『糟糠の妻はなぜ捨てられるのか』(大西明美著・プレジデント社刊)

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■夫のスーツからキャバクラ譲の名刺

その日、主婦のまゆみさんは夫のスーツを持って、クリーニング店へ行った。

カウンターで店員がスーツをチェック。ここまではいつもどおり。

「ん? あれ、何か入っていますよ」そう言って出てきたのは……明らかにキャバ嬢の写真入りのキラキラ名刺。気まずい空気が流れる。

「大丈夫です、こんなことよくあることですから、オホホホ」と店員さんからの心にもない励ましを受ける。「くっそー」と小石を蹴りながら、まゆみさんは帰り道帰途についた。

後日、彼女から相談を受けることになった。

「どうしてうちの主人はキャバクラに行くのですか?」

彼女の言葉には怒りだけではなく悲しみと落胆が混じっていた。キャバクラは1時間何千円とお金がかかるし、無駄遣い。若い女性に目が行くなんて自分に魅力がなくなってしまったからではないか。彼女たちと不倫関係になったりしないか。不安でまゆみさんの心はいっぱいになっていた。

「まゆみさん、男性がキャバクラに行く理由は全部で3つなんです。認められたい、尊敬されたい、そして目の保養です。仕事の愚痴を聞いてもらって、『そんな大変ななかお仕事がんばっていてスゴイですね?』と認められたい。『うわー、すごーい!』とほめられたり尊敬されたい。しかも若くて綺麗な女性に言ってもらえば、男性だから励みになるのです」

「家で美味しいおつまみを買ってきて、勝負下着で誘惑してもダメなのかしら?」

うっ、ダメって言いにくい。でも現実はそんなことで解決はしない。

そもそも子どものほうが優先されて、旦那さんの存在感が薄くなっているご家庭が多い。旦那さんはそこに寂しさを感じ、「すごい」「尊敬する」とほめてくれる女性がいるキャバクラに行ってしまうのだ。

また、単純に若い女性と接するのが趣味の男性もいる。そういう男性の場合は、家庭をどうやったとしてもキャバクラ通いはやめないだろう。

「まゆみさん、実はキャバクラに行く男性って仕事を一生懸命やる男性より不倫しないのですよ」
「はっ?! どういうことですか」

■不倫相手がキャバ嬢である確率はわずか3%未満

「不倫をする男性のうち、職場不倫は4割に対し、キャバクラは3%もいないんです。ほぼ不倫関係にはなりません」
「えー、そうなんですかっ!」
「だから、キャバクラに行っている時間は、不倫できない時間帯とも言えるんですよ」

なぜキャバ嬢との不倫が成り立たないのか。まず、男性は不倫相手を探すことを目的としてキャバクラに行っているわけではない。キャバクラに行く理由は前述の3つだ。

もちろん、だからといって下心が全くないかといえばそうではない。「もしかしたらこの子とセックスできるかも、恋人になれるかも」という下心を持っている男性もいる。

しかし、キャバ嬢目線で見ると、既婚者と関係を持つことは「不倫」だ。彼女たちは賢い。ちゃんと費用対効果を考えている。男性の「懐具合」と、妻にバレた時のリスクを両天秤にかける。

「この人と恋愛関係になってもお金もないし、未来もないし、妻にバレたらめんどくさいことになりそう」そう考えれば、キャバ嬢はまずその男性と恋愛関係になろうとは思わない。ましてや、月2万円や3万円のお小遣いを工面してセコセコとキャバクラに通う既婚者の男性となんて言わずもがなだ。

「あけみさん、これ……結局キャバ嬢って私の敵じゃなくて、夫を不倫させないための味方と言ってもいいぐらいですねぇ」
「そうですねぇ。キャバクラに行っている時間は、不倫をしない時間帯ですからね。ただ、お小遣いを使い過ぎないように管理しておいたほうが良いかもですね。人によってはハマって何万円もガンガン使っちゃうなんてこともありますからね」

こうして、まゆみさんは嬉しそうに家に帰っていった。

自分よりも若くて綺麗な子にあっていると思うと腹立たしく思うこともあるかもしれないけれども、本当の敵は職場の同僚です。詳しくは、拙著『糟糠の妻はなぜ捨てられるのか』を読んでもらえると幸いです。

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大西明美(おおにし・あけみ)
婚活アドバイザー
2010年からクリスチャン専門の結婚相談所を経営。20年で4万3000件以上の婚活&恋愛アドバイスを実施。これまで1000人以上の不倫カウンセリングも行う。現在は1日20件以上の婚活メール相談や年間100人以上の直接面接による婚活アドバイスをこなしつつ、「WEBプレジデントウーマン」で働く女性向けの婚活記事を連載するなど、恋愛や婚活、不倫に関する様々な情報を積極的に発信し続けている。著書に『となりの婚活女性は、今日も迷走中』がある。

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婚活アドバイザー 大西明美=文)