大阪桐蔭vs豊見城(ノーゲーム)
藤原恭大(大阪藤蔭)
「新しい力というか、チームに刺激を与える意味では良かったかな。」と、西谷浩一監督は、一年生・藤原恭大の一発を振り返った。糸満戦で終盤8回に代打で出場した藤原は、続く豊見城戦では中山 遥斗を追いやり、1番打者として先発オーダーに名を連ねた。ワンボールからの2球目だった。思い切り引っ張った藤原の目線が、ライトの上空を切り裂く打球を追う。「行けぇ!」とでも叫んだような気迫と共に、打球はライトの頭上を越えスタンドイン。いきなりの初回先頭打者ホームランに、沖縄の野球ファンたちからも拍手が起こる。それと同時に、糸満戦でうっぷんが溜まっていた打線が、この試合で炸裂するのかいう予感を起こさせる一発でもあった。
3回、先頭打者として打席に入った藤原が相手のエラーで出塁すると、中山がレフト前ヒットで続く。そして永廣 知紀がライト前へ運び二塁から藤原が生還。さらに吉澤 一翔がレフトへ高々と打ち上げ、三塁から中山が生還した。この間、僅か6球と、電光石火のような2得点でもあった。さらに4回、二死二塁として3打席目の藤原がレフトへ二塁打を放つ。2安打2長打2打点。それでも西谷監督は「藤原?いや、まだまだ。」と手厳しかったが、チーム内の競争なくして夏の大阪府の頂点を狙えるほど甘くない。「変則的な投手(豊見城・翁長 宏和)ではありましたが、(糸満・平安 常輝と合わせ)色々なタイプの投手と対戦出来た。雨で2試合目を消化することは出来なかったけど、夏へ向けてチームの力を上げていかねばならない中で、この沖縄遠征は有意義でした。」と語った。 その西谷監督が5回に動く。第1試合のアップや、シートノックなどでグラウンドを駆け回っていた背番号1がマウンドへ駆け上がったのだ!「対外試合では選抜以降初めて」(西谷監督)となる、エース高山 優希ではあったが、腰の故障から二ヶ月以上ものブランクがあっては、さすがのサウスポーも一発回答とはいかなかった。先頭打者の嶺井 友貴がフルカウントから四球を選ぶと、1番仲村裕之が右中間を深々と破る会心の当たりを放つ。一塁から嶺井が生還。
打った仲村も悠々と三塁へ達した。次打者も四球で、無死一・三塁としてクリーンアップへ繋ぐ豊見城の攻撃に、スタンドもどよめき始めたが、ここまでだった。サードのファールフライに打ち取ると、続く二者を連続三振に斬った高山。納得の行かないシブい表情でマウンドから降りてきたが、「選抜が100点としたら今日は50点も行かない」と話してくれた西谷監督だが、投げられたことは少なからず収穫と映ったのではないだろうか。続く6回のではマウンドにも登った高山だったが、第一試合に続く豪雨に見舞われた北谷上空。約30分待ったのち、降雨ゲームセットのアナウンスが流れて招待試合の初日が終了した。
残念ながら2日目も朝からの雨で、試合が出来ないと判断せざるを無く、沖縄尚学と美来工科は大阪桐蔭との対戦が叶わなかったが、試合前後の入り方や野球に対する意識の高さを惜しみなく見せてくれた大阪桐蔭の姿から、沖縄の高校球児たちにとって、たくさんの学びを見ることが出来た貴重な1日となったことだろう。
(写真=當山 雅通)