先週4日、甲南女子中学校・高校で経済の授業を行った竹中経済財政政策・郵政民営化担当相(撮影:常井健一)

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竹中平蔵経済財政政策・郵政民営化担当相は先週4日、兵庫県神戸市の甲南女子中学校・高校で、生徒42人を前に、「暮らしと経済」と題して授業を行った。その中での、生徒とのやりとりを紹介する。

生徒A:
 なぜ郵政民営化するんですか。

大臣:
 郵政とはどんな仕事か。1つ目はものを運ぶ仕事で、「宅配便」と同じような仕事。2つ目は郵便貯金で、お金を預かったり、ガス料金などを貯金から引き落としたり、銀行と同じ仕事。3つ目は、「簡易保険」という保険を売っている。これも生命保険会社と一緒。もう1つは、日本全国に2万4000店の郵便局を運営している。

 郵便局はコンビニと似ていると思う。コンビニには3000ぐらいの商品が置いてある。だけど郵便局には「郵便」「貯金」「保険」の3つしか置いていない。しかし、店舗数は「ローソン」の店舗数の3倍もある。

 なぜ店舗は多いのにサービスが少ないのか。それは、国がやっているから。国の力で大きな会社を作ったら、その商売相手はやられてしまう。だから3つに制限している。でもすべて民間でできる仕事。公務員に任せておくより、民間で自由にやった方が、サービスはもっと良くなると思う。

生徒A:
 では、なぜ民営化に反対する人がいるんですか。

大臣:
 反対する人は、地方や山の中にある郵便局は儲からないから、閉鎖されてしまうのではないかと心配している。その気持ちもわかる。でも、本当にそうなるのか考えて欲しい。

 民間の電力会社は山間のへき地にも採算性に関わらず電力を送り続けている。「田舎にでも店を置き続けるルールを作った上で民営化しよう」と私たちは一生懸命説明をしている。それでも心配だという意見もあって、今国会で議論している。

生徒B:
 テレビで国会中継を見ていると、たまに議員が乱闘や寝ている姿が見当たる。大臣はどう思いますか。

大臣:
 なかなか厳しい質問。

 世の中って、面白くないことがたくさんある。絶対的な正解がないことも多く、議論しても自分の思い通りならないことが、家でも会社でも必ずある。そんなときにどういう態度を取るかが重要。

 議論するときは双方が「100%正しい」と思って主張するが、民主主義では多数決で決まったことは受け入れなくてはいけない。それは私たちの社会を支えているしくみ。真摯(しんし)に話し合うことが重要で、暴力に訴えるのはどんな状況であれ、恥ずべき行為。

 国会に出ている人の中には疲れている方もいると思うけど、寝ることは無視することにつながることで、いけないこと。

 寛容と忍耐、それが重要。

生徒C:
 「クールビズ」(「ノーネクタイ、ノー上着」など政府が省エネの一環で推進する夏の軽装)でネクタイをする人が減ると、ネクタイを作る会社が困ってしまうと思う。

大臣:
 何かをするときは、良い面と悪い面を素直に判断していくべき。高度成長期に、石炭から石油にエネルギー源が変わった。これは日本経済にとって、すごく良いことだった。でも、石炭の仕事をしていた人は、厳しい調整を迫られた。

 このように経済の問題はいつも難しいことがつきまとう。コンビニができて便利になる反面、地元の商店街の売り上げが減るかもしれない。それは、変化があるときに、必ず起こる問題で、そんなときはまず当事者が、時代の流れをくみとって、努力することが大事。それでもだめなら、円滑に別の仕事に移れるようなしくみを政府が作っていく。

 私は「クールビズ」を始めて今日で4日目。ネクタイをしないとファッションがものすごく難しい。ネクタイがなくなると、胸元が寂しくなって、変に見えてしまう。だから、ポケットチーフを使ったり、シャツを工夫してる。

 ネクタイを作っている会社は、染色の技術やデザインのノウハウを、シャツやチーフの染色に生かしていけると思う。「クールビズ」に合わせて、企業も変化していくことは可能。民間の工夫に期待している。

生徒D:
 余ったお米を国が買い取るなど、農家の生活安定を保障しているが、国の借金を増やしてしまわないか。

大臣:
 所得が2倍になると、海外旅行に行く人数は増える。だけど、豊かになると、米以外のものを食べるようになるし、人の胃袋の大きさは同じだから、食べる米の量は増えない。だから米が余る。米を作る農家が困らないように国が支えるけど、それも続けてはいけない。

 だが、今チャンスが到来している。日本の米は本当においしい。中国ではどんどん所得が増えており、富裕層が日本の米を買いたがっている。中国にマーケットがあると思えば、胃袋が5億にも6億にも増えていく。そういう発想で、時代を切り開くことは可能だと思う。今の内閣でも農産品の輸出推進に切り替え始めている。

生徒E:
 お金を持っている人だけが自分に投資してどんどん能力を身につけていくと、お金を持っていない人との格差が進んでしまうのでは。

大臣:
 私は努力する人には頑張ってもらいたい。所得の格差が一時的にできるとしても、それが固定してしまう社会はいけない。一度所得が下がっても、頑張ればまた上がるようなチャンスをどんどん与えるしくみを、今の政府で作っている。

 でも、「格差が広がるかもしれないから、何かをするのをやめる、大胆に民営化するのをやめよう」ということはするべきではない。国全体が縮小していくことになる。

生徒F:
 払った年金を老後にもらえないのなら、納めたくないと思う。払った分だけはもらえるようにしてもらいたい。

大臣:
 払ってもらえないことは、今後絶対にない。そうならないように年金制度全体がつぶれないような最低限の手当てを、昨年の大議論の中でしてきた。だけど、細かい調整は残っていて、若い人とお年寄りの格差を更に小さくすることは、これからもやらなくてはいけない。

生徒G:起立、礼。

生徒全員:ありがとうございました。【了】

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