金正恩氏

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北朝鮮で、数多くの韓流ドラマが流通するなか、なぜか韓国のカリスマ経営者のビジネス書が人気を呼んでいるという。

韓流ビデオで拷問に処刑

北朝鮮は、自国の社会主義体制と主体思想の優位性を際立たせるため、「南朝鮮(韓国)は腐った資本主義」「人間地獄だ」などと宣伝している。しかし、2000年頃から中国から流入しはじめた外国映画、とりわけ韓流ドラマは、娯楽に飢えた北朝鮮人たちをあっという間に魅了。その結果、当局の思想宣伝は通用しなくなる。

アクション、恋愛、歴史など、ジャンルを問わずありとあらゆる韓流ドラマ、外国映画が流通した。挙げ句の果てには、金日成一家のスキャンダルにも関わる「喜び組」をテーマにしたドラマまで出回り、流通させた商人が処刑されるという事件まで起きた。

喜び組は抜きにしても、韓流ドラマの販売や視聴が発覚したらただではすまない。故金正日氏の執権時代からは、韓流文化をブロックするための治安部隊「109常務」が組織され、住民を厳しく取り締まってきた。

金正恩党委員長の時代になって、その取り締まりは一層厳しくなっているという声が、日々内部情報筋から伝わってくる。今年4月には映像ファイルを保有していた女子大生が、拷問され最悪の結末を迎えるという事件まで起きた。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

正恩氏が登場するわいせつ映像のウワサ

しかし、こうした統制強化が逆効果を招いている。

北朝鮮当局は、講演会などで「腐りきった反動的な資本主義的思想文化は、我々の生活風潮を蝕む」と締め付けを図ろうとするが、「あれもするな!これもするな!」と、ダメ出しばかり強調するため、一部の人々は「何かとんでもない裏事情でもあるのでは?」と疑問を抱く。

最近では、動画を視聴できるノートテルという機器に対する取り締まりを強化したことを発端に、「正恩氏が登場するわいせつ動画」まで存在するという怪情報が拡がった。

金日成氏よりサムスン会長?

さらに、最近ではドラマだけでなく書籍も人気を呼んでいる。

現地情報筋によると、300以上の書籍が入っているUSBメモリやSDカードなどが携帯電話を通じて拡がっている。そのなかでも、現代グループの故鄭周永(チョン・ジュヨン)氏やサムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ)氏など、韓国のカリスマ経営者の回顧録、いわばビジネス書への関心が高く、読まれているとのことだ。

北朝鮮で回顧録といえば、故金日成氏の「金日成回顧録ー世紀とともにー」だ。実は北朝鮮にも、この回顧録を読んだことがない人が少なからず存在する。もしかすると何年後かに「金日成主席の『世紀とともに』は読んだことはないが、サムスン会長の回顧録なら読んだ」という若者が出てくるかもしれない。