教育に限っていましたが、最近はどちらかというとクリエイティブができるディレクターの教育もしています。私自身がデザインアプローチでずっとシステム面を見てきましたことも影響しています。

特に最近のWebサービスやモバイルアプリケーションは画面も小さくなったこともあり、UI側からしっかりと設計のアプローチを取っていかないと、立ち行かないことが多くなっています。ただ、そこを考えてシステム面にきっちりと落としていきながら、ディレクションできる人は相当少ないので、そこも含めてカバーリングすることを目標にしています。

- どのエリアで開催しているのでしょうか?

野村:現在は、東京、福岡、名古屋、京都でそれぞれ10人くらいで活動しています。

東京では実際に弊社のメインストリームの仕事に入ってもらって、ベンチャー企業がどんなものかを包み隠さず体験してもらっています。そのため、東京では長期の受け入れとして最低6ヶ月という期間をもうけています。地方から東京に出てきている人も多いですね。

地方の場合は私が2週間に1回くらい現地に行って、3ヶ月くらい直接教育をしていきます。そこで芽が出てくる子に関しては実際に仕事をしてもらってお金も支払うようにしています。

- どのように学生を集めているのでしょうか?

野村:スポンサー企業にもご協力いただきながらワークショップなどを開催して、ワークショップなどを開催しています。

たとえば、福岡ではマイクロソフトさんに協賛いただいてモバイルアプリを構築する2日間のワークショップを開催しました。スポンサー企業様には集客などもご協力いただき、ブランディングや採用面などにもその機会を生かしていただき、私たちはワークショップで教えるノウハウを提供しています。

このようなワークショップを開催する中で、学生の相談に乗っていきながらtechGarageの枠組みで活動してもらう学生が増えています。


Windows8用のアプリを開発するワークショップをMicrosoftと開催

- この活動やワークショップに参加するには費用はかかるのでしょうか?

野村:基本的にはスポンサー企業様にご支援していただいたり、仕事として学生に実際に稼いでもらうというサイクルを作っているので、学生からお金をとることはしていません。その代わりに、学生にはきちんと時間は提供してもらうことにしています。定期的に開催する会には出てもらったり仕事をするときは、しっかりと時間を割いてもらったりしています。

そのため、最初の学生との面接はちゃんとしていて、誰でもいいというわけではありません。

また、仕事に対してはきちんとお金を払うようにしています。学生の場合はアルバイトなど時間給でお金をもらうことが多いと思うのですが、なかなか自分のスキルを伸ばすための仕事はできません。とくに地方ではその傾向が顕著です。そこで、時間を投資してもらって、将来的に役立つスキルや考え方を得ながらお金ももらえるようにしています。

大学生と即戦力のキャズムを埋める、「techGarage」の教育哲学

- 学生のレベルはどのくらいなのでしょうか?

野村:Webサービスを作った経験や大学で勉強していることはそこまで重視していません。

特に東京で長期間来てくれる子に関しては素養だけみるという形ですね。その素養の見方も基準があって、エンジニアリングの能力というよりも、学ぶ力だったり伸びていく力があるかの基準を重視しています。

育てるという面を見ると、今何ができるというよりも6ヶ月後にどうなっているかのイメージで来ていただくかを決めています。

- どんな学生が参加しているのでしょうか?

野村:責任をしっかりと持ってもらうことを重視しているので、基本的には学3年生、4年生、大学院生が中心になっています。

本当は参加するのに一番いい時期は3年生の後半です。人格も形成されつつあり、やりたいことも明確になってくる時期ですので、実際に仕事をやってみてももいい時期です。この時期はどうしても就活とかさなるので、就活を度外視してもやりたいという学生が、今は来てくれています。

実際に来ている学生をみると大学3、4年生の伸びはすごいものがあります。その時に誰が教えるのか、どこにいるのかはものすごく重要だと思っています。大学でも授業があって、研究室でもちゃんとやっていると思うのですが、それ以上に企業も若い人への教育コストを絞っていて即戦力を求めると言っていますが、大学はそんなつもりでないのでキャズムのようなものが発生していると感じます。

techGarageに来てもらうことで、その橋渡しができるようなフラットな組織にしたいなと思っています。

- techGarageで学んだ学生はその後どうなっているのでしょうか?

野村:一緒に仕事をしていく子もいますし、中には大手IT企業のエンジニアとして就職する学生もいます。

techGarageに関わることで就活の考え方自体が変わることもあるので、自分で道筋を立てられるように考え方をしっかりさせることも私の使命かなと思っています。

- ありがとうございました。


.

TechAcademyマガジン 編集部
[原文4]