健大高崎vs明秀学園日立
健大高崎は“機動破壊”の異名通り、足で明秀学園日立を搔き回した。打者走者としての一塁到達タイムは私が俊足の目安にしている4.3秒未満が4人6回。明秀学園日立の1人1回を遥かに引き離している。さらに盗塁が凄い。6イニングで3個を成功させているのだが、1回裏は二盗を狙った1番湯浅 大(2年・遊撃手)が投手のけん制で憤死、2回は今井 祐輔(2年・中堅手)が二盗を失敗している。それでも3回以降に3個成功させているのだ。
盗塁に要するタイムは、動き始めにスタート、二塁ベース到達でストップボタンを押して得られる。今年限りで引退した巨人の鈴木 尚広が3.1秒前後で(本人がテレビ番組で語っている)、私が計測した中でも3.08秒が最速である。高校生は3.2秒前後が速いレベルで、この日の3回のタイムは2回の今井が3.20秒(失敗)、3回の湯浅が3.25秒、小野寺 大輝(2年・左翼手)が3.25秒だった。異なる選手がともに高校生としては速いタイムを計測しているところに健大高崎の恐ろしさがある。
盗塁以外では湯浅が1回、二塁走者としてセンターフライで三進しているが、このときのタッチアップから三塁到達までに要したタイムは3.73秒。外野手の本塁送球はダイレクトでこのくらいなので、十分セーフを狙えるタイムである。
少し機動破壊から離れよう。ことしの健大高崎が従来のチームと違うのは、各打者のバッティングのレベルが高いことだ。私が知っている健大高崎はバッティングの弱い部分を脚力で補っている部分があった。しかし、今年のチームは1番湯浅、3番安里 樹羅(2年・二塁手)、5番高山 遼太郎(1年・右翼手)、9番伊藤 敦紀(2年・3回途中からリリーフ)、9番大柿 廉太郎(1年・捕手)まで、バッティングのレベルが高い。
3回の安里の2ランは2ボールからストライクを取りにきた110キロのスライダーをライトスタンドに放り込んだもので、インサイドアウトのスイング軌道が見事だった。1年生・高山が放った2回のセンター前ヒットも同じように内側からバットが出て、131キロのストレートをセンター前に持って行った。
実は明秀学園日立の打線もよかった。機動力はないが各打者の思い切りのいいスイングが目立った。とくに8番細川 拓哉(1年・三塁手)のフルスイングは目を引き、2回には1ボールから高めの球を強引に引っ張って左中間を破る二塁打を放っている。4回途中にはリリーフ投手としてマウンドを踏み、安里に代わりっぱなこそ安里に2点タイムリーを許すが、それ以降の2イニングを三者凡退に抑えている。ストレートは130キロ台中盤が最速だから速くはない。変化球を織り交ぜた緩急に特徴があり、打っては強打、投げては技巧派という部分に堂林 翔太(中京大中京→広島)の高校時代を見るようである。
投手は第1試合の横浜対浦和学院同様、技巧派が多かった。出てくる投手がことごとく130キロ台で、もう速い投手は出てこないのかなと思っていたら、7回に出てきた健大高崎の小野 大夏(2年)が最速143キロを計測した。背番号2で登録は捕手、投げる球はすべてがストレートだが、来年の春頃にはもう少し投手らしくなっていると思う。こういうリリーフ投手がいると継投策が多彩になる。
(文=小関 順二)
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