書評:『竹中平蔵の特別授業』
竹中平蔵・経済財政担当大臣の経済「講義」である。しかも、中学・高校生を対象にした授業という設定になっているので、「経済オンチ」の評者にもわかりやすい。著者が経済に興味を抱くようになったきっかけから、プロ野球選手になりたかったという少年時代の夢や、現代の経済を理解する上で必要なキーワードの解説、郵政民営化や年金などの時事問題まで、内容は多岐にわたっている。「日本経済を90分で解きほぐす」という帯のコピーも大げさではない。
一橋大学で経済学を学び日本開発銀行(現在の日本政策投資銀行)に入行、米ハーバード大学などに留学したりして経済学者になった著者の華麗なる経歴を見ると、小さいころから「経済」に強い関心を持っていたかのようにも思える。が、意外にも、著者が「経済」を勉強しようと思い立ったのは高校3年生の時で、きっかけは倫理社会の先生の「世の中のことに興味があるのだったら、経済のことを勉強しなさい」というひと言だった。政治、国際問題の根底にあるのは経済問題だ、ということに気付かされたとのこと。「金もうけの道具」ではない「経済学」を知って、著者が「衝撃を受けた」という述懐は意外性があって興味深い。
本書は、授業のライブ中継という設定なっており、たとえば、急速な発展を遂げている中国経済について生徒から質問され、次のように答える。「政治や軍事問題では相手が強くなれば自分は弱くなる。しかし、経済の場合は、相手が強くなれば自分にもチャンスが生まれる」。そして、国内産業の空洞化を心配するだけなく、日本は新しい技術で新産業を切り開くべきだという「21世紀ビジョン」を展開している。
本書は6章構成で、GDP(国内総生産)や不良債権、投資と貯蓄などを平易な言葉で説明し、経済発展の仕組みを解説する。さらに、日本経済を立て直すために、技術者を育てる教育や不良債権処理、競争を促すための構造改革の必要性などについて語られている。最終章(第6時限)の「より良い社会をつくるために」では、日本の国債残高が約700兆円で年間GDPの約1.4倍にも達している現状を紹介し、郵政民営化問題についての持論を展開している。
冒頭の数ページは絵本仕立てになっていて、南伸坊氏の装丁、イラストもいい。週末の読書にぜひともおすすめしたい。(集英社インターナショナル、2005年4月、952円+税)【了】
本書は、授業のライブ中継という設定なっており、たとえば、急速な発展を遂げている中国経済について生徒から質問され、次のように答える。「政治や軍事問題では相手が強くなれば自分は弱くなる。しかし、経済の場合は、相手が強くなれば自分にもチャンスが生まれる」。そして、国内産業の空洞化を心配するだけなく、日本は新しい技術で新産業を切り開くべきだという「21世紀ビジョン」を展開している。
本書は6章構成で、GDP(国内総生産)や不良債権、投資と貯蓄などを平易な言葉で説明し、経済発展の仕組みを解説する。さらに、日本経済を立て直すために、技術者を育てる教育や不良債権処理、競争を促すための構造改革の必要性などについて語られている。最終章(第6時限)の「より良い社会をつくるために」では、日本の国債残高が約700兆円で年間GDPの約1.4倍にも達している現状を紹介し、郵政民営化問題についての持論を展開している。
冒頭の数ページは絵本仕立てになっていて、南伸坊氏の装丁、イラストもいい。週末の読書にぜひともおすすめしたい。(集英社インターナショナル、2005年4月、952円+税)【了】