ツイッターで話題の「おいしい牛乳の積み木」 作者に話を聞いてみた
近頃ネットで話題のユニークな牛乳パッケージ。
おいしい牛乳積み木 pic.twitter.com/49m4vLqfJO
- Relikeシロクマ@ブロガー (@Relike_news) 2016年10月16日
おいしい牛乳のパッケージを、自分で好きなように組み立てられるのが、楽しかったです(^_^)ここは凄く賑わっていました!夫ちゃんも凄く楽しんでて、私も自分たちの名前で作ってみたりしました?。 pic.twitter.com/bhYZf1Xd1L
- macha (@machakoara100) 2016年10月24日
自分だけのおいしい牛乳が作れるコーナー、人気すぎる上にあまり広くなく文字も限られているので狙った文字列を作ろうとするとかなりの駆け引きが必要になって来ますがクソ楽しい。あとみんな男女問わず「自分の牛乳」を作ろうとするだけどその意味がわかっているのか? pic.twitter.com/TS8rwQ6K6G
- バーザムさん@3日目東ユ29b (@barzam154__) 2016年10月19日
こういったツイートを目にしたことがある人も多いのではないだろうか。
これらは、現在21_21 DESIGN SIGHT(東京ミッドタウン・ガーデン内)で開催中の企画展「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」に展示されている、グラフィックデザイナーの下浜臨太郎氏の作品「ロゴタイプの拡張」だ。
下浜臨太郎氏「ロゴタイプの拡張」(画像提供:21_21 DESIGN SIGHT)
「デザインの解剖」とは、グラフィックデザイナーの佐藤卓さんが2001年から取り組んでいるプロジェクトで、あたり前に暮らしに溶け込む製品を「デザインの視点」で解剖し、パッケージなどのグラフィックにこめられた工夫を読み解く。
同作品は体験型のインスタレーションを通して、「明治おいしい牛乳」(株式会社 明治)のロゴタイプの解剖を行っている。
Jタウンネット編集部は、作品について下浜臨太郎氏に話を聞いてみた。
お気に入りは「ゆるさんぞ牛乳」
下浜氏は「のらもじ発見プロジェクト」という、町の看板の手書き文字を発見・鑑賞・形状分析・フォント化する活動を行っている。そういった背景もあり、
「解剖というテーマを頂いたときに、今回は『文字』を対象にするのが自分らしいと思いました。パッケージのロゴタイプに着目して制作するのは自分にとって自然なことかと...。
積み木という形態に至ったのは、とにかく『展示会場に来たからこそ楽しめる』逆に言うと『来ないと楽しめない』ものを制作しようと思ったからです」
と作品制作のいきさつを語った。
「まずは、『明治おいしい牛乳』のロゴタイプをよくよく観察してみてほしいと思います。すると、この牛乳のためにつくられた文字にもかかわらず、どこにでもありそうな印象を感じると思います」
たしかに、なぜか普遍性を感じる文字だ。
「ロングセラー商品において、このことはとても重要です。そして、みなさんが自分で積み木を組み立てることでロゴタイプを『文字』としてとらえ、その形状を観察してほしいと思いました。また、商品名や牛乳の高さが変わっても『明治おいしい牛乳』というアイデンティティはなかなか崩れません。それだけ強いパッケージデザインとも言えます。それを体感してもらうための作品とも言えます」
なるほど。「明治おいしい牛乳」のパッケージだと認識しているからこそ、積み木で生み出された滅茶苦茶な文字の羅列を楽しむことができるということか。
下浜臨太郎氏「ロゴタイプの拡張」(画像提供:21_21 DESIGN SIGHT)
作品を制作するにあたってこだわった点は、
1.牛乳パックの質感の再現
2.文字詰めの美しさ
3.組立てたときの整合性
だという。
「1.に関しては、紙の種類、コーティングのしかた、折れ目の加工などを印刷会社(株式会社アド・シーズ)に協力して頂き再現しました。
2.積み木を組み立てたときに、文字と文字の間が空きすぎてしまう組み合わせがないように、『い』『へ』『つ』や『ゃ』などの小さい文字が入る積み木を、他の文字と比べてひらべったく、厚みの少ないものにしています。
3.に関しては、牛乳を輪切りにしていくと、ロゴタイプ以外の印刷要素が中途半端な場所で切れてしまいます。なので『新鮮をしぼるおいしさ』といった文字や、成分表、こだわりについての表記、などの順番を入れ替えて積み上げてもある程度成立するように調整しています」
本物のパッケージには右端に「新鮮をしぼる自然のよろこび」という赤い文字が並ぶが、積み木にするとその並びがおかしくなってしまうのもこの作品の面白いところ。ちなみに、ひらべったい積み木には面積的に3文字入れるのが難しかったため「また、」や「ほら、」などの接続詞を創作して入れ込んだという。
下浜臨太郎氏「ロゴタイプの拡張」(画像提供:21_21 DESIGN SIGHT)
下浜氏は、作品がツイッターで広がっている印象があるとし、その理由をこう考察する。
「『デザインの解剖』という展覧会のテーマを知らなくても『おもしろがれる』作品であり、画像というメディアに落とし込んだときに力を発揮する作品であるということに改めて気づかされました」
ネット上にアップされているものの中で、印象深いものは「ゆるさんぞ牛乳」「おいしいだちょう牛乳」だそう。
デザインの解剖展 pic.twitter.com/FMr1yCTTvd
- ゆうたろう (@yutaro07) 2016年10月16日
おいしい牛乳積み木はやたらRTされてるな。これは六本木の21_21 design sightで開催中の「デザインの解剖展」。好きな牛乳が作れます pic.twitter.com/cyPaweXiRS
- その辺の人 (@create_clock) 2016年10月14日
ほかにも、
「何も文字をいれず『明治 牛乳』という組み合わせを投稿している方を見て、他の投稿者と逆に行こうとするこのアプローチは自分の考え方に近いな...と勝手に親近感を感じていました」
とコメント。
最後は、「ツイートを見るだけでなく、ぜひ現場に来て展覧会の圧倒的な情報量とその深さを体感してほしい」と語った。
同展は21_21 DESIGN SIGHTで2017年1月22日まで開催している(火曜日と年末年始除く)。