糸満vs九産大九州

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糸満の浮沈を握る正捕手・桃原虎雅

完封勝利を演出した桃原虎雅(糸満)

 まさに投球はコントロールとリズムが大事と思わせる試合となった。 第3試合は、糸満・平安 常輝(ひらやす・つねき 3年)、九産大九州の岩田の投げ合いとなった。平安は、コンパクトなテークバックから振り下ろすストレートは125キロ〜132キロと突出したスピードはないのだが、コントロールが実に良い。コントロールが良ければリズムも良くなる。早い投球間隔でどんどん投げ込んでいくので、九産大九州打線を考える暇を与えない。スライダー、低めに落ちる縦スライダー、カーブをリズムよく投げることができており、面白いように打ち取ることができていた。フィールディングも良く、さらに打っても4番。真玉橋監督が「野球センスは抜群」と評するように、観察力にも優れ、「打者が一巡すれば、なんとなく感性で相手の狙い球を外すことができる」と語るように頭脳的な投球で、ゲームメイクした。

 その平安を盛り立てたのが正捕手・桃原虎雅(とうばる・たいが)だ。県大会では比屋根 雅也(興南)から豪快なホームランを放ったスラッガーで、2.00秒前後の強肩だけではなく、打者の読みを外す配球ができる捕手だ。キャッチングも安定していて、グラウンド中の立ち居振る舞いを見ていると落ち着きがあり、しっかりとチームを引っ張っている。その桃原だが、実は大会前は調子が上がらず苦しんでいた平安の相談役として、桃原は調子が悪いなりでも投球ができるように配球を決めていた。また本人も、「捕手というポジションは好き」と答える。

 左サイドの岩田 将貴に対しては、比屋根と同じタイプだと感じており、実際に打席に立った感覚は同じタイプだと思ったようで、比屋根からホームランを打った高めのストレートを待っていた。しかし全くそのストレートが来ない。「変化球のキレ味が鋭かったですし、なんといっても、制球力が素晴らしい。ストレートを待っていても全く来ませんでした」自分の読みが外れた桃原はスライダーを狙うことに。7回表の第3打席だった。4球目。狙っていた真ん中のスライダーを逆方向へ打ち返した桃原の打球は右前へ。先頭打者として出塁した桃原は二塁まで進み、二死一、二塁から上良朋弘(3年)が甘く入った直球を逃さず、左越え適時二塁打を放ち、1点を先制する。桃原が作ったチャンスを上間がものにした。ここまで通算10本塁打と、強打の捕手だが、左サイドの投手に対しても工夫して安打が打てるところはさすがである。

 そして9回裏、無死二、三塁のピンチを迎えたが、糸満バッテリーは冷静だった。4番尾崎を見逃し三振、5番中濱は右飛、6番船越を三ゴロに打ち取り、緊張のかかる場面を難なく抑えた。 平安の駆け引きのうまい投球が光ったが、それを握っていたのが正捕手の桃原。強肩強打。さらに頭脳派の捕手として、第二の監督としてチームを引き締めている。彼が主となって多くの勝利を導いていくのか、注目をしていきたい。

(文=河嶋 宗一)

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